東京駅ナカ、涙の「立ち食いカツ丼」

 エンターテインメント新聞社時代、彦作村長の中継基地の一つが東京駅だった。丸の内駅舎が復元される以前から、駅ナカはデパ地下のように次々と小ジャレた店やレストランがオープンしていった。いつも利用していた京葉線口も本屋やカフェやスイーツ店やドラッグストアなどが営業し始めていた。その中で、彦作村長がふらりと入って食事を楽しんだのが「いろり庵きらく」だった。立ち食いそば屋である。安くてうまかった。そばはもちろんだが、カツ丼やカレーライスも立ち食いのレベルを超えていたと思う。

         きらく① 
         久しぶりの「いろり庵きらく」

夏バテ気味の彦作村長は、花の銀座に足を運んだついでに、久しぶりに「いろり庵きらく」のカツ丼を食べたくなった。汗を拭き拭き、動く歩道を使わずに、東京駅ナカでも遠くにある京葉線口まで歩いた。村長の夏バテ対策は歩くに限る、である。冷たいものではなく熱いものを食べる、である。

「いろり庵きらく」を訪れるのは約1年半ぶりだった。この道を何度通ったことか。様々な思いが頭をよぎるのは仕方がない。「辞めた会社には近づくな」。尊敬する上司だったエッセイストの川北義則さんの戒めである。ま、会社からは二駅ほど離れているからいいだろう、と思い直してのセンチメンタルジャーニーかもしれない。

         きらく⑨ 
         この派手さは悪くない

1年半ぶりの立ち食いそば屋は少々厚化粧になっていた。店構えは同じだが、入り口に派手なメニューが目を引きつける。「キムラ君、はじめました」とか「今年も登場!肉盛りつけそば!」とか意味不明のキャッチコピーが。「キムラ君」とはキムチとラー油(それに納豆)を乗っけた冷しそばのことらしい。それでキムラ君。自販機で「カツ丼」(500円)を押し、注文口でチケットを出す。「少し時間がかかりますけど」店員が無表情に言う。「構いませんよ」と村長。時間がかかるということはこれから揚げるということで、期待できる。そう思ったからだ。

         きらく③ 
         ありゃりゃ、うーむの世界
         きらく④ 
         ま、食っておくんなさい

だが、5分も待たずに出来上がった。見た瞬間、少々がっかり。卵がふわりとしていず、タマネギも少ない。全体的に以前のような、見るからに旨そうな雰囲気が漂ってこない。彼は昔のカツ丼ならず。立ち食いだからあまり文句を言ってはいけない。そう思い直して、ひと口。味が濃い。カツはそれなりに厚くて、揚げたて風ではある。だが、醤油が濃すぎる。ダシがほとんど効いていない。これはたまたまなのか。それともこのベタな関東風の味が売りなのか。ご飯も特筆するものがない。あの感動ものだったカツ丼はどこへ行ってしまった? 花はどこへ行ってしまった?

         きらく⑤ 
         肉の厚み
         きらく⑥ 
         ご飯の薄み

「ここはそばを食べなきゃ。そばはまあまあだよ」
隣の客がそう話していた。見渡せば、カツ丼を食べているのは彦作村長だけだった。これなら「小諸そば」とか「名代富士そば」のカツ丼の方が上だと思う。値段も少し安いし。立ち食いそば屋をこよなく愛する彦作村長だが、この味の変化にはついていけそうもない。それとも彦作村長が変わってしまったのか? 目からも汗が出てきそうだった。自分の思い込みのバカさ加減に付ける薬はない。よく考えたら、そういうことかもしれない。よく考えなくともそういうことかもしれない。



本日の大金言。

たかがカツ丼、されどカツ丼。B級の立ち食いカツ丼を甘く見てはいけない。


                      きらく⑧ 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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