深夜の絶品「冷やしたぬきそば」

ある時はどうしようもない酒飲みで 、ある時は「冷やしたぬきそば」マニアでもある彦作村長がハマった、ほとんどカウンターだけのそば屋がある。店を開くのがなんと午後9時。それからほとんど明け方まで営業している。村長は「真夜中の蕎麦(そば)屋」と勝手に命名している。北千住に住んでいた7~8年前、仕事柄深夜帰宅が多かった。午前3時を超えることもあった。仕事で熱くなった頭を静めるために、灯りのすっかり落ちた飲み屋街を歩いていると、一軒だけポツンと明るい店があった。それが「そば酒房 碧夢(へきむ)」だった。

                そば酒房⑧  
         青い石の夢

冷やしたぬきそばが旨かった。ぐでんぐでんに酔っぱらっても、「碧夢」のそばで締めると、身体まで締まるような気がした。店主は寡黙で必要以外はほとんどしゃべらない。だが、「そば酒房」を名乗っているだけに、ツマミ類もレベルが高かった。今回取り上げるのはこの店である。

都内での飲み会の後、久しぶりに、途中下車して、ふらりと立ち寄りたくなった。午後10時を過ぎていた。飲み屋街は猥雑で明るく、酔っ払いの声があちらこちらの店から聞こえてくる。若いOLも増えている。村長の好きな世界である。「そば酒房 碧夢」はまだ店を開けたばかりのようで、7人ほどしか座れないカウンター(奥に小さなテーブル席もある)には客が一人しかいなかった。

         そば酒房① 
         侘びのある雰囲気

店主は相変わらず一人で、寡黙な職人のように、客の肴(さかな)を作っていた。無愛想と紙一重。村長は「冷やしたぬきそば」(650円)を頼んだ。すると、店主が「ワンドリンク、お願いします」。ン?少々ムッときたが、よく考えてみると、タクシーの深夜料金みたいなもので、この小さな店を維持していく上では致し方ないことかもしれない。お通しと考えれば、ムッとくる方がおかしい。アルコール類は臨界点に近かったので、一番安い「緑茶」(200円)にした。ちなみに「生ビール」は500円。ベラボーではない。

         そば酒房⑥ 
         せいろ500円

「冷やしたぬきそば」がやってきた。黒天目の器に、揚げ玉がどっさり乗っていて、キュウリと板わさ、それに刻み海苔が隙のない盛り付けでアクセントを付けている。昔と同じだった。

         そば酒房 
         揚げ玉好きにはたまらない
         そば酒房④ 
         締めのB級キング

揚げ玉好きの村長の好みの姿。そばは江戸前の極細打ちで、コシが強い。これだこれだ。ツユは辛めだが、ダシが効いていて、全体をぎゅっと締めている。特筆すべきは揚げ玉。ただの揚げ玉ではなく、多分、エビの殻などが点々と入っている特別製。これがカラッとしていて、いい歯ごたえと風味をかもし出す。お宝鑑定団の中島誠之助ではないが、「いい仕事してますねえ」と言いたくなる。村長にとって、ハシゴした後の最後の締めとしては、これ以上のものはなかなかない。B級の最後のオアシス。

          そば酒房③ 
          コシの強い極細

「もう10年になります」
寡黙な店主が、少しだけ口を開いた。
「そうか、10年か」
村長も10年の歳月を思った。常連らしい3人連れの酔っ払いがドドドと入ってきた。店主は変わらず寡黙なままだった。



本日の大金言。

そば屋の原点の一つは、江戸の昔の夜鳴きそば。屋台で主にかけそばを売っていたようだが、真夜中のそば屋の伝統は意外な形で生きている。

  


                     そば酒房⑤ 


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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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