うさぎに負けない「すずめやのどら焼き」
「村長、最近どら焼きを書いてませんが、東京・池袋にきらりと光るどら焼き屋があるのを知ってますか? もちろんご存じだとは思いますが」
そんなイヤミなメールが、村長のポンコツパソコンに届いた。北千住に住むスイーツ好きの知り合いだった。
「きらりと光るどら焼き?」
「うさぎや亀に負けないすずめや。名前も志しがあってよろしい。とにかく行くべきです」
そんなやり取り。うさぎとは「うさぎや」、亀とは「浅草の亀十」のことだった。どちらも老舗中の老舗で、日本どら焼き界の最高峰に位置する名店である。こりゃ、行くっきゃない。ギックリ腰を両手で持ち上げるようにして、電車に飛び乗った。
ちゅんちゅん
「すずめや」は東京・池袋駅東口から歩いて10分ほど、南池袋郵便局の近くにあった。そこだけ京都の町家のようで、隣はそば屋。建物は昭和の匂いのする、間口一軒ほどの古くて実に小さな店だった。木片に手書きの墨文字で「どらやき すずめや」と書かれていた。「すずめや」とはよくぞ付けたり。午前中で売り切れることもある、という情報だったので、電話で予約をしておいた。電話の感じはよかった。
小さな宇宙
草庵のような狭い店内。どら焼きの他に練り切りなど本日のメニュー見本。黄色い土壁は悪くない。狭いながらもかなり凝った造りで、焼き上がったどら焼きの入った木箱がきちんと置かれている。声をかけると、奥から「お待ちしておりました」と店主らしき中年男性が出てきた。どら焼き6個入り一箱900円(1個150円)と水ようかん3個(1個200円)を受け取る。どら焼きは賞味期限が2日。水ようかんは本日中。
水ようかん
清流の味わい
あまりに暑かったので、近くの喫茶店に入って、水ようかんを賞味することにした。良い子は真似をしてはいけません。これが絶品だった。アイスクリームのカップのような紙のカップに入っていて、紙のスプーンまで付いていた。古さと新しさ。
北海道十勝産の小豆を使ったこしあんと寒天の調整がかなりのレベルで、繊細できれいな味わい。よほどいい水を使っているのだろう、人の入らない清流のような余韻が口中に残った。甘みはかなり抑えている。村長はもう少し甘い方が好みだが、これはこれで一つの見事な世界だと思う。
うーむうむむ
「どらやき」はウマズイめんくい村に持ち帰って翌日の賞味となった。上野のうさぎやなどは焼き立てが売りだが、村長は1日置いたどら焼きの方がしっとり度が深まって好みなのである。
うさぎやよりもひと回り小さいが、きれいなきつね色。包みを取ると、はちみつと砂糖と小麦粉の甘い焦げたようないい匂いが立ち上がってきた。中央が盛り上がっていて、中にあんがたっぷり入っていることが見て取れた。
姿が只者でない?
この盛り上がり
絶妙な形と色合い
ひと口。皮は弾力があり、しかもしっとり感もある。上野うさぎやに近い感触。中のあんは柔らかな粒あんが半分くらい形を留めており、いい小豆の風味がふわりと口中で立ち上がってきた。このふわっとした感触。緻密な計算と腕を感じる。やや甘めで、それは村長の好み。皮との相性も20年寄り添った夫婦のような阿吽(あうん)の味わいで、確かにうさぎやや亀十にも負けない美味さだと思う。
何よりもこれで1個150円とは驚く。うさぎやは1個200円、亀十は315円。もちろん一概には比べられないが、村長はこの小さな店に相当な志しを感じた。帰り際に店主に聞いてみると、「店はまだ10年になったところです。はい、うさぎやで働いていました」。修業と言わずに「働いていました」。すずめの志し。久しぶりに村長の心にハートマークが灯った。
本日の大金言。
どら焼きの隠れた名店、埼玉・春日部郊外の「細井」もうさぎや出身。どら焼き職人の未来はまだ明るい。
そんなイヤミなメールが、村長のポンコツパソコンに届いた。北千住に住むスイーツ好きの知り合いだった。
「きらりと光るどら焼き?」
「うさぎや亀に負けないすずめや。名前も志しがあってよろしい。とにかく行くべきです」
そんなやり取り。うさぎとは「うさぎや」、亀とは「浅草の亀十」のことだった。どちらも老舗中の老舗で、日本どら焼き界の最高峰に位置する名店である。こりゃ、行くっきゃない。ギックリ腰を両手で持ち上げるようにして、電車に飛び乗った。

ちゅんちゅん
「すずめや」は東京・池袋駅東口から歩いて10分ほど、南池袋郵便局の近くにあった。そこだけ京都の町家のようで、隣はそば屋。建物は昭和の匂いのする、間口一軒ほどの古くて実に小さな店だった。木片に手書きの墨文字で「どらやき すずめや」と書かれていた。「すずめや」とはよくぞ付けたり。午前中で売り切れることもある、という情報だったので、電話で予約をしておいた。電話の感じはよかった。

小さな宇宙
草庵のような狭い店内。どら焼きの他に練り切りなど本日のメニュー見本。黄色い土壁は悪くない。狭いながらもかなり凝った造りで、焼き上がったどら焼きの入った木箱がきちんと置かれている。声をかけると、奥から「お待ちしておりました」と店主らしき中年男性が出てきた。どら焼き6個入り一箱900円(1個150円)と水ようかん3個(1個200円)を受け取る。どら焼きは賞味期限が2日。水ようかんは本日中。

水ようかん

清流の味わい
あまりに暑かったので、近くの喫茶店に入って、水ようかんを賞味することにした。良い子は真似をしてはいけません。これが絶品だった。アイスクリームのカップのような紙のカップに入っていて、紙のスプーンまで付いていた。古さと新しさ。
北海道十勝産の小豆を使ったこしあんと寒天の調整がかなりのレベルで、繊細できれいな味わい。よほどいい水を使っているのだろう、人の入らない清流のような余韻が口中に残った。甘みはかなり抑えている。村長はもう少し甘い方が好みだが、これはこれで一つの見事な世界だと思う。

うーむうむむ
「どらやき」はウマズイめんくい村に持ち帰って翌日の賞味となった。上野のうさぎやなどは焼き立てが売りだが、村長は1日置いたどら焼きの方がしっとり度が深まって好みなのである。
うさぎやよりもひと回り小さいが、きれいなきつね色。包みを取ると、はちみつと砂糖と小麦粉の甘い焦げたようないい匂いが立ち上がってきた。中央が盛り上がっていて、中にあんがたっぷり入っていることが見て取れた。

姿が只者でない?

この盛り上がり

絶妙な形と色合い
ひと口。皮は弾力があり、しかもしっとり感もある。上野うさぎやに近い感触。中のあんは柔らかな粒あんが半分くらい形を留めており、いい小豆の風味がふわりと口中で立ち上がってきた。このふわっとした感触。緻密な計算と腕を感じる。やや甘めで、それは村長の好み。皮との相性も20年寄り添った夫婦のような阿吽(あうん)の味わいで、確かにうさぎやや亀十にも負けない美味さだと思う。
何よりもこれで1個150円とは驚く。うさぎやは1個200円、亀十は315円。もちろん一概には比べられないが、村長はこの小さな店に相当な志しを感じた。帰り際に店主に聞いてみると、「店はまだ10年になったところです。はい、うさぎやで働いていました」。修業と言わずに「働いていました」。すずめの志し。久しぶりに村長の心にハートマークが灯った。
本日の大金言。
どら焼きの隠れた名店、埼玉・春日部郊外の「細井」もうさぎや出身。どら焼き職人の未来はまだ明るい。

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