シンプルな職人ワザ、老舗の「鯛丼」

 東京でも人形町から水天宮にかけては彦作村長の好きな散歩コースの一つである。江戸の情緒がいたるところに残っている。その水天宮のはずれ日本橋箱崎町に「鯛丼(たいどん)の美味い店がある」という情報を耳にしたのは3~4年前。夜は高いので、思い切って、ランチタイムに暖簾をくぐることにした。あの「美味しんぼ」にも登場した和食の老舗である。

          鯛ふじ① 
          この佇まい

午後1時半。ぎりぎりセーフで滑り込んだ。戦前の面影を残す木造二階建て。「鯛ふじ」と染め抜かれた青藤色の暖簾。入った瞬間、この店が「只者ではない」雰囲気を発光しているのがわかった。1階は10人ほどしか座れない年季の入ったL字型の木のカウンターのみ。目の前が広めの厨房になっていて、そこで板前さんが静かに魚を焼いていた。炭火とウチワの世界。村長はうーむと唸った。いぶし銀の世界。

         鯛ふじ③ 
         老舗の風格

「鯛茶漬け」(800円)にも食指が動いたが、ここは初志貫徹、「鯛丼」(1000円)をお願いした。気さくな女将さんが焙じ茶を運んできた。10分ほどで煮物の小鉢と鯛のうしお汁、鯛丼、大根の浅漬けの順でやってきた。主役の鯛丼は村長がこれまで食べたものとは少々違った。見事な漬け丼だが、天然の鯛の上に削り立ての鰹節が春の雪のようにかかっていた。千切りの青じそ、万能ねぎ、それにちょこんと添えられたワサビ。削り節をこれほどかけた漬け丼は初めてだった。まるでまかない料理のよう。

          鯛ふじ④ 
          めで鯛丼、お待ちイ~
          鯛ふじ⑤ 
          シンプルの極致?

まずはひと口。醤油だれがかなり濃いめ。村長がこれまで食べた漬け丼は味りんなどで甘みを付けているが、その甘さをわざと加えていないように思えた。薄切りの鯛のいい歯ごたえと自然な甘み。炊き立ての銀シャリとともにかっ込むと、その醤油だれの濃さの中から、鯛の素材のよさが立ち上がってくるようだった。口中に広がる鰹節のいぶった風味。すべてが野暮と隣り合わせの、計算され尽くした構成であることがわかった。

          鯛ふじ⑧ 
           天然鯛の漬け

ぶっきらぼーと紙一重のシンプルは、甘めの漬け丼に慣れた味覚には「もう少しやさしくしてよ」と言いなくなるかもしれない。銀シャリも固めで、それは村長の好みだが、人によってはもう少しふんわり感が欲しい、というかもしれない。だが、この江戸前の、素材勝負の味付けこそがこの店の伝統とワザだと思う。シンプルな豊饒(ほうじょう)。好き嫌いの分かれ目。

         鯛ふじ⑦ 
         絶品のうしお汁

それは「うしお汁」でわかった。新鮮な鯛のアラからにじみ出た出汁が、実に絶妙な旨味となって、そのままストレートに伝わってくる。村長はその薄味のまろやかな美味さに驚嘆した。鯛の腹身の脂が三つ葉の間でキラキラと浮いている。小鉢の煮ものと大根の浅漬けもバランスがいい。炭火で魚を焼く板前のすっきりとした後ろ姿が、「百の言葉より、とにかく食べてみてくださいな」、そう言っているようだった。今度馬券が当たったら、着流し姿で夜に来てみよう。村長はアホ顔でそう決意するのだった。



本日の大金言。

日本人ほど鯛好きの国民はいない。めでたい席や祝い事に鯛は欠かせない。鯛を食べるといいことがありそうな気がする。




                     鯛ふじ11 



 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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