あり得ないそば屋「六四ド田舎そば」

「 隠れたうまいもの探し」をスタートさせて1年を超えたが、改めて日本は思っていた以上に広いと思わざるを得ない。こんな場所にこんな店があったとは・・・と驚かされたこともたびたび。今回ご紹介するそば屋は、天然記念物並みの希少な、いわゆる美味いそばという概念を根底から揺るがす不思議なそばである。これがそばと言えるのかどうかすら、正直村長も迷うほど。

          一茶① 
          外観からしてミョーな味

麺類シンジケートからの情報で、彦作村長はホワイトタイガーで有名な東武動物公園駅へと向かった。目指すは「一茶 宮代」。西口から歩いて3分ほどの場所に壁面に「昔の味 純手打ちそば 一茶」と大書された一軒家が見えた。そのあまりのベタさ加減に、村長はある種の感動を覚えた。スマホの時代にドンキホーテのように立ち向かう「昭和の岩窟王」の匂い。隣駅の和戸に本店があり、創業40年ほどの歴史がある。

          一茶② 
          いらっしゃい

宮代店は午後3時までしか営業していない。時計を見ると午後2時半過ぎ。白地の暖簾をくぐって中に入ると、店内は意外に広く、テーブル席が8つほど。右手が広い調理場になっていて、その中に田舎のおばちゃんが3人ほど。時間的に忙しさのピークを越えて、ゆったりと佇んでいるようだった。メニューの中から、村長は「冷したぬきそば」(600円)を選んだ。ちなみにもりそばは350円。この安さは好感が持てる。

          一茶④ 
          田舎のそば屋

5分ほどで「冷したぬきそば」が登場。陶器のドンブリがどこか懐かしい。千切りのキュウリ、鮮やかな色の生ワカメ、煮含めたシイタケ、ナルト、その上にはちょこんとすりおろしたショウガが乗っかっていた。その合間に揚げ玉がパラパラと散りばめられていた。村長は思わずうーむと唸った。水彩画のような鮮やかな色彩のバランス。「これはイケるかも」という確信のようなものを村長に抱かせるに十分だった。

         一茶⑥  
          ひと目見てイケるかも

調理場の奥からの視線を感じながら、村長は箸を入れた。何という太さと意図的な乱切り。一瞬、東京・三ノ輪の「角萬」のそばを思い出した。だが、よく見ると昔の「角萬」よりもぶっ太くて、柔らかい印象。グレーがかった中には黒い星もある。挽きぐるみのような色味。

          一茶⑧ 
          これはそばか?

まずはひと口。もそっとしたそばがきのような食感。コシというものがほとんどない。そばというより地粉の田舎うどんのような、素朴で不思議な食感。だが、これが予想以上にうまい。村長の頭の中が混乱してきた。ツユは出汁とかえしのバランスがよく、そこに酢が入っていて、甘辛さと酸味が絶妙で奥深い旨味を作っていた。キュウリや生ワカメ、煮シイタケ、天かすなどの具も手抜きというものが感じられない。頭ではこれはそばと言えるのかと思いながら、体がその熟女のような魅力に抗しきれない。押し倒される予感。田舎そばのあり得ない完成形。

          一茶10 
          しっかりとした絶妙
          一茶11 
          ツユにも感心

洗練、高級化に向かっていく蕎麦道というものから見れば、ここのそばは明らかに異次元のそばである。おばさん店員に「二八ですか?」と聞いてみると、恐るべき答えが返ってきた。
「うちのそばは六四です。小麦粉が六でそば粉が四。これを毎日毎日、疲れますけど足でこねて、手作業で打っているんですよ。そば粉は北海道のそば粉ですが」

村長の頭がさらに混乱した。これはそばというより「うどんそば」ではないか? 想像外の麺類。赤塚不二夫のウナギイヌに近い驚きと余韻。それでいて、また来たくなるうまさ。こういうそばがあってもいいのだ。調理場の奥で赤塚不二夫が微笑んでいるような気がするのだった。


本日の大金言。

洗練と野暮。それはひょっとしてコインの裏表かもしれない。どちらかではなく、二つが共存して初めて世界が豊かになる。



                     一茶12
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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