那須高原で250年前の十割そばに出会う

「ウマズラ村時代」の幼なじみ11人との一夜は、様々な記憶が突然よみがえってきたり、自己検証という意味でも面白い体験だった。今の赤羽彦作とティーンエージャーだった赤羽彦作の時空を超えた交錯。146センチ、体重36キロ。かなりのチビだった3年7組の、「ひょっこりひょうたん島」や「シャボン玉ホリデー」好きの孤独な少年。ビートルズやアメリカンポップスに夢中だったあの時代。まさに忌野清志郎の「トランジスタラジオ」の世界が薄荷の匂いとともによみがえる。

そこに確かにいたのに、そこにいなかった感覚。安ワインを飲みながら、夜中の一時くらいまで、「こんなこともあった」「あんなこともあった」「へえー、全然記憶にないよ」。濃淡はあるものの、全員がこんがらかった記憶の糸をたぐって、失われた足跡を確認しあう・・・。

で、本題。翌日、那須高原で昼食を取ろうということになって、なかなか雰囲気のある一軒の古民家に入った。「手打ちそば工房 五色庵」と染め抜かれた紺地の暖簾。「会津磐梯手打ちそば」という文字も見えた。那須に来て、会津とは・・・。


          那須・五色庵③ 


正直にいうと、今回は蕎麦のメッカでもある栃木の蕎麦を食したかったのだが、よほど会津に縁があるのだろう、ハッと気が付いたら、会津の蕎麦屋。あいつはあいづであいそをつかす。あいすずきのあいづのアイズ。あいがあってもあいずがなくてもあいづにあいつはあいそをつかす。そんなくだらない言葉遊びを楽しんでいた報いかもしれない。

250年以上前の山形の庄屋の屋敷をそのまま移築したそうな。あまりに見事なその時代建物に、村長一行は、しばし感嘆の声を上げる。広々とした店内だが、時間が昼飯時ということもあって結構込み合っていた。

天井が吹き抜けになっている囲炉裏の中央にある20人は優に座れそうな座席に案内された。藍染の作務衣姿の女性店員のてきばきとした対応は好感が持てる。

彦作村長は皿そば(もりそば)を注文。メニューを見て1100円という高い値段設定にちょっと動揺しながら、悲しいかなそれが一番安かったことと、ソバ屋の基本中の基本でもあるのがその理由だった(ウソではありません)。

他に辛み大根のすりおろし「高遠そば」(1500円)、天ぷらそば(1600円)、にしんそば(1500円)など厳選されたメニューが並ぶ。

村長は宮仕え時代にかなりの蕎麦屋を回ったが、銀座1丁目の「流石」のもりそば(1000円)が一番高かった。それなりにうまかったが、この店はそれよりも100円も高い。なんということだ! 

100円が賞賛となるか落胆となるか。B級グルメの「食い意地」として、ここはひけない。

待つ間、他の蕎麦屋ではないサービス、見事なキュウリが出された。この店のもてなしだそう。味噌(たぶん会津味噌)を付けて口に運ぶと、さわやかなキュウリの旨味と味噌がいい感じでノドを通って、空腹の胃袋へと滑り込んでいく。この手があったか、村長は感心しきりである。

皿そばがやってきた。東京の老舗・藪蕎麦などのもりよりも盛りがいい。会津坂下の玄そばを臼で挽いた10割そばだそう。思ったよりも細めで色白の美人。好感。いいそば特有の香りがする。これも好感。


          那須・五色庵② 


食感はつなぎのない10割そばのためだろうコシがあまりなく、ノド越しがやさしい。技術がかなりのレベルであることはわかるが、村長は二八そばが好みなので、このあたりは「ま、こんなものだろうな」という感想。人数が多かったせいか、エビ天とインゲン天をサービスに出してくれたのはちょっとしたサプライズ。岩塩(だと思う)で食べたが、大変おいしかった。

B級グルメを標榜するビンボーな彦作村長としては少々忸怩たるものもあるが、建物の凄みと、店員さんの気配り豊かな対応などを加味すると、この高い値段設定も納得するしかない。村長は250年の時をくぐり抜けた縁側のテカリにある種の感動を覚えたことも添えておきたい。


                那須・五色庵① 


こうしてウマズイ村の同級会は那須高原の青い空と白い雲とともに「FIN」となったのだった。赤羽彦作村長は「街の灯り」のチャプリンのような気分で、腰痛ヘルニアを抱えながら、ひょこひょこと去って行った。


本日の大金言。

高級ソバと立ち食いソバ、そのどちらも同時に愛することは可能かもしれない。
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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