ミスマッチ? ジャガイモ入り焼きそばと熱い再会

 「ジャガイモ入り焼きそば? 何それ、マズそー」
ジャガイモが入った焼きそばがこの世に存在していることを初めて知ったのは6年前のことだった。たまたま栃木市を散策していた時のこと。

栃木市は「蔵の街」として売り出していて、まだ宮仕えだった彦作村長がふらりと立ち寄った。メーンストリートには歴史のありそうな見事な和蔵が散在していて、スケール的には福島県の喜多方市や埼玉県の川越市ほどではないにしても、こじんまりとして、その奥ゆかしい佇まいが村長の好みだったのである。

その和蔵の中で、異色な大正時代の洋風建築が一軒ポツネンと佇んでいた。「好古壱番館」と書かれたレストランだった。メニューには日本蕎麦もある。何を食べようか迷っている村長の目に「ジャガイモ入り焼きそば 500円」とう文字が飛び込んできた。

珍しいもの好きの村長が、「これに決めた!」と言ったところ、美熟女の村民2号が、不遜にも吐いた言葉が冒頭の「何それ、マズそー」というものだった。500円という安さも気に入った。

ジャガイモと焼きそばの相性については、たぶん十人中八、九人は首を横に振るだろう。村長も本音をいうと、ヘンな味だろうな、と思っていた。だが、食べてみると、これが「ん?」が次第に「うーん」となり、ついには「う、うめえ」に変わるのに時間はかからなかった。

ゴロッゴロッと入っているジャガイモがソースをベースにした焼きそばとミョーに絡み合う。ジャガイモの甘みが焼きそばに魔法でもかけているかのように、1+1=3になっている。ミスマッチのはずがラブマッチ。富士宮、太田、横手という日本三大焼きそばとは明らかに違う、クリエイティブな焼きそばの発見に村長は小躍りせんばかりだった。

「栃木では昔から焼きそばというとジャガイモが入っているのが当たり前なんです。え、東京じゃジャガイモが入ってない? そっちの方がおかしいよ」

店の常連客から同情と軽蔑に近いまなざしを浴びたのも驚きの経験だった。栃木では常識が通用しない。自分たちの非常識を棚に上げて、村長と村民2号は帰りの車の中で、うなずき合ったのだった。

那須高原で「ウマズラ村」時代の同窓会を終えて、その帰りに、栃木に立ち寄ろうと思ったのは自然の成り行きだった。今回は元祖の「大豆生田商店(おおまみゅうだしょうてん)」に寄ろうと思った。しかし、午後3時を過ぎていて、休憩に入っていた。「好古壱番館」も「こうしんの店」も悲しいことに休憩時間。ク、クヤジイ。クラの街で目の前がマックラとは・・・。

         栃木市・じゃがいも焼きそば② 

捨てる神があれが拾う神あり、とはよく言ったもので、途方に暮れる彦作村長の乾いた目に、「ジャガイモ入り焼きそば」の文字が飛び込んできた。レトロな店構えで「四次元ポケット 静」という看板。四次元ポケット? ドラえもんファンだとしても、ヘンな店だなあ、大丈夫かな?というのが最初の感想だった。しかし、この際、ぜいたくを言ってる場合ではない。

ガラガラッと戸をあけて、中に入った。懐かしい昭和の世界がそこに広がっていた。広めの店内。インテリアとして置いてある古時計もスクーターも「味の素」や「江戸むらさき」の看板もすべてが昭和の世界へとつながっている。

気に入った。老犬が二匹寝そべっていたことも犬猫好きの彦作村長の世界に近いかもしれない。すぐに「ジャガイモ入り焼きそば」(680円)を注文。塩焼きそば、しょうゆ焼きそばにも触手を動かされたが、残念なことに胃袋は一つしかない。

うまい水を飲みながら、待つこと15分ほど。かなりのボリュームで待ち人がやってきた。680円という値段はかなり高め。しかし、目の前にあるのはそれを納得させるに十分だった。キャベツ、にんじん、ピーマン、タマネギ、それに豚肉。紅ショウガが彩りを添えている。ジャガイモは思ったよりも少ない。

           栃木市・じゃがいも焼きそば① 

意外にあっさりした味付け。ソースのストレートさが奥の方に隠れていて、ダシのきいた何とも言えない旨味がじんわりと口中に広がっていく。新鮮な野菜と豚肉がたぶんラードで炒められ、それにもちもちと歯切れのいい麵がうまい具合に調和している。うまい。焼きそばでこれだけの味、料理人はかなりの腕なのだろう。ジャガイモの少なさが気になったが・・・。

「ソースは自家製なんですよ。ジャガイモが少ない? きっとマスターの気分だと思いますよ。たまたま今日は少なくしたんでしょう」
店員なのかきれいな女性が、笑いながら言った。

そうか、そうだったのか。赤羽彦作村長は、ジャガイモのようなお顔である。共食いを防ごうとしたのだろうか? マスターは出てこなかった。そうか、この店の名前は「四次元ポケット」だったっけ。常識が通用しない街の常識に意味がない空間。彦作村長は意味もなくうれしくなってしまった。


本日の大金言。

焼きそばにジャガイモが入っているのは朗報かも。明治がアンパンとともに始まったように。

          栃木市・じゃがいも焼きそば④ 





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食べたい

おもしろいブログですね。
楽しみに読ませていただきます。
これって本になりそうですね?

今度、がん体験者と医者が行く旅をはじめます。
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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