下町が滲みる「鴨せいろ」

 超大型台風26号が来る前に、彦作村長はぎっくり腰を前後させながら、京成線・千住大橋駅周辺をウロ歩きすることにした。この一帯は再開発の波が押し寄せているが、昭和が踏ん張るように残っている。「ときわ」や「八ちゃん」など居酒屋も14~5軒ほどあり、すぐ近くを流れる隅田川と日光街道が往年の人の行き来を思い起こさせる。松尾芭蕉の「奥の細道」の句碑も近くにある。約324年前の元禄2年3月末、芭蕉は門人の曾良を連れて、みちのくへと旅立った。

         そば七① 
         奥のそば道

芭蕉がその時に詠んだのが「行く春や鳥啼魚の目は泪」。村長は「ウオノメハナミダ」という語感が好きで、それが魚なのか足にできる「魚の目」なのかいまだにわからない。そんなくだらないことを考えながら改札口を出ると、「ラーメン二郎」の前に並ぶ行列が見えた。そこだけ今どきの光景。へそ曲がりの村長はその行列を素通りして、その先にある「十六文そば そば七」のくすんだ、「今どき」に背を向けたようなそば屋を見据えていた。そこだけセピア色に見えた。

          そば七② 
         もったいないの極致?


「当店の一番人気 鴨せいろ」という文字。お世辞にもきれいとは言えない古い店構え。だが、苔(こけ)色のノレンは清潔で、村長のセンサーにビビビと反応した。いい職人がいそうな気配。「営業中」の札がガムテープで止められていたことも気に入った。これぞもったいないの精神。

         そば七10   
         いいそば職人がいる

店は12席のカウンターだけで、目の前が調理場になっていた。白衣姿の店主と娘さんなのか若い女性と切り盛りしていた。下町のいい匂い。店主の立ち姿に、いい食職人特有の背筋のピンとした清潔感があった。多分そば職人一筋。「かつ丼」(800円)もうまそうだったが、ここはやはり「鴨せいろ」(800円)。目の前には見事な桧の蓋の大釜があり、湯気が立ち上っている。そばを茹で上げ、すぐに冷水で〆る。隙のない作業。12~3分ほどで、「鴨せいろ」がやってきた。

         そば七③ 
         人気1位
         そば七⑦ 
         細切り
         そば七⑧  
         鴨つけ汁の旨さ

そばは手ごねの更科系細切りだった。コシはまずまず、それを熱々の鴨つけ汁に付ける。この鴨つけ汁が絶品だった。出汁と合鴨の旨味がやや甘めのかえしと絶妙に溶け合っていた。ざっくりと切られた白ネギがそこに加わって、ゴロリゴロリと沈んでいる合鴨から出た脂がキラキラと浮いている。合鴨は柔らか煮。そこに白ネギの甘み。細切りの繊細なそばにつけ汁がよくからむ。こういうのをヤミツキになりそうな味というのかもしれない。

あっという間に食べ終わり、そば湯を飲む。お代を払う時に、「うまかった」と率直に言うと、店主がちょっとだけうれしそうな顔をした。行く秋や鴨食べ亀の目は泪。だめだこりゃ。


本日の大金言。

新しくすればいいというものではない。ガムテープの真実。その裏に深い人生があるかもしれない。






                      そば七⑨ 

スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

最新記事
カテゴリ
彦作のつぶやき
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR