風が立った後の醤油ラーメン

 宮崎駿監督・最後の長編アニメ「風立ちぬ」。すでに興行収入は114億円を軽く突破して、ロングラン上映となっているが、彦作村長はもう一度、この作品を観ようと思い立った。関東大震災の圧倒的な描写や背景の「時代の風」が気になったからである。ラストの「おいしいワインがある」というカプローニのセリフも引っ掛かる。で、まだ一日2回上映しているシネプレックス幸手へとポンコツ車を飛ばした。

ジブリプロデューサーの鈴木敏夫が「ロッキング・オン」の渋谷陽一のインタビューで、ラストシーンは当初の案はまるで違っていたと明かしている。主人公の堀越二郎も死んでしまい、カプローニと共に煉獄(れんごく)にいる設定だったという。菜穂子のセリフも「いきて」ではなく「きて」だったと。宮崎駿が「きて」の前に「い」を入れたことにビックリしたと語っている。「おいしいワイン」はその方が説得力があったかもしれない。しかし、彦作村長は、「い」を入れた瞬間、宮崎駿が自分自身と観客(未来の観客も含めて)を救ったことになったとも思う。「い」の意味と天才的な変換。もし「い抜き」だったら? 芸術作品としての完成度は上だったかもしれないが、生活者の視点では希望がなくなる。芸術と生活のギリギリの葛藤の中で、アニメ監督宮崎駿は死ではなく生の側、生活者の側に立つ、と宣言したのではないか。凡夫の想像力はこの程度である。日ごろ考えないことを考えると疲れる。

          武① 
          シャレた外観

「あのワインは本当においしいワイン」なのか、そんなことも考えながら、二度目の「風立ちぬ」を観終わり、やはりこの作品が傑作であることを確認した。なにやら「ウマズイめんくい村」らしからぬ出だしになってしまったが、いざ生きめやも。第二部B級グルメ編に移ろう。映画館のすぐ近くで遅いランチを取ることにした。以前、何度か入っている「中華厨房 武(チャイニーズキッチン タケ)」が今回ご紹介する店。

         武③ 
         餃子(3個)250円
         武④ 
         皮がパリっ、中はモチモチ

シ ャレた外観と吹き抜けのような天井の高い店内。ここの「醤油らぁめん」(520円)が値段の割には安くて美味いのだ。手づくり餃子3個(250円)も一緒に頼んだ。まだオープンして5年ほどだが、通りを挟んで客が一杯のチェーン店「幸楽苑」に対して、横浜などで修業した若い店主が腕で勝負している。12~3分ほどで餃子と「醤油らぁめん」が登場。こんがり焼けた餃子は皮がモチモチしていて、ニラ、キャベツ、白菜、豚ミンチなどがギュッと詰まっていて、ジューシーさは「上」だと思う。

          武⑤ 
          520円とは思えないこだわり
          武⑦ 
          これで太麺

「醤油らぁめん」は細麺と太麺を選べる。今回は太麺を選んだ。白い陶器のドンブリのデカさがこの店のこだわりを表している。手切りのチャーシュー、メンマ、分葱(わけぎ)、刻みネギ、大きい海苔。透き通った醤油ベースのスープ、その下にゆったりとたゆたっている中太麵。鶏ガラの脂とネギ油がキラキラ浮いた醤油スープを白いレンゲでまずはひと口。スッキリした中に奥深いじんわり感のある味わい。甘みがほのかにあるのは、さり気なく置かれた焦がしネギのためかもしれない。520円でこのこだわり方に軽く驚かされる。麵は太麺と言っても中太で、つるつるしていてコシもいい具合にある。チャーシューはたぶん豚もも肉だろう。柔らかくはないが肉肉している。

          武⑧ 
          この手切り感
          武⑥ 
          スープの旨味

全体的に今風の店構えで、それ故に、軽い感じに見えるかもしれないが、この若い店主はなかなかの腕前だと思う。厨房の奥から「いらっしゃいませ~」とか、「ありがとうございましたあ~」などと甲高い、歌うような声が聞こえてくる。料理すること自体が楽しくてしょうがない、そんな感じが見て取れる。若い女性スタッフも明るい。微笑ましいよ。案外、埼玉中華界の新しい風、になるかもしれない。


本日の大金言。

チェーン店より個人の店。マニュアルより職人の腕と勘。そういう世界も大事にしたい。



                      武10 
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初めて拝見

知人の女性から面白いブログがあると聞いて拝見いたしました。いきなり「風立ちぬ」と醤油ラーメンとはビックリ仰天、その結び付け方に呆れ返っています。確かに面白い。しかし、強引すぎる。小生もあの映画は見ましたが、ラストについてそんなことがあったことに驚きながら、520円の醤油ラーメンへと雪崩れ込んでいく、赤羽彦作村長のユニークな世界を垣間見せてもらいました。熱心な読者ではありませんが、また拝見させていただきます。
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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