想定外のごっついうどんと異種格闘戦

 うどんと言えば、讃岐うどん、稲庭うどん、水沢うどんが「日本三大うどん」と言われているが、これらのうどんは味も食べ方も洗練されていて、ある意味では、うどん界の「エリート」と言ってもいい。彦作村長もそれぞれの味を楽しんでいるが、その対極と言ってもいいうどんに出くわした。

友人の田吾作夫妻を誘って、今が見ごろの埼玉・行田にある「古代蓮の里」に行った。気温はゆうに30度を超えている。

                古代蓮① 

ここは、今から約41年前の1971年、ゴミ焼却場を建設するために造成工事を始めたところ、たまたまできた水たまりに、地中深く眠っていた不思議な蓮が咲き始めた。巨大な葉と見たことのないピンク色のきれいな花。「これはなんだ?」調べてみたら、約1500~3000年前の古代蓮であることが判明した。
行田市は突如出現した縄文時代の天然記念物に大喜び、観光の財産にもなると、工事をストップ。以来「古代蓮の里」として整備され、今では県外からも大勢の見物客が訪れる観光スポットになった。

「ゴミ焼却炉を造るつもりが、そんなハスではなかった」
「古代蓮というより金の蓮」
「お釈迦さんもびっくりのハスたないシャレだ」
「これがホントの誇大シャレ」
彦作村長がくだらないダジャレを言いながら、「古代蓮の里」の一角にあるうどん食堂に入った。うわっ、行列が。しかも、うどんの器は発泡スチロール。

「きれいな蓮の花を見た後にこれじゃねえ。場所を変えましょ」
美熟女の村民2号がゲンナリした表情でそっと耳打ちした。
全員がうなずいた。古代蓮のきれいなピンク色の花の群れと人の群れを後に、近くの「さきたま古墳群」前にあるうどん屋に行くこととなった。実は村長も一度は行ってみたかったうどん屋だった。

「元祖 田舎っぺうどん」と書かれた巨大な看板が、目に入った。「武蔵野うどん」とも書いてある。
「武蔵野うどん? 武蔵野夫人なら知ってるけど、武蔵野うどんなんて初耳だよ」
「村長、ここはうまいよ。おすすめ。とにかく見てのお楽しみ。食べてみてのお楽しみ。うどんと結婚は食べてみないとわからない」
うどん通の田吾作どんが意味ありげにニヤリとする。

「男も同じよ。食べてみたら、はずれだった。返品も効かないということもある」
田吾作どんの女房がチクリ。

ここも混んでいたが、店内は30人くらいは楽に座れそうなくらい広め。しかも、田舎の木こり小屋のような開放的な造りで、おばさんが目の前で手打ちうどんを打ち、すぐ横ではおっさん(失礼)が大きな釜でうどんを茹で上げている。その開放性が気に入った。

村長は「一番人気です」と書いてあった「肉ねぎ汁 もりうどん」(630円)を注文。それと、メニューで気になった「名物きんぴら」(210円)も注文。すぐに、きんぴらがやってきた。で、でかい! ゴボウ一本が普通のきんぴらの10倍くらいあるのではないか? 

         田舎っぺうどん③ 

田吾作どんが笑いながら、「うどんは固くてぶっといので、ゆで上がるのに10分くらい見た方がいい。その待つ間にきんぴらを食べるのが通なのです」
口の中に入れて、奥歯でカミカミ。すぐに、唐辛子とラー油が共同謀議したような辛みが口の中を駆け巡った。うまいとまずいが火花のように交互に絡み合い、それがやがて「ウマズイ」に変化していった。田吾作どんのうれしそうな顔。コップ一杯の水が不埒な村長を至福へと導いていくようだった。

もりうどんがやってきた。ご、ごつい。太さはもちろん、その圧倒的なボリュームとその長さも。肉ねぎ汁に付けて口に運ぼうとするが、切れ目がないのだ。途中、箸で切ろうとしたが、固くて切れない! 

うどんが「無駄な抵抗はよしなさい」と言っているようだ。


あまりの事態に、切るのをあきらめて、ブリッジ状態のまま、口に運ぶことにした。鰹節のよく効いた醤油ベースの意外とまろやかなつけ汁が、ぶっとくて歯ごたえ十分のうどんを引きたてている。彦作村長はこれほどのごっついうどんを食べたのは初めて。これに比べれば、あの讃岐うどんが洗練された美女に見えるほど。

まさに格闘だった。ドイツでゴムタイヤのようなロールキャベツと格闘したことは以前に書いたが、まさか平和な日本で、しかも埼玉で、このような体験をするとは・・・。ドイツと決定的に違うのは、格闘ではあるものの「うまい」ということ。山登りをした後の爽快感とでも言ったらいいのか、格闘の中に愛があるのだ。ジューシーな愛。

         田舎っぺうどん④ 

「武蔵野うどんって、実は歴史がない。ここは創業40年、この味を守っているんですよ。武蔵野というより武州うどんと言った方が近いと思うよ。秩父から北埼玉にかけて昔からある田舎うどんを、イメージがいいから武蔵野うどんとしたんじゃないかな。無添加でごつごつしていて噛みごたえが只事じゃない。ま、俳人の金子兜太のようなうどんだね。金子兜太の句を読むのはある意味で格闘だからねえ」
田吾作どんがドヤ顔で言い放った。

おおかみに蛍が一つ付いていた
曼珠沙華どれも腹だし秩父の子
梅咲いて庭中に青鮫が来ている

そんな兜太の句が頭に浮かんだ。すべてをお腹に入れると、満腹感と同時に妙な達成感が彦作村長を包み込んだ。


本日の大金言。

ごっついうどんと闘いながら人生を再確認する。何事も曖昧な日本の中で、武州うどんは貴重だ。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

最新記事
カテゴリ
彦作のつぶやき
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
09 | 2017/10 | 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR