暮れの築地の「究極あなご丼」

 師走の築地市場の混雑は半端ではない。ウマズイめんくい村の今年の喰い納めカウントダウンは、ここに決めた。エンターテインメント新聞社が築地にあった時代から、彦作村長にとっては築地市場は「特別な場所」である。場内と場外があるが、食べるなら場内に限る。観光化が進み人が殺到し、昔のように、明け方からビール片手に新鮮な魚介類を楽しむ余裕はない。

午前11時過ぎ、場外市場の雑踏に揉まれながら、場内市場に入ると、ターレット(場内運搬車)やリフト車が、所狭しと走り回っている。村民2号は「危ないわよ」プンプン怒っている。マグロの頭が転がっていたりする。これだこれだ。久しぶりの場内に村長の胸は小躍りする。だが、飲食店が集まっている6号館や8号館前に行くと、メディアなどでよく取り上げられる人気店の前はものすごい行列。外国人の観光客もいる。値段も市場とは思えないほど安くない。村長は、その中でも実力の割には待ち時間の少ない「あんこう屋 高はし」にターゲットを絞った。ここの穴子丼は魚を仕入れに来るプロの間でも評価が高い。

           築地場内③ 
           美味まで30分

それでも、「高はし」の前には、8~9人ほど並んでいた。3軒隣りの「海鮮丼の大江戸」はオーバーではなく30~40人の行列。店の人が行列の整理に出ているほど。紺地のノレンの下に、「当店名物あなご丼 1300円」と紙にマジックで書かれた表示が、いかにも築地らしい。

            築地場内④ 
            パブロフの犬

30分ほど待って、ようやく中に入れた。狭い店内はカウンター席のみで、9人ほどしか座れない。奥が厨房になっていて、そこで白衣にゴムのエプロン、長靴という築地スタイルの板さん(たぶん二代目と三代目)が料理を作っていた。村長は「あなご丼」(小鉢、味噌汁付き1300円)、村民2号は「せっかく築地市場に来たんだから刺身に限るわ」と「刺身定食」(ご飯、小鉢、味噌汁付き1300円)を頼んだ。運のいいことに、村長が頼んだ瞬間「あなご丼はこれでヤマです!」(注文打ち切りの隠語)。ツイてる、ぎりぎりセーフ!

           高はし③ 
           喧噪の中の至福の時間

あなご丼が来るまでの間、「菊正宗」(1合500円)を熱燗で頼んだ。小鉢の切干大根と里芋の煮付けをつつきながら、今年一年を振り返っていると、10分ほどで、主役の「あなご丼」がやってきた。穴子は近海で取られたもの。見るからに柔らかくふっくらと煮付けられた一匹分の穴子さま。その上にどんと乗っかった本ワサビ。穴子の下には刻み海苔が敷かれ、全体として、確かに、プロの料理人が絶賛する雰囲気を漂わせていた。

           あなご丼①  
           お待ちしておりました
           あなご丼⑨  
           究極のあなご丼
           あなご丼⑤ 
           言葉はいらない

箸を付けると、オーバーではなく穴子が崩れ落ちそうになった。姿かたちを崩さずにここまで柔らかくふくよかに煮付ける腕前に感動を覚えながら、まずはひと口。穴子は口の中でふわりと立ち上がり、意外に薄味で、とろけるような余韻とともに、ノドの奥へと消えて行く。炊き立てのご飯(たぶんコシヒカリ)にかけられた甘辛だれは、あんこうの出汁(肝も入っている?)を加えていて、これが実に旨い。ワサビを付けて、ほろほろと崩れそうになる穴子とご飯を一緒にかっ込む。その幸福な時間。村長がこれまで食べた「あなご丼」の中で間違いなくベスト3に入る美味さ。食べ終えるのが惜しいと思ったほど。

            あなご丼⑦ 
            およしになって

「刺身も本マグロとブリと鯛だけど、いつも食べるのと違う。さすがの味。1300円は安くないけど、この内容だと仕方ないわ。待ち時間はどうにかして欲しいけど」
「期待以上の味だった。これだけ観光化されてしまって、この味を維持していくことは大変だと思う。店の人のストレスも感じたよ。いい魚がどんどん値上がりして、『この値段でやっていくのが大変なんですよ』ってこぼしてたけど、案外本音かもしれない
「客がこれだけ入っても儲からないとも言ってたわね。それはどうかと思うけど、頑張ってほしいわ。村長も来年はもう少し頑張って稼いでね」
「深海に逃げたくなってきた。私は穴子になりたい・・・」
「・・・・・」

本日の大金言。

世界一の巨大な胃袋「築地市場」。今や国内だけでなく、海外からの観光客まで飲み込もうとしている。その出口問題にも目を向けたい。


                      あなご丼⑧ 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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