佐野ラーメンの元祖・宝来軒うまさの秘密

 佐野ラーメンは不思議な存在である。札幌、喜多方、博多が「日本三大ラーメン」と言われている。しかし、首都圏からもっとも近く、ラーメン店の数でいえば、喜多方の約120軒を大きく上回る約210軒がノレンを下げているというのに、どうしたわけか首都圏で「佐野ラーメン」というノレンを下げている店は少ない。「札幌ラーメン」や「博多ラーメン」さらにはここ数年で増えている「喜多方ラーメン」に比べて、その存在は地味である。

彦作村長は、宮仕え時代から、佐野にもよく足を運んだ。50~60軒ほどは食べているが、ほとんどハズレがない。青竹手打ち麵という中国人経由の特殊技術で打った麺は、加水率が高く、しかもかなりの熟練を要する。店にもよるが、平打ち縮れ麺は柔らかいのにコシがある。醤油ベースの澄んだスープとチャーシュー、ナルト、シナチクとのバランスが絶妙で、同じ平打ち縮れ麺の喜多方ラーメンと共通点が多い。ラードや背油を必要以上は使わず、流行りの魚粉などは見向きもしない。だから、妙にギトギトしていない。はっきり言おう。村長は佐野ラーメンの大ファンである。

「佐野ラーメンが全国展開に積極的でないのは、水と麺へのこだわりが強く、佐野以外では同じように作れない、ということがあると思います。水がとにかくいいのです。日本名水百選にも選ばれている出流原弁天池湧水や蓬莱山の伏流水をわざわざ汲みに行く店もあります。水道水も佐野はそういった自然の水源を使っているんですよ。だから、佐野には浄水場がないんです。その必要がないんです。これも佐野ラーメンが佐野以外にあまり出ていかない理由です。佐野ラーメンはぜひ佐野に来て食べてください、そういうこだわり方が半端じゃないんです」
佐野で複数のラーメン関係者に話を聞いた結果である。


          佐野ラーメン・宝来軒② 


佐野ラーメンの元祖は「宝来軒」。
昭和5年創業。当時、佐野駅前で営業していた「エビス食堂」で働いていた先代が、中国人コックから青竹で麺を打つ技術を教えてもらい、そこに独自のワザと味を工夫して、「宝来軒」をスタートさせた。現在は2代目と3代目が宝来軒のノレンを守っている。

きわめて良質の天然伏流水と中国人の存在。このあたりは、喜多方ラーメンの元祖「源来軒」と似ている。喜多方ラーメンについてはいずれ現地からレポートするつもりである。

で、その原点「宝来軒」に久しぶりに行ってみた。入口には「餃子はありません」という小さなプレートが。「青竹手打ちラーメン一筋」の矜持がビンビン伝わってくる。

もちろん、「ラーメン」(600円)を注文。コップに入った水が実にうまい。平日なので、土日のような混み具合ではない。待つこと7~8分、あの懐かしい正統派ラーメンどんぶりがやってきた。まず他のラーメンと明らかに違うのは、そのあまりに透き通った醤油ベースのスープだ。

たぶん鶏ガラから出た脂がうっすらと浮いている。ラーメンに美しさを感じることは少ないが、その透き通り具合が「おぬし、只者ではないな」と一瞬息をのむほどきれいなのだ。そこに余分な脂身のない大きめのチャーシュー、ナルト、シナチク、海苔、刻みネギが控えている。「うーん、完ぺきということはこういう事か」とひれ伏したくなるほどの出来栄え。


        佐野ラーメン・宝来軒① 
まずスープをひと口。思った通り、淡泊を装いながら、奥の深いまろやかなコクが粘膜にささやきかける。麵は見た目よりもコシが強く、しかも食感がつるりとしている。チャーシューは固すぎず、柔らかすぎず、噛むとほんのりと甘みがしみ出てくる。村長は宝来軒のシナチクが好きだ。普通、シナチクはそっけないか妙にふにゃっとしてるかどちらかの比重が高いのだが、この店は違うと言わざるを得ない。タケノコの持つ本来の甘みをそのまま殺さずに、しかもいい食感を押し出している。

これだ、これだ。お宝鑑定団ではないが、「いい仕事、してますねえ」と言いたくなった。ちらっと見ると、厨房には高齢の2代目が眼光鋭く立っていた。腰痛ヘルニアの彦作村長と目があってしまった。敬意を表して挨拶すると、二言三言。
「純粋に青竹できっちりと打っている店は少ないんですよ。うちは先代から同じ方法でやってます。手間を惜しんだらいけません」

若い3代目が青竹で手打ち麺を作っているのを見た。その神経の配り具合が、まるで工芸品でも作っているように見えた。こうやって代々受け継がれていくんだなあ、彦作村長は本物に出会ったいい余韻を楽しみながら、店を出ると、佐野の空を見上げた。サノ、よいよい。夏雲の間からそんな合いの手が聞こえるようだった。


本日の大金言。

宝来軒のラーメンは目立ちたがりが闊歩するラーメン界の笠智衆である。

         佐野ラーメン・宝来軒④ 





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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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