浅草・老舗洋食屋のヤキメシ

 このところ、なぜか東京・浅草によく足を運ぶ。今回は隣村の友人夫妻と表通りから裏通りのブラ歩きを楽しむことにした。基本の浅草寺でお参りしてから、喧噪(けんそう)を避けて、千葉屋の大学芋を買って、徳太楼できんつばを包んでもらって、喫茶ピーターでコーヒーと田舎じるこを賞味する。ざっとこんなディープなコースだったが、ランチをどこにするか、迷った。「洋食屋がいい」という女性陣の声で、最終的に2軒に絞った。

           浅草            
           基本の浅草寺

永井荷風が通った「アリゾナキッチン」にするか、池波正太郎も愛した「洋食ヨシカミ」にするか。どちらも老舗の洋食屋で、そう安くはない。決め手は、昭和26年(1951年)創業以来の、目の前で数人のコックがフライパンを操る見事なワザが見れる方を取った。土曜日ということもあって、「洋食屋ヨシカミ」の前は10人ほどが名前を呼ばれるのを待っていた。村長にとっては約10年ぶりのヨシカミ。「うますぎて申し訳ないス!」という有名なキャッチコピーが「いつも待たせて申し訳ないス!」に見えた。

           ヨシカミ 
           老舗の矜持
           ヨシカミ② 
           行列覚悟

「30~40分ほどの待ち時間です」と言われたが、たまたま回転がよかったのか、20分ほどで入れた。入った瞬間、7~8人ほどのコック帽姿のコックさんが立ち上る炎とともに、見事な手つきでフライパンを動かしている姿が目に飛び込んだ。これだこれだ。ヨシカミでしか見れない老舗洋食屋のレアな光景。だが、オープンカウンター席は満杯で、奥に続くテーブル席に案内された。

           ヨシカミ③  
           狙い目のゾーン

赤のチェック柄のテーブルクロスも悪くない。池波正太郎のように日本酒でビーフシチューとかビーフカツレツと行きたいところだが、このところの村の財政事情もあり、この店の隠れた逸品「エビ入りヤキメシ」(1250円)を頼むことにした。村民2号と友人夫妻は「ハンバーグステーキ」(1100円)とライス((350円)を注文。混み合っているのにスタッフの女性の対応は悪くない。

           ヨシカミ1  
           エビ入りヤキメシ

ナイフとフォークとスプーンが置かれ、15分ほどで「エビ入りヤキメシ」がやってきた。浅草の老舗の洋食屋のいい雰囲気はまだ生きている。何より「ヤキメシ」という言葉の響きがたまらない。チャーハンでもなくピラフでもなくヤキメシ。ある種「頂点のヤキメシ」としか言いようがない。さいの目切りのハム、マッシュルーム、タマネギ、、エビ、グリーンピースと具は実にシンプル。だが、ひと口口に入れ途端、フライパンで焼かれた絶妙なライスが立ち上がってくる。味付けは多分塩とオイスターソース、それにかすかに醤油の風味。唸りたくなる味で、ライスの一粒一粒がコックの魔法にでもかかったように、輪郭がくっきりとしていて、タマネギの甘みとその他の具が絡んでくる。

           ヨシカミ⑦ 
           うむむむ
           ヨシカミ⑧ 
          わっはっは

 だが、ボリュームは以前食べたときよりもやや物足りなく感じた。
「ハンバーグはさすがという味で、ソースもハンバーグもポテトサラダもいうことないわ。ライスもいい」
「昔ながらの浅草の洋食屋の実力は衰えていない。ただ、もう少し一部でも安くならないものか。たとえばヤキメシとか、カレーライスとかオムライスとか」
「ハヤシライスなんてあまり作らないんだって。店としてはビーフシチューとかステーキをもっと食べてほしいという思いがあるようよ。浅草の老舗洋食屋の悩みってとこね」
「それでも客が押し寄せるんだからスゴい。そのうち、うますぎて申し訳ないス、の横に小さく、待たせて高くて申し訳ないス、って入れるかもな」
「まさか。そういう客は他の店に行けばいいのよ。ヨシカミは雰囲気から何からすべて込みの値段なのよ。浅草洋食文化の無形文化財なんだから」
「とても池波正太郎にはなれない」
「当り前でしょ。池乃めだかにだってなれないわよ」
「・・・・・・」


本日の大金言。

古きよき洋食屋のワザ。それを守るには客もお賽銭が必要なのである。かしわ手。


                        ヨシカミ12 


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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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