節分の奇祭と門前のうどん

 「埼玉の加須に350年以上続いている面白い節分会(せつぶんえ)があるんだけど、行ってみない? 凄いらしいわよ。で、その門前にいいうどん屋があるらしいのよ。鯰(なまず)の天ぷらも名物なんだって」
村民2号が小鼻をぴくつかせて、彦作村長の好奇心をくすぐった。

           岡村屋16  
           鬼追い豆まき式(總願寺にて)

関東三大不動にも数えられる「不動ヶ岡不動尊 總願寺(そうがんじ)」の鬼追い豆まき式は350年以上の歴史を持ち、燃え盛る長い松明(たいまつ)を持った赤鬼が總願寺本堂の回廊を駆け回るという全国でも珍しい行事。その後に年男年女が豆まきを行う。一度見てみたいと思っていた村長は、加須うどんと鯰の天ぷらという餌にも引きつけられ、電車で加須へと向かった。

          岡村屋①     
          加須うどんの老舗「岡村屋」

鬼追い豆まき式が行われるのは3回だが、どうせ見るなら午後8時半からの夜の部がいい。少し早めの午後7時に總願寺に着くと、すでに多くの見物客が場所取りしていて、露店の活気とともに、お祭り気分で盛り上がっていた。急がば回れ。ウマズイめんくい村の怪しい一行は、門前にある「岡村屋」のノレンをくぐることにした。創業が江戸中期という加須うどんの中でも老舗中の老舗のうどん屋さん。いい佇まいである。 

          岡村屋④ 
          おおっと

店内は混み合っていたが、たまたま席が二つほど空いていた。そこに腰を下ろして、メニューの中から「鯰(なまず)天ぷら」(550円)と「野菜天盛り合わせ」(700円)、それに「うどん(もり)」(500円)を頼んだ。地酒「純米吟醸 浮城」(300ミリリットル 600円)もしっかり頼んだ。節分のぜい沢。  鬼がいるときの洗濯。

           岡村屋⑨  
           いい節分だっぺ

10分ほどで「鯰天ぷら」と「浮城」が登場。これが美味だった。コロモはカラリと揚げられていて、中の鯰の切り身はカレイのように白く、淡泊できれいな味わい。うなぎとも違う、柔らかな食感で、淡泊の中に、密度の濃いまったり感がある。

「鯰を食べたのは初めてだけど、川魚の臭みが全然ないわ。予想外に美味い。天つゆより塩で食べた方が美味いんじゃないかしら」
村長も鯰の天ぷらは初めてだよ。あの顔が想像できないほど、気品のある淡麗な味だな。野菜天も盛りがいい。多分ごま油で揚げているんじゃないか。うどん屋の天ぷらとは思えない。この店の天ぷらの実力は相当なものだと思う」
「コロモの付け方と素材がいいんじゃないかしら? 田舎の天ぷらにしては上出来だとは思う」
「このローカルなB級の美味は、座布団3枚の京都の調布先生も2枚の渓流斎先生も多分わからないだろうな。ケッケッケ

そんな品評をしてると、もりうどんがやってきた。ほろ酔い加減を見計らって、出してくるあたり、老舗の気配りはマル。

            岡村屋⑥ 
           鯰天ぷら(奥は野菜天盛り合わせ)
           岡村屋⑧ 
           鯰のムムムの美味

もりうどんは色が白く、太さがまちまち。一本が驚くほど長い。 田舎の手打ちうどんの計算されたワザで、口に入れた途端、小麦粉の風味が緩やかに立ち上がってきた。コシはそれほど強くない。讃岐うどんと伊勢うどんの中間のような食感。胃に優しそうなうどん。つゆは鰹よりも煮干しが強めで、色は濃い目だが、かえしはほどよい。甘過ぎず辛過ぎず。
「うどんは田舎の素朴なうどんって感じ。伊勢うどんに近いかな。つゆは私の好みだわ」
「うどんに思ってたほどの感動はない。それ以上に天ぷらがいい。鯰の天ぷら、恐るべし」

           岡村屋11 
           加須のもりうどん
           岡村屋13 
           素朴なうどん

ちょうどいい時刻になって、ほろ酔いのまま總願寺の境内に行く。鬼追い豆まき式が始まった。歓声とともに赤鬼が松明を持って現れた。後ろには剣を持った青鬼、こん棒を持った黒鬼が続く。火の粉が夜空を焦がす。鬼は誰だ?鬼はどこから来て、どこに行く?心の中の内なる鬼を自覚する人が果たしてどのくらいいるのか? そこからすべてが始まるのではないか。豆が村長に向かって飛んできたような気がして、村長は頭を抱えるのだった。鬼はァ内ィ~。


本日の大金言。

鬼は外、福は内。どんな悪人でも多分同じことを願っている。その行事が毎年2月3日に行われる。不思議だ。




                       岡村屋15
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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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