人形町の絶妙「幻の鳥わさ丼」

 東京・人形町から水天宮あたりはかつて折に触れて通った場所で、老舗の美味い料理屋や居酒屋も多い。蠣殻町(かきがらちょう)の「よね家」もその一つで、ここのランチタイムはメニューが置いてない。それもそのはず、「鳥わさ丼」のみというある種凄みを感じる料理屋さん。それでも、客が押し寄せ、「売れ切れ次第終了」とくる。だが、決して高ビーではない。

彦作村長は宮仕え時代に二度ほどこの店に行こうとしたが、「すいません、お終いです」という言葉とともに、目の前で「鳥わさ丼」は羽根を付けてどこかへと飛んで行った。村長にとってはいわば「幻の鳥わさ丼」で、いつかは食べてやろうとそのチャンスをうかがっていた。そのチャンスが来た。たまたま人形町に用事が出来、時計を見ると、正午前。しめた、近くのサラリーマンやOLが押し寄せてくる前に行けば、何とかなる。

           よね家 
           よね家のランチ

ある程度の行列を覚悟していたが、どうしたわけか、すんなりと入れた。それでも、正午10分前なのに、店内はほぼ満員だった。大きな古い火鉢が置かれた暗い店内。目が慣れてくると、100年ほど前にタイムスリップしたような世界が・・・。年季の入った4席ほどのカウンター席と4人用テーブル席が4つほど。靴を脱いで上がると、カウンター席に案内された。カウンターの前が厨房になっていて、そこで店主だろうか隙のない白衣の料理人が一人で鳥わさ丼作りに励んでいた。手練れの職人技。

           よね家11 
           火鉢と板張り

柔らかい物腰の女性(若女将?)が「小、並、中、大とありますが、どちらになさいますか?」。「並(890円)でお願いします」と村長。目の前には焼酎の瓶が並んでいる。15~18分ほど待たされて、小鉢二つが置かれ、その後に、主役の「鳥わさ丼」と赤だしの味噌汁がやってきた。有田焼のドンブリに湯引きした半生の鳥肉がモンブランのように折り重なっててんこ盛りされていた。頂上には大葉と赤芽じそ、菊の花、それにワサビ。うむむ。村長はそのボリュームとビジュアルに目を見張った。

          よね家② 
          待ってましたァ~
          よね家④ 
           絶景かな~
          よね家⑤ 
          言葉はいらない

湯引きした半生の鳥肉は一枚がかなりの大きさで、村長は思わず肉布団を連想してしまった。それが数えてみたら7枚! 包丁できれいに切り込みが入れられていて、薄っすらとかかった醤油だれが食欲をそそる。その下には黒々とした海苔と白ゴマ、炊き立てのご飯が控えていた。このボリュームで並とは・・・軽い衝撃を覚えながら、まずはひと口。柔らかいのにしっかりとした歯ごたえ。脂がないので胸肉だと思うが、胸肉にしてはパサパサしていない。淡泊さとジューシーさが微妙なバランスを保っている。ダシの効いたほんのり甘めの醤油だれが絶妙で、切り込みが豊潤な世界を後押ししている。プロのワザと言わざるを得ない。

           よね家⑨ 
           おいでやす

ワサビがかなりピリッとくる。「鳥わさ」なのだから当たり前といえば当たり前だが、ややもすると単調な味わいの中で、これがいいアクセントになっている。ご飯はやや固めで、村長の好み。立ってるご飯。いい料理屋はご飯がいいということを改めて実感。味噌汁は普通。あっという間にドンブリの底が見えた。幻から現実をつかみ出し、ようやく胃袋に収めた満足感。待ち時間が長すぎるのもすでに気にならない。お茶を飲んで静かに呼吸を整える。へそのあたりからコケコッコーという鳴き声が聞こえたような気がした。


本日の大金言。

鳥とワサビで鳥わさ丼。どこか江戸っ子の洒落を感じるドンブリだが、美味い鳥わさ丼を食べさせてくれる店は意外に少ない。




                       よね家10 

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違和感

よね家の鳥わさ丼は確かにうまいと思います。しかし、あの待ち時間はいけません。たまたまだったのかはわかりませんが、私は着丼まで都合40分も待たされました。中を食べましたが、かなりの量で、半生のささみ肉は食べているうちに少し飽きが来ました。村長はべた褒めですが、違和感を覚えました。
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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