オタクの街の「立ち食い」最高峰

東京・千鳥ヶ淵で友人たちと「夕暮れの花見」とシャレ込むつもりが、土砂降りの中の花見となりそうだった。鉛色の空を見上げながら、彦作村長は早めに出かけ、秋葉原で途中下車することにした。傘を差しながら昭和通りを上野方向へ歩いていくと、「そば・うどん あきば」の看板が見えた。シンプルな紺地の暖簾が下がっている。ここだ、ここだ。村長は傘をたたむ。今立ち食いそばファンの間で注目の店である。

          あきば 
          秋葉原の隠れ名店

店内はゆったりしていて、大きな木のテーブルと小さなカウンターがあるだけ。座って食べるので、厳密に言うと、「立ち食い」ではない。だが、入り口に発券機が置いてあり、「もり 360円」「天もり 460円」という安い値段設定は立ち食いの範疇と言ってもいい。村長は店主自慢メニューと書いてある「冷や鴨そば」(570円)を頼んだ。中年の店主が一人で切り盛りしていた。左手に打ち場があり、この店が「立ち食い」のレベルではないことを無言で示していた。

           あきば③ 
           立ち食い?
           あきば④ 
           これに決ーめた

信州・戸隠からそば粉を取り寄せ、それを店主が打つ。茹で上げまですべてを店主が行う。10分ほど待つと、「出来上がりました」の声。テーブル席で賞味となった。青葱と細かい鴨肉が乗っかっただけのシンプルな構成。まずはひと口。そばは茶色がかっていて、戸隠の特徴である挽きくるみで、そのごわっとしたコシとスッキリした歯ごたえに思わずむむむと唸ってしまった。そば自体の風味と店主の腕の確かさ。

           あきば⑤  
           冷や鴨そば
           あきば⑦ 
           鴨と青葱
           あきば10  
           戸隠そばの美味

ツユは薄めだが、出汁がよく効いている。どこか甘い旨味がにじみ出ているのは鴨肉と青葱の相乗効果だろう。村長がこれまで食べた立ち食いそばの中で、この価格でこれだけの高みに達したそばはすぐに思い出せない。発券機や箸がプラスチックなことがなければ、ここが立ち食いとは到底思えない。

          あきば⑨ 
          ツユの奥深さ

ツユまで一滴残さず飲み干してから、店主としばし雑談。
「手打ちは疲れるんですよ。せいぜい一日50~60食くらいしか出せない」
「へえー。この値段でよくやってますね」
もともとは日本橋の老舗そば屋で修業していたんです。もり一枚千円の店でしたよ。秋葉原に店を出して、本物のそばを出来るだけ安く提供する。それに切り替えて毎日そばを打ってるんです。大変ですけどね(笑)」

その数時間後、雨の中の花見は神保町の居酒屋に場所を移し、終電近くまで虎の咆哮が辺りの雨音をかき消すのだった。


本日の大金言。

秋葉原はオタクばかりでなく様々な顔を持つ。真面目で安くて本物のそば屋が新しい顔になる日も近い。




                          あきば12
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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