汗の復権を!これぞバブル以前の冷やし中華と餃子

「 冷やし中華」についてはこれまで何度か書いたが、その起源や地域性についても諸説あり、その後の日本社会の大きな変化によって、ラーメン界における真夏の正妻から真夏の愛人へとフェードアウトしていったように思う。何より、彦作村長自身が、昔ほど冷やし中華を食べなくなってしまったからだ。

気が付くと、大勝軒・山岸一雄が発案した「つけ麺」に正妻の座を奪われ、ソバ、うどん、冷製パスタなど麵界のスターもあちらこちらで花火を打ち上げ、いつしか「冷やし中華」は高度成長期のあの輝きを失っていったように思う。1985年のプラザ合意が引き金となって発生したバブルによって、日本人は身の程を忘れて踊りまくってしまい、その後も汗水を流さずにマネーを稼ごうとすることを、「お金儲けのどこが悪い」という一種の開き直りで、奇妙なヒーローを次々と作り出してしまった。

バレなきゃ法律を破っても構わない。汗を流さずにいかにお金を稼ぐか。何、たとえバレテしまっても、土下座して数秒だけ神妙な顔をしてればいい。彦作村長はこうした人間の性(さが)を否定するつもりはない。否定しようとしても否定しきれないということを経験上知っているからだ。

冷やし中華は、バブル以前の「汗の時代」のヒーローであり、汗の価値が軽くなってくるにつれて、輝きを失っていった。そう思ってしまう。もちろん、そこにはいささかの酸っぱい自戒も込められている。

さて、群馬県みどり市を散策中に、彦作村長は、「龍正」という「純手打ち」を看板に掲げるラーメン屋に入った。ここに入るのは5、6年ぶり。佐野ラーメンと似ているようで、どこか違う。しかし、しょう油ベースのあっさり系の真面目な手づくりラーメンという雰囲気が好きだった。ここは餃子も実にうまい。

異常猛暑が彦作村長を目覚めさせた。そうだ、餃子がいい。それと今回はラーメンではなく冷やし中華だ! 村長の決断は早かった。

         みどり市・龍正② 

バブルがはじけ、失われた10年、いや20年。そこに3.11が追い打ちをかけて、戦後築き上げてきた日本社会が根底から崩れ、行き先も見えないまま漂流し始めているというのに、いまだ頭のどこかに、バブルの夢が残滓として残っている。

冷やし中華の復権こそが、日本から失われつつある汗の復権につながるのではないだろうか? よく考えれば、おかしな理屈だが、村長は自分でも認識しているように「バカの3乗」の頭をフル回転させて、そう考えたのだった。かつてジャズピアニストの山下洋輔さんが1970年代に作った「全日本冷やし中華愛好会」の復権が今こそ必要ではないのか?

「冷やし中華そば」(750円)と餃子(6個入り300円)を注文。待つこと15分ほど。来た来た。この店で冷やし中華を食べるのは初めてである。見た瞬間、どこか懐かしい佇まい。キュウリ、細切り卵焼き、トマト、チャーシューの細切り、コーン、それに湯をくぐらせたもやしの存在。紅ショウガも「私が正妻よ」然と自己主張している。和辛しも端っこで黄色い主張を忘れない。昔から関東地方にある定番の「冷やし中華そば」がそこにはあった。ぜいたくを言わせてもらえば、ここにナルトと細切りハムがあれば、完ぺきなのだが・・・。

ひと口で、「汗の昭和」がよみがえってきた。甘酢ダレがまさに甘酢ダレなのである。ところてんにかけたような酢しょう油に砂糖が溶け込んでいて、それが愚直なほどに伝わってくる。計算された隠し味のような世界は見当たらない。手打ち縮れ麺のつるりとした歯ごたえとうまく絡み合う。

これだこれだ。今はやりのラーメン本には多分出てこないだろう、汗をかいたものにしか味わえない味を堪能する。さらに餃子である。見た目はイマイチだが、外側がパリッとしていて中は実にジューシー。このもちもち感は好感が持てる。

        みどり市・龍正① 

彦作村長は、関東のローカルシティにこんな店が息づいていることに敬意を表したくなった。永田町の政治屋や霞が関のお役人、そして金融関係のエリートたちに、この冷やし中華と餃子を「へーい、お待ちぃー」と出前したくなったが、すぐに思いとどまった。それは「龍正」と「汗」に失礼ではないかと思い直したからだった。



本日の大金言。

酢の実力を忘れてはいけない。酸っぱいは成功の素になる可能性もあるのだ。
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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