店も絶滅危惧?「老舗の絶妙うな重」

 上州に住むゴッドマザーの快気祝いを群馬・桐生市で行うことになった。うなぎ好きのゴッドマザーに、村長が清水の舞台から飛び降りる覚悟で「土用の丑の日が過ぎちゃったけど、蒲焼はいかがですか?」とお伺いを立てると、すかさず村民2号が「珍しくいい提案!」と反応した。続けて「どうせ食べるなら老舗がいい」。ゴッドマザー以上に村民2号がうなぎ好きだったことを思い出した。

桐生のうなぎの老舗と言えば、坂口安吾も愛した「泉新」(天保6年=1830年創業)だが、村長は、フトコロ事情がよかった宮仕え時代に何度か行ったことがある。確かに建物から料理までさすが老舗と言いたくなる味わいで、関東有数の鰻屋であることは間違いない。だが、へそ曲がりの村長は、7年ほど前に入った、もう一つの老舗が忘れられない。

          山もと① 
          もう一つの老舗{山もと」(桐生市錦町)

「泉新」とばかり決め込んでいたゴッドマザーと村民2号を、錦町の「蒲焼 山もと」(昭和11年=1937年創業)に連れて行った。ブーブーいう2人が、その古い、風情豊かな店構えをひと目見た瞬間、「あら、ここはいいかもね」に変わった。中に入ると、小上がりになっていて、二間の座敷に、テーブル(4人用)が3つしかない。すぐ左手が板場になっていて、かなりご高齢の店主がうなぎを割いていた。背中がいい。奥の6畳の座敷に座ると、女将さんが、おしぼりとお茶を持ってきた。ゆったりとした時間が流れている。

           山もと1   
           うなぎを裂く店主
           山もと② 
           座敷の風情・・・
           山もと③ 
           メニューは少ない

村長にとっては2年ぶりのうなぎ。メニューが少ないのが好感。村長は奮発して「うな重」(3300円)、村民2号も同じもの。「きも吸」(100円)も付けてもらう。ゴッドマザーは食が細くなっているためか、「蒲焼」(2200円)を頼んだ。ビールを頼むことも忘れない。この店の凄さは、注文してから、うなぎを裂き、素焼きをし、蒸し、さらにタレを付けて焼く。その作業を、ご高齢の店主が一人で行っていること。だから時間もかなりかかる。それを待つ楽しみ。いい匂いが板場から流れてくる。

           山もと④ 
           うな重の登場
           山もと⑥ 
           肝吸いの美味

40分ほど待って、肝吸い、次に「うな重」がやってきた。肝吸いはやさしく深い味わいで、この店の実力がわかった。うなぎの肝とミョウガ、それに板わさが一切れ。そのバランスが絶妙だった。主役の「うな重」は、蓋を取った瞬間、いい匂いとともに、重箱一杯に大きな蒲焼がズシンと横たわっていた。うなぎの厚みと脂のテカり。尻尾の方に焼き過ぎも見られるが、山椒をぱらぱら振って、口中に運ぶと、柔らかさとふくよかさが広がった。代々継ぎ足したタレは甘すぎず辛すぎず。鰻のいい脂分が美味という他はない。炊き立てのご飯(こしひかり)との相性がいい。絶妙なタレのかけ加減。ゴッドマザーも村民2号も無言で箸を進めている。

「うなぎは昔から同じところから仕入れていて、国産ものです。最近はあちこちから変なものが入っているようですけど、うちは昔から同じものです。どうぞご安心ください」
村長のストレートな質問に、女将がそう言って、かすかに笑った。年季の入ったいい笑顔だった。

           山もと⑧  
            ふくよかな豊饒
           山もと10 
    串打ち三年、割き八年、焼き一生
           山もと⑨  
           言葉はいらない

日本うなぎが絶滅危惧種に指定されたが、村長は店主と女将さんの行く末の方が気になった。うなぎを食べる作法のイロハのイは待つ時間を楽しむことで、日本酒かビールでも飲みながら、蒲焼が焼き上がるのをゆっくり待つ。それすらわからない客が増えている中で、この隠れ老舗のよさがわかるのだろうか。こうした老舗こそが、絶滅危惧種かもしれない。村長はその危惧をゴッドマザーと村民2号につぶやくと、「あら、私たちだって」という答えが返ってきた。


本日の大金言。

世界のうなぎの7割を日本人が胃袋に収めているという。いくら何でも、それはやり過ぎだと思う。うなぎは毎日大量に食べてはいけない。ハレの日か特別な日に、老舗のうなぎ屋でじっくりと味わうべきものだと、村長は思う。



                          山もと12 




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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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