1年後の石巻、三陸海岸と焼きそばのギャップ

 3.11の大津波で最も打撃を受けた人口15万人弱の街・石巻市。ちょうど1年前、まだ宮仕えだった赤羽彦作村長は、目の前に広がる光景に言葉を失った。東北道古川インターを降りて国道108号線で石巻へと向かった。小雨の中をトラックが頻繁に行き来している。1時間ほど走ったころから、光景が一変してきた。鉛色に広がる空の下、テレビで何度も流されたあの壊滅的な光景が目の前にある。大津波に襲われる寸前までそこにあったはずの家々が、そこで営まれていた生活が、根こそぎなくなっている。ところどころに骨組みだけとなった家が、宙ぶらりんのように、取り残されている。その光景が延々と続く。

「遺体安置所」と書かれた立看板が目に入った。TVと違うのは匂いだった。潮風だけではない、奪われた生活の匂いとでも名付けるしかない大地の悲鳴のようなものが、悲惨という言葉を通り越して、彦作村長のあるかどうかもわからない魂を揺さぶった。カメラのシャッターを押すことができなかった・・・。

あれから1年経ったんだなあ。彦作村長と村民2号は、三陸海岸の南端の防波堤で、海を見つめた。海はまるで3.11などなかったかのように穏やかだった。だが、目線を後方に移すと、倒壊した工場や瓦礫となった家々が、ほとんどそのままの状態で取り残されていた。確かに、1年前と比べて、道路などの復旧は進んでいる。「遺体安置所」という立て看板は消え、代わりに新しいお墓が増えていた。生活も表面的には戻りつつあるように見える。だが、深く刻まれた傷跡は、そこら中に、生々しく残っているようだった。

         石巻・海岸 

彦作村長は、頭を切り替えるのに、数分かかった。B級グルメの情報発信をここからしなければならない。それが村長に与えられた任務でもある。天国特派員となった村犬チャイからも「石巻焼きそばを取材して」というメッセージが届いていた。

石巻焼きそばは「第6回B-1グランプリ」で6位入賞を果たした、業界のいわば有名メンでもある。まだ冷蔵庫もない昭和10年ごろ、常温で保存することはできないかと考え、試行錯誤の末に2度蒸しすることで、保存に適した茶色い麺を開発した。それが石巻焼きそばとなっていった。その元祖は「藤や食堂」。人通りの少ない中心街で聞き込みをして、たどり着くと、古びたノレンが下がった町の食堂といった佇まい。「石巻焼きそば」と書かれた黄色い派手なのぼりがだけが目立っている。

        石巻焼きそば① 

あまり愛想のない若い女性店員が、忙しく立ち回っている。テーブルは大小合わせて6つほど。右奥に厨房があり、そこで店主らしい年配の男性が、焼きそばを作っていた。客のほとんどは観光客のようだった。ガイドブックを持ってるのですぐにわかる。

メニューは一番安い焼きそばが450円(もやしのみ)。卵入りが550円。肉、卵、野菜入りの特製焼きそばは700円。
村長は迷うことなく卵入りを注文。待つこと15分ほど。出てきたのは、目玉焼きが半生状態で乗っかっている、定番の石巻焼きそば。麵は確かに茶色い細ストレート麵。紅ショウガもちょこんと彩りを添えている。「お好みでソースをかけて食べてください」と店員さん。愛想のないのは海っ子の特徴ともいえ、そもそも焼きそば屋で愛想を期待する方がおかしい、と気づく。しかも、事態が事態なのだ。

石巻焼きそばの「ウマズイめんくい村」流の正しい食べ方は、まず半生状態の目玉焼きを箸でちょんちょんと崩す。黄身が溶岩のように流れ出したら、ゆっくりと麺に絡める。そしてここが肝心だが、生きてこの瞬間を迎えられたことを感謝しつつ、ズズズと口の中へと運ぶ。ガイドブックなどには「思わず頬がほころぶ」などと書かれているが、それほどのものではない。麵ともやしとソースが水分過多気味で、夜店の屋台の焼きそばの方がうまいくらいだ、率直にそう思った。

         石巻焼きそば② 

だがしかし、と村長は思う。そもそも焼きそばに一流のコックが作るような味とうまさを求める今の風潮こそがおかしいのだ、と。うまいでもなくマズいでもなく、ウマズイ。そこに地元の生活、ウマズイめんくい村用語でいうと「地活(ジカツ)」が隠し味として見える。そこが大事なのである。内容に比して値段が1~2割ほど高くても、それはそれでいいのだ。

「また1年後来ましょうね、村長」
「石巻には何とか頑張ってほしいね。石巻焼きそばの件だけど、魚介類の宝庫なのに、どうしてそれが入っていないんだろう。せめてタコくらい入れてほしいねえ。石巻タコ焼きそばなんていいと思うがねえ
「村長の親戚みたいなものね。ウマズイめんくい村もウマズイタコたこ村に名前を変えたらどうかしら。ね、タコ村長」
美熟女の村民2号のジュークはきつすぎる。石巻の空にタコが上がる日はいつになるのだろう?


本日の大金言。

石巻は明日の日本かもしれない。太平洋を見ていると、リアス式海岸の誕生がつい昨日のことのように思えてきた。


         石巻・海岸②
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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