祇園「いづ重」噂の「ぐぢのヒレ酒」

 約1年ぶりに京都へ。今回のミッションはいくつかあるが、その一つはむろん食いまくり。日本の食物連鎖の頂点に位置するグルメの魔都・京都で箸を枕に討ち死にたい、という密かな野望もある。京都にお住いのグルメ先生が「おいでやす、ひっひっひ」と待ち受けてもいる。

「あーた、ぐぢのヒレ酒、ご存じ? フグのヒレ酒なんて目じゃない。京都に来たら、祇園の『いづ重』にご案内しますよ。ここのぐぢのヒレ酒を味わったら、あーたでもすぐにでも天国行けますよ。ぐひひ」という誘いも受けている。いつもの南座前で午後6時に待ち合わせ。どこかに罠を仕掛けているに違いない。村長は西大寺を懐に入れて、グルメ先生と落ち合った。浪花から友人の大出局長代理と辻山教授も合流した。
           いづ重 
           嵐の予感

『いづ重』は天明元年(1781年)創業の超老舗「いづう」から明治末に暖簾分けした店。さば寿司などの巻き寿司や箱寿司が有名で、歴史は110年ほどだが、今や祇園の老舗としてメディアでも取り上げられることが多い。そのため並ぶのを覚悟で行かなければならない。夜も午後7時で店仕舞いしてしまう。
           いづ重① 
           老舗の情緒

幸い15分ほどで奥のテーブル席に案内された。タイムスリップ異空間。歴史がしみ込んだテーブルは右側に4つ、左側には一つ。古い見事な格子天井、壁面の上部には有田焼の皿がいくつも配置されている。骨の髄までおもてなしが滲み込んだ、感じのいい若女将がグルメ先生に何事か囁いた。グルメ先生がこの老舗の上客であることがうかがえた。

「『さばはこ』と『さばサンマ』を2人前ずつ。それにぐぢのヒレ酒を4つ
座るなり、グルメ先生が注文した。
「さばはこ」は一人前1512円(税込み)、「さばサンマ」は1674円。安くはない。さらに値段の高い「さばぐぢ」(3240円)や「はもぐぢ」(3780円)には目もくれない。その素早さに村長は舌を巻いた。達人芸。
                  いづ重17 
           雰囲気の圧倒        
           いづ重⑤ 
           メニューの選択

「ぐぢのヒレ酒」はメニューにはない。わかる人だけが注文するというのも京都の奥の深さ。グルメ先生に「いくらなの?」と聞いてみたら、小声で「1000円」。10分ほどで陶器の器に入った「ぐぢのヒレ酒」が何とも言えないいい匂いとともにやってきた。ぐぢ(若狭湾で捕れたアマダイ)を炙ってから、熱かんを入れ、炙ったヒレからにじみ出た旨味がいい具合になってからチビリと飲む。濃い飴色で、細かい泡が縁に浮かんでいる。 

           いづ重10 
       サンマ寿司、さば寿司、箱寿司の登場
           いづ重⑧ 
           ぐぢのヒレ酒どすえ
           いづ重⑨ 
           ま、ひと口
           いづ重15 
           イケずやなあ

全員が同時にチビリ。意外に甘い。もう少し辛口の方が好みだが、グルメ先生の座布団を一枚取るわけには行かない。濃密な甘みとアマダイのエキスが混然一体となっている。酒は多分西宮の名酒「白鷹」の本醸造。白鷹は辛口ではない。甘さはそのためなのか。それとも・・・グルメ先生に「砂糖でも入れているのかも」と小声でささやくと、さらに小声で「アマダイって甘鯛と書くくらいで、その甘さに決まってるでしょ」と返ってきた。その目が魯山人になっていた。
          いづ重11 
         サンマの巻き寿司

あまりに旨いので、全員がおかわり。次第に酔っぱらってきて、格子天井がゆっくりと回り始める。親子酒ならぬ四人酒。さば寿司も噂通りの旨さだったが、村長はサンマ寿司が気に入った。酢飯の旨さ、さらに米酢で〆たさんまの鮮度の良さと塩加減が絶妙で、それらをつつきながら、ぐぢのヒレ酒をどんどん飲む。久しぶりのメンバーで談論風発。格子天井がはずれ、京の夜が現れてきた。「じゃ、次行きますか? ひっひっひ」グルメ先生がすっくと立ち上がった。全員の足下がヨロヨロ。この先、大丈夫か? 南からは超大型台風18号が近づいてきているというのに。


本日の大金言。

京都の夜は濃密である。底知れない迷路と闇の深さ。さば寿司もぐぢのヒレ酒もその隠し味があるからこそ、だと思う。




                      いづ重16 



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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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