これぞ究極?京都のおいなりさん

 京都の油揚げは格別である。きつねそば・うどんにしても衣笠丼にしても主役は「お揚げさん」で、その美味さは相撲番付に例えると、西の横綱で、永遠の双葉山とでも言いたくなる。こと油揚げに関しては東京も「稀勢の里」か「遠藤」だと思う。京都の街を歩くとよくわかるのだが、街のいたるところに油揚げ屋がある。大きさも「大」「中」「小」3種類あり、その多様さに驚く。関東の油揚げは京都では「小」でしかない。

その「お揚げさん」を最も楽しめるのが「おいなりさん」かもしれない。村長はその頂点の味を求めて京の街を右往左往した。旅館の女主人から、「そやなあ、新京極の『乙羽』に行ってみはたっらどないですか。いいお味出してはります」という情報をつかんだ。調べてみたら、「寿司 乙羽(おとわ)」は明治中頃創業の寿司屋で、穴子の「むしずし」が有名な店だった。箱寿司や巻き寿司もある。
           寿司乙羽① 
           新京極の老舗「寿司 乙羽」

四条通から新京極に入って、すぐ右手に「寿司 乙羽」の看板が視界に入った。入り口のショーケースには蝋細工の箱寿司や巻き寿司などが陳列され、その目立たないところに「いなり」(税抜き780円)のお姿。店の右手が板場になっていて、3~4人の寿司職人さんの姿が見えた。暖簾をくぐると、年季の入った明るい木のテーブルが8つほど。小上がりもあり、そこにはテーブルが二つ。
           乙羽 
           迷路への助走
           寿司乙羽11 
           おいなりさん、めっけ!

午後2時を過ぎていたためか、客は少ない。女将さんらしき女性が「おこしやす」とお茶とおしぼりを運んできた。
「おいなりさんを一つ、お願いします。安い注文ですいません」
村長が胸元に軽く変化球を投げると、手をひらひらと横に振って、
「ここに来て食べてくれはることが一番うれしいんです。老舗? うちは創業120年ですけど、京都ではいくらでもあります」
まるで下町のおばさんのように、しばらく雑談に応じてくれる。
           寿司乙羽⑥ 
           メニューの一端どす

注文してから作り始めているようで、15分ほど待つと、金地の漆器の皿に見事なおいなりさんが6個「おいでやす」と鎮座していた。隅には桜色のガリ。東京の俵型ではなく三角形で、横から見ると大きな巻貝のようにも見える。これが絶品だった。口に入れた途端、油抜きしてからじっくり炊いた「お揚げ」の柔らかさに軽く驚く。
           寿司乙羽③ 
           おこしやす
           寿司乙羽④ 
           究極のおいなりさん?
           寿司乙羽⑦ 
           後ろから失礼

「昔から同じ作りで、1時間以上炊いている」というお揚げは、大きくてふくよかな厚みがある。それでいて形の崩れがまったくない。かつお節と昆布だけで取った出汁に薄口醤油と砂糖と酒で味付けをする。言葉で書くと簡単だが、その120年の技はダテではない。中の酢飯はよく見ると、細かな人参とゴボウ、それに白ゴマが点々と混じっている。酢飯は少なめでつややか、それがお揚げの存在感をより際立たせている。
          寿司乙羽⑧ 
          酢飯の絶妙なバランス
          寿司乙羽⑨ 
         京都流の酢飯

やや甘めのジューシーな幸福感にしばし浸りたくなる。村長の体がほとんど骨抜きになる。これは究極のおいなりさんか? グルメ先生に聞いてみたいと思ったが、「あーた、京都では究極なんて言葉を使ったらあきません。お里が知れますよ、ひっひっひ」という顔が浮かんで、糸電話するのを辛うじて思い止まった。京都は奥が深すぎる。

本日の大金言。

東京の稲荷寿司も旨い店があり、比べるのが間違いかもしれない。だが、京都のおいなりさんはそんな配慮さえも超えていると思う。京都のお揚げ文化こそ世界文化遺産かもしれない。



                        寿司乙羽10
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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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