北野天満宮門前の「やき餅 1個100円」

北野天満宮へ豊臣秀吉が造った御土居跡を見に行く。 現在ではその名残りしか残っていないが、そのスケールは想像を絶する。京都の中心部をぐるりと土の城壁で囲み、内側を洛中、外側を洛外とした。城壁の外側には広くて深い濠まで巡らせている。目を閉じて四百二十数年前、往時の様子を思い描こうとするが、スケールがデカすぎてイメージすらできない。「想像力が貧困なだけですよ。ひっひっひ」グルメ先生の声がした気がした。
           北野天満宮②  
           秀吉の夢の跡

そのグルメ先生が三軒茶屋博士と合流、両巨頭と落ち合う時間が迫ってきた。グルメ先生も三軒茶屋博士も天満宮の近くに屋敷と別邸を構えている。東門へと急ぐ。すぐ向こうは上七軒。今上映中の「舞妓はレディ」(周防正行監督)の舞台にもなった古い花街が目の前。すると、グルメ先生からケイタイ。「30分ほど遅れます。あーた、その辺歩くとよろしい」。

午後4時半。村長は仕方なく東門から上七軒へと周辺をブラ歩きすることにした。すると、白い長暖簾に「やきもち」と書かれたいい雰囲気の「おまん屋さん(饅頭・餅菓子屋)」が目に飛び込んできた。「やきもちの天神堂」で、知る人ぞ知る店だった。
           天神堂① 
        おおっという店構え(天神堂)

入り口にある年季の入った木組みのケースを覗くと、蝋細工の「やき餅」が並べられ、ほとんど売り切れ状態。「残り8個(1個100円)」の文字が神様に見えた。よく見ると、焼き大福のよう。ツイテル。滑り込みセーフ!
           天神堂③ 
           残り8個

店内は実にシンプルで、小さなテーブルが二つだけ。中で食べることもできるようだ。こちらも見るからに年季の入った店主(二代目)に「2個ください」と注文、中に入ってテーブルに腰を下ろした。小皿に盛られて、ラップに包まれた「やき餅」が2個運ばれてきた。テーブルの上には麦茶のペットボトルが置かれていて、店主が湯呑みを持ってきてくれて、どくどくと入れてくれる。何やら東京の古い下町か田舎の門前にでも紛れ込んだ気分。村長の好きな世界。
           天神堂④ 
           やき餅2個登場  
           天神堂⑥ 
           この存在感

この「やき餅」が実に美味だった。素朴な美味。焼いてから時間が経っていて、冷たくはなっているが、焦げ目がギリギリのところで限界を保っている。職人芸。外側の餅がかなり薄いので、中のつぶしあんがいい具合に透けて見える。その圧倒的な存在感に思わず見入ってしまった。太宰府天満宮門前の「梅ヶ枝餅」にも似ている。

手で割り、まずはひと口。餅が柔らかい。つぶしあんがぎっしりと詰まっていて、こってりとした濃厚な小豆の風味と甘みが口中に広がった。餅の焦げ目がいい風味になっている。村長にとっては思わぬ発見。店主としばし雑談した。
           天神堂⑨ 
           言葉は不要
           天神堂⑦  
       餅の薄さとあんこの圧倒

「息子(三代目)が大鍋であんこを炊いてますのや。かまどと薪で時間をかけて炊いてます。材料は北海道の小豆と砂糖だけ。塩は使ってまへん。それを餅で包んで焼く。全部手作業です。熱いのを食べたい? そりゃ、あきまへん。口ん中火傷しますで。冷めてるからええんです。創業? 元々は初代が上賀茂の『神馬堂』で修業して、昭和27年にここで店を出したんですのや」

神馬堂の「やき餅」はあの池波正太郎もファンだった。その流れを汲む歴史の滲み込んだ味。200円で大いなる満足感。店主は消費税も取らなかった。京都の奥の深さ。その大きな背中を見つめながら、暖簾の外に出ると、遠くにグルメ先生と三軒茶屋博士のお姿が見えた。グルメ先生が神様に見えた。


本日の大金言。

京都の和菓子は上菓子から餅菓子まで一つの宇宙である。その入り口ですでに迷子になってしまった。


                      天神堂10 






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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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