B-1グランプリ優勝の焼きそばと対決

 「石巻焼きそばには期待が大きかった分、ちょっとがっかりだったわね。震災の被害を考えると、頑張ってほしいし、応援したい。だけど、焼きそばはねえ。期待が高すぎたのが悪かったかもね」
「まあ、でもあんなもんだと思うよ。適度にうまかったしね。B級なんだから、あれでいいのだ、だよ。ロンドン五輪の男子柔道じゃないけど、期待しすぎはよくない。そもそも焼きそばに金メダルを期待するほうがおかしい」
「あれっ、ガイドブックを見て石巻焼きそばは凄いぞ、って言ってたのは誰?」
「メディアの伝え方に問題があるのは、確かだよ。昔、寄席の常連客は、噺家に対してシビアだった。それが、いい噺家を育てたんだよ」
「それが落ち? 村長も苦しいわね」


         横手の夕焼け 


赤羽彦作村長と美熟女の村民2号は、そんなやり取りをしながら、ポンコツの愛車を秋田県横手市に止めた。すでに夕闇が忍び寄っていた。夕焼けが異様な美しさだった。あの3.11の時に、瓦礫の中から救出された少年が、「星がとてもきれいだった」と言っていたことを村長は思い出した。改めて、大自然の脅威と驚異に頭を垂れる思いだった。

横手市は「かまくらの街」としても有名だが、第4回B-1グランプリで優勝した「横手焼きそば」の街としても、脚光を浴びている。市内には「横手やきそば暖簾会」加盟の店が約50軒ほどある。彦作村長はその中でも、昔ながらの味を売り物にしている「「郷土料理 七兵衛」にダーツを投げた。

この街も人通りは少ない。小泉首相が押し進めた構造改革のしわ寄せとそこに3.11。その風評被害などで、地方経済、特に東北の傷みは想像以上だと改めて実感する。首都圏にいると、感覚がマヒしてしまい、生身の感覚が少しずつずれていく。彦作村長は「現場感覚の復権」こそが大事だと思う。一日24時間のうちせめて3時間くらいは頭から足へ、である。

横手駅近くの「七兵衛」は店構えが古くて少々寂しげだった。これだこれだ、このローカルさがたまらない。ノレンが逆になっているのも気に入った。


          横手焼きそば③ 


年配のオヤジさんと奥さんがどっしりと店を切り盛りしていた。カウンターとテーブルのある座敷。20人ほどは入れる広さ。時間が早かったせいか、客は他に1組の中年カップルだけ。


さっそく生ビールと「横手やきそば」(シングル=麺1個、600円)を注文。話好きのオヤジさんと会話を楽しむ。


「昔ながらの焼きそばを作っているのはうちと数店ぐらいだなあ。横手焼きそば昭和38年ごろに麺屋が食堂の店主を講師にして、駄菓子屋や雑貨屋に作り方を教えたのが始まりなんです。子ども相手に店のおばあちゃんが作ってた。子どものおやつだったんですよ」
「へえー、それが平成に入ってから全国で巻き起こった町起こしの流れに乗って、横手焼きそばがブームになっていったわけですね」


「そうそう。暖簾会もできてね。店によって、味もちょとずつ違う。ウチは雑貨屋時代のつくり方を守っている。太い茹でめんを煮焼きするんですよ。だから、脂分が少なくて体にもいい。上に乗っける半熟の目玉焼き卵は、かなりの経費だけど、比内鶏の卵を使ってるんですよ。比内鶏にこだわっているのはウチぐらいなもんです」

その「横手やきそば」がやってきた。ストレートの太麺の間からキャベツとひき肉が「おいでおいで」と囁いている。上に乗っかった半熟の目玉焼きは確かに普通の目玉焼きに比べて気品がある。紅ショウガではなく福神漬けが添えられている。これも「横手やきそば」の特徴だ。


          横手焼きそば② 


まず目玉焼きを箸で突く。その黄色い至福を太麺に絡め、ゆっくりと口中に運ぶ。麵はゴワゴワしているもののモチモチしていて、いい食感である。自家製ソースは甘めで濃口。油で炒めるのではなく、煮焼きしているためか、全体的にまろやかな味わい。
「イケるわね。B-1で優勝したのも理解できるわ。富士宮、太田と並んで日本三大焼きそばといわれるけど、こっちの方がわたしの好みかも」
「たかが焼きそば、されど焼きそば。期待のハードルを上げてはいけない。この店の主人の秋田弁も味わいがあるよ。横手に立ち寄ってよかった」

バカ丸出しでほろ酔い気分の村長と村民2号が外に出ると、外はすっかり暗くなっていた。意味もなく両手を広げて背伸びする村民2号。星が横手から出ていた。少年が瓦礫から見た星はどんなだったのか、一瞬、痛ましい思いが、彦作村長のアルコールびたしの脳裏をよぎった。




本日の大金言。


B級グルメは町起こしとともにある。疲弊している町の活性化を支えるのは、何よりも熱意だと思う。婚活も大切だが、地活も大事ではないだろうか。


         横手焼きそば① 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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