「そば打ち名人」の新隠れ家

 そば打ちの趣味が高じて、サラリーマンを辞め、そば屋を開く中高年が増えている。中にはひどい店もあるが、ビックリするほど美味い店もある。埼玉のそば好きシンジケートの極秘情報で、久喜市にほど近い加須市北辻に「全日本素人そば打ち名人大会」でたった一人名人位を獲得した男が開いたそば屋がある、ことを知ってしまった。これは行かずばなるまい。よっこらしょっと。
           蕎麦匠 
           新しい隠れ家?

ポンコツ車を飛ばして、そこへ向かった。わかりにくい場所。田んぼの中の古い一軒家。「蕎麦 匠(たくみ)」という看板と旗が寒風にはためいていた。名人位を取ったのは約一年前。店を開いたのは今年8月。営業は木金土日の4日間だけ。しかも売り切れ御免という強気な設定。自宅の敷地内の納屋を改装して、奥さんと二人で始めたこともわかった。アマチュアの道楽、と言えないこともない。
           蕎麦匠② 
           工事中ではありません
           蕎麦匠① 
           そば打ち名人の店

海老茶の暖簾をくぐると、すぐ左手に板場があり、手前には3席ほどのカウンター席、そこから二組ほどが座れる広めの小上がり。そこに囲炉裏が切ってあった。さらに奥には仕切りがあり、一枚板の見事な長いテーブル。8人ほどが座れそう。「すごいわねえ。随分お金をかけてるわね」村民2号が感想をもおらす。気に入った様子。
           蕎麦匠⑤ 
           いい雰囲気
           蕎麦匠③ 
           高いか安いか
           蕎麦匠④ 
           メニューもあれこれ

長いテーブル席の隅っこに腰を下ろして、定番の「もりそば」(650円)を頼んだ。二八そば。「野菜天ぷら盛り合わせ」(600円)も頼んだ。正午前だというのに、客の入りはいい。15分ほど待って、「もりそば」がやってきた。円形の竹ザルに盛られたもりは見事な細打ちで、名人位がダテではないことがうかがえた。星がぼんやりと見えた。
           蕎麦匠2 
           むむむのむ

まずはひと口。最初のアタックはコシの強さではなく、むしろフワッとした柔らかさだった。コシではなくモチモチ感エッジの立った、コシの強めが好きな村長は、少々戸惑った。風味はまずまずで、期待していたほどは感じない。だが食べ進むうちに、この柔らかな中庸の世界にハマり始めた。奥深く奥ゆかしい味わい。
             
           蕎麦匠⑦  
           名人の打つそば
           蕎麦匠11 
           もそっとそばへ

何よりもツユが絶品だと思った。やや甘めだが、鰹節と昆布で取った出汁とかえしのバランスが絶妙で、そばとの相性がとてもいい。
「これ、今年食べたそばの中で一番好き」
辛口の村民2号がボソッとつぶやいた。 
           蕎麦匠⑨ 
           ツユに感嘆

「野菜天ぷら盛り合わせ」はカボチャ、山芋、舞茸、サツマイモが二つずつ。揚げ方が上手で、野菜は自分の畑で採ったもの。美味。
こういう店が増えると、プロは困るだろうな、そんな心配をしてしまうほど。勘定を支払う時に、店主と雑談。
「玄そばはどこのものを?」
「栃木県益子産です。ひと目で気に入ってしまったんですよ」
           蕎麦匠10 
           畑の天ぷら
           蕎麦匠12 
           舞茸をひと口

「名人位を取って、脱サラですか?」
「ええ、58歳で早期退職して、自宅の一部を改装して念願の店を開いたんです。オープン時には『竹やぶ』の阿部さんも来てくれました。うれしかったですよ」

「こんな場所で暖簾を下げて、しかも週4日間だけ。それも午後2時までとは。成功すれば、新しいトレンドになりそうですね」
「夜もやってるんですよ。夜はコースだけですが」
まだあまり知られていない隠れ家的な店だが、話している最中も、噂を聞きつけた客がやってきた。村長は早々に退散することにした。


本日の大金言。

素人と玄人(プロ)の境がどんどん狭まっている。生活がさほどかかっていない素人、生活がかかっている玄人。楽しむ素人、楽しめない玄人。問題はどっちが美味いか? その境が崩れかかっている。




                      蕎麦匠13 







 
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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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