「なみえ焼きそば」の旗に胸が熱くなる

 赤羽彦作村長は、美熟女の村民2号をウマズイめんくい村に一時帰村させることにした。会津を発って、西へ向かうことにしたからだった。

「どうして私だけ帰んなきゃいけないのよ。いわきにも行ってみたいし、そこから北上もしたい。私だって、被害の状況を自分の目で確認したいのよ」
「まあまあ、そう責めないでくれよ。歩き過ぎと食い過ぎで体調を壊したんだから。双葉町から避難している猪俣のおばあちゃんも言ってたろ? 無理しちゃいけないって」
「ホントは一人になって思いっきり羽根を伸ばしたいんでしょ? わかってんだから」

毒矢を吹き続ける村民2号だったが、この2日ほど体調がすぐれず、何があっても食欲だけは旺盛だったのに、村長以上に大好きな晩酌さえもやめていた。その分は彦作村長がしっかり補ったが・・・。

無理もない。村犬チャイの死、ほとんど休みもなくハードスケジュールの東北ツアー。口には出さないが、さしもの「鉄のおばはん」も精神と体調のバランスが崩れたのかもしれない。

彦作村長は会津若松駅で村民2号を見送った後、頭を切り替えて、ポンコツの愛車のアクセルを踏み込み、常磐道路を西へと向かった。まずはいわき市に草鞋を脱いで、その後、できる限り北上しようと考えていた。

いわき市に入った。ここは福島第一原発から南に約40キロ~50キロほど離れている浜通り最大の街。スパ・リゾート・ハワイアンズもあり、復興へ向けて力強く歩み出そうとしている街でもある。それでも3.11の傷跡は深く、海岸沿いには地震と津波で瓦礫となったままの地区もある。

彦作村長はポケットからそっとガイガーカウンターを取り出す。駅、飲食街、商店街など数か所で測定してみた。いずこも「毎時0.10~0.15マイクロシーベルトほど。この数値は東京や埼玉とそれほど変わりなく、ホットスポットと言われた千葉県柏市などより少ない。風向きが功を奏したのか、北西に位置する福島市や郡山市よりずっと少ない。


                  いわき市③ 


人口約33万人、いわき市の街中はそれなりに活気があった。灼空の下、彦作村長はトボトボ足で歩き回る。商店街の一角で、村長の視覚に「なみえ焼きそば」という旗が入った。

交通規制で双葉郡浪江町に入ることはあきらめていたが、まさかここで、目的の一つだった「なみえ焼きそば」に出会えるとは・・・。彦作村長は感動で目がウルウルするのがわかった。

なみえ焼きそばの特徴は極太の麵。豚肉ともやしだけ。それが濃厚なソースで味付けされる。一味唐辛子をかけて食べるのが通の食べ方でもある。戦後から復興期にかかる昭和30年に居酒屋「縄のれん」がメニューに出したのが始まりと言われている。大震災後、避難でバラバラになった浪江町だが、2011年、姫路で行われたBー1グランプリで4位入賞を果たしている。


               いわき市⑥ 


石巻焼きそば、横手焼きそばと今回の陸奥の旅は焼きそばの旅でもあった。どちらも確かにB級のうまさだった。うまいまずいを超えるウマズイ領域。それ以上に震災から立ち上がる、その一点にこそ価値があるのではないか、村長は心からそう思う。いやも応もない瓦礫の現実。戦後が焼け跡闇市から復興したように、そこから立ち上がれるか。

村長は叩くと音がする木魚みたいな頭で、野坂昭如や開高健という偉大な作家が書き、語っている焼け跡闇市の一杯の雑炊を思ってみる。ひょっとして、焼きそばはその延長線上にあるのかもしれない。

東京電力の犯罪、国家のウソ、永田町の無策、メディアの迷走・・・困難な作業だが、それはそれできっちりと検証とけじめをつける必要があると思う。彦作村長は一匹のアリにすぎないが、柄にもなく、怒りで、卒倒しそうになる。アリの一穴だってあるんだぞー。村民2号がいたら、きっと「アリというより一匹の極楽とんぼでしょ」というに決まっているが。

テントで旗を立てて焼きそばを作っていたのは「NPO新町なみえ」のメンバーだった。行列のうしろに並んで順番を待つ。汗だくだくになりながら、巨大な鉄板の上に、ラードを引き、豚バラ肉を炒め、もやしを入れ、ぶっとい麺を入れていく。見事な腕で、焼きそばが出来あがっていく。二種類のソースを入れて、豪快に混ぜ合わせると、何とも言えないいい匂いが、復興のノロシのように辺り一面に漂ってくる。


        いわき市⑦ 


近くの椅子に座って、彦作村長が口に頬張る。大きめの豚バラともやし、それにうどんのようにブッとい麺がいい具合に絡まっている。ソースの甘みとコシがあるのにモチモチした麵の感触。そうしたすべてが舌の上で踊り始める。

そうか、オレは生きてるんだな。退屈な日常の中で忘れかけていたことを思い起こさせてくれる。一味唐辛子をかけてみる。魔法のように味が締まってくるのがわかった。日常には唐辛子も必要なのかもしれない。

値段が300円ということがあるかもしれないが、この味は、村長にはドンピシャリだった。、青空に向かってはためく「なみえ焼きそば」の旗を見ながら、彦作村長は、改めて3.11の痛ましい悲惨とそこからの一歩を思うのだった。


本日の大金言。

迷ったら、大地に足をつけること。そこから何かが見えてくるかもしれない。「なみえ焼きそば」はそのことを教えてくれるようだ。

           いわき市・なみえ焼きそば 




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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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