ようやくわかった「あんみつ」の傑作

 東京・門前仲町の甘味処「いり江」は、かつて何度か足を運んだ懐かしい店。先日、築地「天まめ」のあんみつを「新しい職人の味わい」と書いたところ、友人のスイーツ好きから電話があった。

「新しい動きに敏感なミーハー村長に敬意を表すけどね、あれを書くなら、門仲の『いり江』を書かない手はないでしょ。元々が寒天屋で、今もテングサから作ってます。寒天は職人芸。あんこもひと味は違う。古い店の凄さも知るべきです」
友人は笑ながらチクリと苦言を呈した。
           いり江 
       久しぶりの訪問(東京・門前仲町)

門前仲町「いり江」のあんみつは、エンターテインメント新聞社時代に何度か賞味している。数年前、京都にお住いのグルメ先生を案内したこともある。グルメ先生は「いい店だ」と感想を漏らしたが、村長は実のところ、「品はいいがやや物足りない味だな」という評価だった。

友人の電話が頭にあったので、兜町に行くついでに、ふと足を伸ばすことにした。「いり江」は甘味処としては昭和45年(1970年)創業だが、それ以前は寒天やこんにゃくを製造していた歴史を持つ。寒天に対するこだわりは、今でも神津島産と大島産のテングサから手間ひまをかけて寒天を作っていることからもわかる。
           いり江① 
           暖簾の奥の世界

京都の町家のような店構えの暖簾をくぐる。琴の音が流れ、テーブル席が大小合わせて8つほど。シンプルだが、和が隅々まで行き届いている。夕方だったので客は一組しかいない。メニューから目的の「あんみつ」(730円)を頼んだ。女将に「蜜は黒蜜と白蜜、どちらになさいますか?」と聞かれ、あんこ好きとしてはここは「白蜜でお願いします」と答える。
           いり江② 
           あんみつ様

10分ほどで、お盆に乗って「あんみつ」がやってきた。控えめに洗練された白桃、ミカン、パイナップル、いぶし銀の求肥・・・中央にはさくらんぼ。あんみつの王道を行く小世界が有田焼の器に収まっている。目を見張るのはこしあん。あんみつのあんこは普通は中央にあり、ディッシャーで球形に盛られているが、ここは違う。中央ではなく器のヘリの方に向かってヘラで半円状に盛られている。それもかなりの分量。
           いり江③ 
           おいでやす
           いり江④ 
           白蜜の滝?

そのこしあんが絶品だった。色も風味もかなりのレベル。舌触りがさらりとしていて雑味がない。抑えた甘みとほのかな塩加減。感動がジワジワくる。これだけのこしあんはそうはない。砂糖はザラメか? 赤えんどう豆は北海道富良野産を使い、浅草の豆かんの名店「梅むら」のようなきりっとした安定感。皮がプリッとしていて、中がふっくらとしている。うむむむ。汗。
           いり江⑥ 
           こしあんの凄味
           いり江⑦ 
           あーん
           いり江⑧ 
           自家製寒天の凄味
           いり江⑤ 
           2種類の求肥

寒天は直球勝負の築地「天まめ」より柔らかい。これは好みの問題だが、繊細な風味の寒天で、海の香りもどこか春のよう。野暮好きの村長にとっては「天まめ」の野暮ったさが好みだが、「いり江」の洗練は「あんた、もう少し修業なさったら」と囁かれているような気分。かつて「品はいいが物足りない」と断定していたことがやや恥ずかしくなってきた。
           いり江⑨ 
           赤えんどう豆の凄味

2種類の求肥も美味。白蜜もいい。素材と作り方へのこだわりがこれほどだったとは。時間とともに好みが変わったのか、それとも・・・村長の脳裏をは友人のしたり顔がよぎっていった。ぐやじいのう。

本日の大金言。

足元に宝石があるのにそれに気づかない。平凡の中に洗練が潜んでいるのにそれに気づかない。愚かなことだ。自戒を込めて。




                        いり江11 







スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

最新記事
カテゴリ
彦作のつぶやき
最新コメント
月別アーカイブ
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR