奈良老舗の「献上三笠」の謎

 「店を広げたり、デパートに出すようになったらお終いですよ、ひっひっひ」
京都にお住いのグルメ先生の金言である。店舗を広げず、二百年以上も「一対一の商い」をかたくなに守り通している「御菓子司 亀末廣」までぶらぶら散歩がてら行くお方である。

そのグルメ先生から頂いたのが、奈良の老舗和菓子屋「鶴屋徳満」の「献上三笠」(一個税込み810円)である。本日まな板にお載せするのはこのジャンボどら焼き。古都・奈良周辺ではどら焼きのことを「三笠」とか「三笠山」と呼んでいる。形が三笠山に似ているところに由来しているそうだ。実のところ、この「献上三笠」について、書くのをためらってきた。村長の舌ではとてもその真髄に辿り着けそうもないと思ったからだ。
           献上三笠① 
           美味の予感

「鶴屋徳満」は創業が明治31年(1898年)だが、元禄15年(1702年)創業の「鶴屋八幡」から暖簾分けした老舗。奈良市内に本店を含めて3店舗しか営業していない。「献上三笠」は昭和27年(1952年)、明仁殿下(現天皇)の「立太子の礼」のお祝いとして宮内庁から注文を受け、献上したもの。

紙袋を開けて、ビニールパックを取ると、こんがりといい色具合に焼かれた巨大などら焼きが目の前に現れた。直径14~15センチほど。厚さは約4センチ。普通のどら焼きの4倍ほどの大きさ。添加物などは使っていないため日持ちは長くない。最近はスーパーなどでもジャンボどら焼きを見かけるが、そのほとんどは添加物が大量に入っていて、ただデカいだけが取り柄のお菓子に過ぎない。
           献上三笠② 
           献上三笠

終戦からあまり経っていない時期に初めて「献上三笠」を見た人は驚いたに違いない。それからやく62年後、村長は煎茶を飲みながらまん中に包丁を入れた。村民2号が巫女のように(?)見守っている。皮のスポンジが意外に厚い。卵とハチミツの香りがそこはかとなく漂ってきた。中央のあんこは粒あん。粒あんは「その時一番いいい大納小豆を使ってます。丹波もあれば北海道十勝もあります」(「鶴屋徳満」)とか。
           献上三笠③ 
           見事な焼き色
           献上三笠④ 
           絶妙なバランス

最初の一口。皮のふっくら感とかなり甘めの粒あんがフツーに美味い。粒あんは一粒一粒の中にいい風味が詰まっている。ていねいな作り。砂糖は多分上白糖だろう。「日本橋うさぎや」のようなもっちり感はない。スポンジの存在感の方があんこよりもやや上回っている気がした。
           献上三笠⑥ 
           四分の一で一人前?
           献上三笠⑦ 
           正座して食え

「『うさぎや』のようなわかりやすい感動はないけど、この大きさと雑味のなさが本物感をじわじわと押し出してくる感じね」
「グルメ先生が太鼓判を押すくらいだから、このシンプルな味わいの奥に何か潜んでいるんじゃないか」

「村長の付け焼刃の舌じゃ、探求は無理よ」
「確かに。この味の深みはわからん。村長にとっては謎だ。スウェーデンにお住いの瘋癲北欧先生ならわかるかもなあ。渓流斎先生も二日酔いでなければ、わかるんじゃないかな」

「『献上三笠』一個で話が地球規模になってきたわね。グルメ先生がクシャミしてるんじゃないかしら」
隣りの猫が鳴き、遠くでクシャミが聞こえた気がした。

本日の大金言。

京都は奥が深い。奈良も深い。添加物全盛の時代に本物を見分けるにはさらに修練が必要だと改めて思う。カツ!


                      献上三笠⑧ 
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このどら焼きはうまそうです。きょうは、ここで日本から持ち帰った小豆を煮て、汁粉を食べました。煮方を失敗して、豆が固くなってしまいましたが、まあ日本の味がしました。村長のどら焼きとは比較になりませんが、モチのほうは、やはり日本産で自分には十分でした。
佐野ラーメンを食いながら、こんなどら焼きを合わせ食いしたら、至福でしょうね。即席麺と山崎の白あんパンで満足の私ですから、村長のゼイタクには毎度、悔しい味を楽しませてもらっています。ステーキはどうかなあ。
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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