まさかの場所に絶品「鹿の子」

 ポンコツ車で東奔西走していると、メディアに紹介されていないいい店に出会うことがある。埼玉・羽生で旨いラーメンを賞味した後、車を止めたまま人通りの少ない市街を歩いていると、今にも崩れ落ちそうな(失礼)古い小さな町家が視界に入った。「御菓子司 紅屋」という屋号。ガタピシしそうなガラス戸。そこに「さくら餅」と書かれた和紙が。さらに遠慮がちに「あんこ有ります」という張り紙。うむむ。
           紅屋① 
           この情緒はなんだ?(羽生市中央2丁目)
           紅屋② 
           いい店発見か?

村長のセンサーが反応した。調べてみたら建物は築百年ほどで、「紅屋」はここで70年ほどの歴史のある和菓子屋さんだとわかった。現在は二代目。建物は古くて今にも倒れそうだが、隅々にまで神経が行き届いていることが見て取れた。いい和菓子屋発見の予感
 
引戸をガラガラッと滑らすと、そこは昭和の世界だった。右手には和菓子が並んでいた。見事な鹿の子、焼ききんつば、どら焼き、シベリアまである。女将さんが奥から出てきた。
「あのう、さくら餅はありますか?」
「あらっ、午前中で売り切れちゃったんですよ。すいません」
「残念です。でも他のも美味そうなのでちょっと見させてください」
           紅屋④ 
           見事な鹿の子
           紅屋⑥ 
         かような場所にかような世界
           紅屋⑤ 
           あまりに素朴な世界

そんな会話を楽しみながら、見るからに美味そうな「鹿の子」(1個110円)、「きんつば」(1個100円)、それに「シベリヤ」(1個110円)を買い求めた。ウマズイめんくい村に戻ってから、賞味することにした。

この「鹿の子」が当たりだった。北海道十勝産の大納言が見事な世界を作っていた。寒天の薄い透明な膜とその大納言のきれいな配列は、ここに昔ながらの和菓子職人がいることを証明していた。二つに割ると、中から手づくり感の伝わるこしあんが現れた。ぎっくり腰だが、正座してそれを口中へ。
           紅屋⑦ 
           胸が高鳴る

大納言小豆のきちんとしたふくよかな味わい、中のこしあんの風味、やや強めの塩気、ほどよい甘さ・・・意外な場所で意外な発見という他はない。村民2号も「これ、素朴に美味いわね」と目を丸くした。
           紅屋⑨ 
           最強の鹿の子?
           紅屋11 
           言葉は不要・・・

「焼ききんつば」は乾燥を防ぐためにパッケージされていたが、皮から何からすべて手づくり。中のつぶしあんはやはり塩気が強めで濃厚な甘み。素朴な味わい。
           紅屋10 
           焼ききんつば
           紅屋12 
           手づくりの技

「シベリヤ」は小さいが、カステラが凝縮した固さで、中は練りようかんそのもの。ふわふわしたシベリアしか知らない村長にとっては、このどっしりとした歯ごたえのあるしっかりと作られたシベリアは意外だった。大きさがもう一回り大きければ、と思ったが、値段を考えるとそこまで求めるのはぜい沢というものかもしれない。
           紅屋⑧ 
           しっかりしたシベリヤ
           紅屋13 
           ふわふわしてない

後日、電話すると二代目店主が出て、「紅屋の由来」を聞いてみた。「紅屋」という屋号は越後や北陸、長崎などにもある。
「先代が付けたもんですから、その辺りのことはわかりません」
「三代目はいらっしゃるのですか?」
いえ、私の代でお終いでしょう。私ももう70歳です。ほとんど手づくりでやってますから、身体もキツイ。冷蔵庫を使わないので、鹿の子も季節的にもうすぐおしまいです。出来合いのものを使えばいいのですが、それはしたくないんですよ」

話しながら、店主が想像通り、昔気質の和菓子職人であることがわかった。かような店が地元以外にほとんど知られていないことに驚きながら、電話を切った。村長はしばしの間、複雑な思いに捉われるのだった。

本日の大金言。

職人がいなくなった国に未来はない。そう断言してしまおう。日本が今向かっている方向には何かが根本的に欠けている。一個の鹿の子に未来を見る。なんてね。





                        紅屋14 






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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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