こんなうどんがあったとは・・・無腰の伊勢うどんの衝撃

 「徹底してコシのないミョーなうどん」の存在を知ったのは、人気コラムニスト・石原壮一郎さんによってだった。赤羽彦作村長がエンターテインメント新聞社時代、石原さんに連載コラムをお願いして、それが7~8年続いた。「会社図鑑」や「大人力検定」など、ベストセラーも数多く出している。目の付け所、柔らかな筆力、換骨奪胎の才能、石原壮一郎さんは泉麻人につづくコラムニストとして、彦作村長の中では爆弾印の存在だった。石原さんは三重県松坂市出身。伊勢うどんのお膝元である。

その石原さんが「伊勢うどん友の会」なるものを立ち上げ、伊勢うどんの普及に努める、と宣言した。うーむ。彦作村長はその着眼点に唸った。おいしいうどんは太麺の讃岐うどんにしても、水沢うどんにしても、細麺の稲庭うどんにしても、コシがあるということが絶対条件になっている。「コシのないうどんなんて論外。うまいわけがない」これが、一般的な価値観である。彦作村長もその延長線上にいた。

伊勢うどんのルーツは何と江戸時代以前。伊勢周辺の農民が味噌のたまりでうどんを食べていたという。彦作村長はまず埼玉で伊勢うどんが食える店を探した。ところが、ない。スーパーや自然食品店を探しても置いている店がない。気配すらない。うどん界における「伊勢うどんの立場」をしみじみ感じた。ま、いつか出会うだろう、そのとき味わってみよう。正直に言うと、どうしてもという期待感もなかった。

         伊勢うどん・松屋 

それが、出会ってしまったのである。江戸に出たついでに、浅草・「松屋」のデパ地下を探索中に、「伊勢うどん」の文字が遠慮がちに光ったのである。三重県四日市市にある「いとめん本店」の「手打ち式 伊勢うどん」(2人前450円)を購入。ウマズイめんくい村で試食と相成った。作るのは彦作村長。食べるのは美熟女の村民2号。

たっぷりのお湯に極太のうどんを入れ約3分ほどゆでる。注意書きを読むと「麵が浮き上がるまで、箸を入れないでください」と書いてある。麵が切れてしまう可能性がある、というのだ。見かけは讃岐うどんのように極太なのに、まったくコシがない。正体の見えない伊勢うどんだが、この珍しい注意書きで、「なるほど」と思う。

           伊勢うどん④ 

ちょうどいいころ具合を見計らって、お湯を切って、用意したドンブリに入れる。釜揚げうどんのようだ。そこに刻んでおいたネギを乗せ、伊勢うどん専用の真っ黒いタレを薄めずにそのままドバっと入れる。タレは溜まり醤油にカツオ節やいりこ、砂糖などを加えた独特のもの。

「面白いうどんね。具もない、汁もない。真っ黒に近いタレがからまってるだけ。でも、存在感がある。うまそうには見えないけど、まずはひと口」
村民2号がこげ茶色になったぶっというどんを口に運んだ。4、5秒の沈黙。
「うまい! 何これ。コシが全然ないのにもちもちしてる。初めての食感! タレもダシがよく効いていて、甘めのいい味。これ、ワタシの好み」

         伊勢うどん② 

つられて彦作村長も、タレにからめた極太麵をひと口。何という食感か。コシという概念がまったくない。というより、何やら、柔らかな入口に足を踏み入れた途端、右も左も、天上も天下もない、ふわふわとした曼荼羅の世界に入ってしまったような錯覚に陥った。この奥深さは何だ? ここはどこ、私はだれ? コシといううどん界の常識さえもここでは無価値だ。

「これはうどんの味覚を根底から揺るがすうどんかもなあ。コシなんかなくてもいいんだ。とんがったり粋がったりするばかりがうどんじゃないよ。もそっともそっと、ゆるりと行こうじゃないか。裃も捨てて、肩書きも捨てて、信念だって、捨ててもいいんだよ。裏返すとそれが伊勢うどんの信念でもあるんだけどさあ。そうつぶやいているみたいだよ」
内外の状況で、このところ声高になってきた感のある彦作村長も、しきりに感心している。

「ウマズイめんくい村も伊勢うどんに学ばなきゃね。もっとも村長はヘルニアでコシがなさすぎるけど」
久しぶりに、コシが強すぎる村民2号の毒矢が飛んできた。それをサッとかわすした瞬間、彦作村長のコシがぎっくり。コシがないというより、悲しいかなコシが切れてしまったのだった。



本日の大金言。

辛くないカレー、具のないみそ汁、甘くないシュークリームもありかも。世の中の常識は常識に過ぎない。そうした固定観念と無縁なところに位置する伊勢うどん。伊勢うどんにカシワ手したくなった。


         伊勢うどん① 


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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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