冷やした京菓子「松露」の意外

 京都旅行の際に、祇園商店街を歩いていると、そこだけ異次元の匂いのする京菓子屋があった。すぐ並びには有名な「祇園辻利」があり、冷たいスイーツを求める行列が通りを邪魔するほど続いていた。だが、その店は客の姿が見えない。相当な歴史を感じさせる古びた店構えで、入りにくいのかもしれない。
              松葉屋⑤ 
              祇園商店街の異空間

それが「松葉屋」だった。へそ曲がりで好奇心だけは人一倍の村長は、飛び込むことにした。奥からメガネをかけた初老の店主が出てきた。白衣姿。大学教授か哲学者のような、只者ではない風貌。一瞬尻込みした。
              松葉屋① 
              松葉屋

店内は干菓子と半生菓子が置いてあり、「松露」に目が行った。こしあんと白あん、それにうぐいすあんの3種類。箱入りは1350円。それを買おうかどうか迷っていると、店主が「自家用やったら、こっちの方がお得ですよ」と気さくに話しかけてきた。「松露の量は同じやから」。その一言で袋入り(896円)を買い求めた。案外いい人かもしれない。
              松葉屋④ 
              箱入り
              松葉屋③ 
              袋詰めが得?

「店は相当な老舗とお見受けしましたが」
おずおずと聞いてみる。
「そんな、あなた。たった70年ですよ。この辺りは100年や200年の店ばかりですよ。ウチが老舗なんちゅうたら笑われますよ
目の前で手をパタパタ横に振って、哲学者は気さくに答えた。意外と話好きかもしれない。軽くジャブを出してみた。

「小豆は丹波ですか?」
「丹波?とんでもありまへん。丹波物使ったら、この3倍の値段なります。北海道十勝産で十分美味い。そんなに変わらしまへんで」
「砂糖は何を?」
「ウチは白ザラメです。白ザラメが一番だと思うてます」

ウマズイめんくい村に持ち帰ってから、賞味してみた。見事なすり蜜に包まれた3種類の松露は、見た目も味わいもさすが京都と唸りたくなるものだった。こしあんの風味、白あんの風味、それにうぐいすあん。きれいな風味。白あんは手亡豆ではなく白小豆を使っていた。それだけで店主のこだわりがわかった。
              松葉屋② 
              ムフムフの時間
              松葉屋③ 
              冷やしてみる

うぐいすはたぶん白小豆にクチナシ色素で着色しているに違いない。その鮮やかな色に、村民2号が「私はこれが一番好き。風味もいいわ」と漏らしたほど。5~6個賞味してから、あまり暑いので、冷蔵庫で3時間ほど冷やしてみた。
              松葉屋④ 
              すり蜜の美味
              松葉屋10 
              こしあんの風味

これが予想を超える冷菓子に変貌していた。かじるとすり蜜の衣のガサッとした崩壊音とともに、冷たいあんが小豆の素朴な風味とともに舌の上でスーッと溶けていく。すり蜜の濃厚な甘さとあんの風味が身をよじるように溶けていく。口中にささやかな天上界。冷たい、快楽的な美味。
              松葉屋⑥ 
              白小豆
              松葉屋⑧ 
              きれいな風味
              松葉屋⑤ 
              鮮やかな美味
              松葉屋⑨ 
              わてが一番おます

「以前、京洛グルメ先生に亀屋友永の小丸松露をいただいたことがあるけど、あれが横綱だとしたら、これはたぶん小結か関脇クラスかな。亀屋友永ほどの洗練はないけど、どこか素朴で、何とも言えない気品と風味があるわ」

「松露は手間暇のかかる半生菓子で、和菓子職人の腕が決め手になる。あの哲学者みたいな店主は二代目だと言ってたけど、いい腕なんだな。一つのことを突き詰めていくと、ああいう顔になるかもな」

「村長は相変わらずマヌケ顔だけど。突き詰め方が足りないんじゃないの?」
「・・・・・・」

本日の大金言。

京菓子の奥は深い。スマホで食べログを見て、行列に並ぶ。それも悪くはないが、そのすぐ近くに本物が潜んでいるかもしれない。そのことを肝に銘じたい。



                            松葉屋⑦ 

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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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