あまりに素朴な「江戸のとろろ汁」

 東海道五十三次の中で、どうしても食べてみたいのが丸子宿・丁子屋(ちょうじや)の「とろろ汁」である。江戸時代のベストセラー「東海道中膝栗毛」(十辺舎一九著)にも登場する郷土食で、今回の旅の目当ての一つ。安倍川駅からバスに乗り換え30分ほど揺られ、丸子橋入り口で降りた。すぐ「丁子屋」の看板が見えた。タイムスリップ。
              丁子屋 
              宿場の面影(丁子屋9

何せ創業が慶長元年(1596年)という恐るべき老舗で、豊臣秀吉がまだ生きていた時代。その頃は多分お世辞にもきれいとは言えない茅葺きのめし屋だったと思う。現在は巨大な料理屋で、移築した茅葺き屋根といい「名物とろろ汁」の提灯といい、まるで時代劇の世界。弥次喜多が「おうよ、ここでとろろ汁を食らって、ついでに飯盛り女も食べちまおうって寸法よ」などど相談しているような錯覚に陥る。

懐中時計を見ると、午前11時半。重いリュックを下ろして、1階奥の小テーブルに案内された。見事な炉端があり、黒光りした柱と天井、床の間にはお宝鑑定団に出てきそうな獅子頭、時代を感じさせる畳・・・すべてが往時を感じさせている。
               丁子屋② 
               タイムスリップ!
               丁子屋① 
               とろろ飯メニュー
               丁子屋1 
               お茶が美味い

静岡茶をズズズと飲みながら、メニューの中から一番安くてシンプルな「とろろ飯 丸子」(税込み1440円)を選んだ。とろろ汁と麦飯、それに味噌汁、香物という設定。江戸の昔はもっと庶民的な値段だったに違いない。

お茶が実に旨い。7~8分ほどで「とろろ飯 丸子」がやってきた。麦飯がお櫃(おひつ)に入っていて、これは意外に感動もの。女性スタッフによると、「1.5人前ほどありますよ」とのこと。ドンブリにとろろ汁がたっぷり入っていて、木のお玉じゃくしですくうと、いいトロミと風味が立ち上がってきた。麦飯の上にたっぷりとかける。薬味もパラリとかける。
              丁子屋③ 
              とろろ飯 丸子
              丁子屋⑦ 
              おひつで麦飯!
              丁子屋④ 
              江戸時代の香り

「とろろは江戸の昔と同じもの?」
女性スタッフに聞いてみる。
「昔はこの辺りで獲れた自然薯を使っていたらしいですけど、採れなくなって、今は牧の原の契約農家の伊勢いもを使ってるんですよ。昔の自然薯に一番近い山芋です。風味と栄養が普通の山芋と全然違いますよ」
「へえー」
              丁子屋⑤ 
              風味が立ち上がる
              丁子や  
              ほいきた弥次さん

口に運ぶと、確かに実に素朴な風味と食感が広がる。白みそで味を調えているそうで、伊勢いもの素朴な風味を引き立てている。やさしい田舎のおばさんのような味わい。麦飯も忘れかけていたような素朴で、コシヒカリなど美味い米を食べ慣れている舌にはやや物足りない。だが、目を閉じて江戸の昔の味わいを想像すると、これが美味に変換していく。たっぷり2杯分。

みそ汁の具の畳いわしには軽く驚いたが、白みそ仕立ての味わいは悪くない。香物(おしんこ)は出来合いの味で、ここはもう少し気遣いが欲しい。舌代1440円のうち半分は建物など目の保養代だと考えれば、「ま、こんなもんか」と納得するのだった。

本日の大金言。

約420年も続く立派な老舗でも元々は質素な店だったに違いない。その原点をいかに伝えていくか、老舗にはそこが問われている。



                           丁子屋⑨
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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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