上機嫌とはいかない「山形の夜」

 ポンコツ車で宮城・閖上(ゆりあげ)地区を回ってきた疲れで、山形市内の安ホテルに辿り着いたときはぐったりしてしまった。3.11から約4年半。改めて自然の猛威を思う。その瞬間まで普通の日常生活を送っていた約5000人の住民が津波によって、家ごと奪われ、犠牲者の数も800人近いと言われている。
              閖上② 
              記憶は消えない(名取市閖上地区)

一面更地になった現場を時折り復旧工事のトラックが走る。復旧はまだ終わっていない。3.11が嘘のように空は広く、海は穏やか。釣り人もポツンポツンといる。だが、周辺を歩くと、至るところに深い傷跡の痕跡が残っている。日和山に上がって手を合わせる。しばらく呆然と空と海を見る。自分がちっぽけな存在であることを改めて思い知らされる。

「いつまでもボケっとしてたら、そのまま認知症になっちゃうわよ。村長なんて、ただでさえ物忘れがひどいのに」
村民2号のひと言で、村長の腹の底にすむ一匹の虫がむっくりと起き上ってきた。夕暮れの市内に出ることにした。去年と同じコース。商店や飲食店の多い十日町・七日町方面へと歩く。約20分ほど。
             母家 
             おいでおいで

いい店構えの居酒屋の灯りが見えた。地酒と山形郷土料理のメニューが「おいでおいで」している。
「疲れたから、ここにしましょ」
村民2号がもう一歩も歩きたくない、という顔で言った。「居酒屋 母家(マザーハウス)」という看板。

カウンター席と半個室がいくつか。カウンター席に座って、まずは生ビールを頼む。感じのいい女性スタッフが「今日は鮭の白子の天ぷらがおすすめです」。680円。さらに山形牛メニューの中から「里芋と山形牛のコロッケ」(2個680円)をとりあえず頼んだ。
              母家③ 
              アテの鯛の煮付け
              母家⑨ 
              うんめい

生ビールのアテに付いてきた「鯛の煮付け」が美味だった。薄味で日本酒で煮付けたもの。これは当たりの店か? 「里芋と山形牛のコロッケ」は北上コロッケと似ていて、ジャガイモではなく里芋を使ったもの。里芋のぬるりとした食感、玉ネギの甘み、山形牛の切落としがいい具合に調和している。まずまずの味。次第に元気が出てくる。
               母家⑦ 
              里芋と山形牛
              母家⑧ 
              うんめい2

日本酒が充実しているのがわかった。酒田の名酒「上喜元 純米吟醸 無濾過生原酒」(もっきり 700円)を頼んだ。もっきりにもっこり。白磁器の器になみなみと注がれる。これこれ。手に入りにくい酒で、芳醇な吟醸香ときれいですっきりした味わい。甘露甘露とつぶやきたくなった。珍しい「鮭の白子天ぷら」はコロモがやや厚めだが、カラリと揚がっていて、ほのかに鮭の香りのするまったり感が悪くない。フグの白子ほどの感動はないが、まずまずの妙味。
              母家② 
              手に入りにくい
              母家11 
              もっきり!
              母家④ 
              鮭の白子天ぷらダス
              母家2 
              つや姫のおにぎり

仕上げの「おにぎり(鮭)」が当たりだった。炊き立てのつや姫に塩だけの味付け。それを海苔で包んだだけ。ボリュームも十分。中の焼き鮭はゴロッとしていて、無愛想だが、つや姫の旨みがそれを補っている。素朴な旨さ。全体として、相撲に例えると、去年行った「味山海」が張出大関なら関脇の味わい。いい店であることは間違いない。

「やっぱり山形はいいわね。鶴岡もよかったし。藤沢周平が終生故郷を忘れなかったのが何となくわかるわ。その故郷を奪われた閖上のことも忘れちゃいけないわね」
「福島のこともね。何だかしみじみしてきたなあ。もう一杯飲むしかないなあ。お代わりーっ」
「ダメだこりゃ。付ける薬がないわ」

本日の大金言。

人生一寸先に何があるかわからない。三島由紀夫は一瞬一瞬に生きる、と言ったが、一瞬一瞬を精いっぱい生きることは難しい。「平凡が一番」と言った藤沢周平の言葉もある。



                         母家4 


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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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