三条木屋町、縄のれんの「さえずり」

 本日は京都・三条木屋町の縄のれん居酒屋で食べたさえずり(鯨の舌)について。有栖川宮旧邸で行われたペンクラブ懇親会で、飛び切りの情報をつかんだ。村長が居酒屋好きだと知ってか知らずか、参加者の一人が「ええ居酒屋がおますよ。クジラの肉が旨い。さえずりもありまっせ。戦後すぐにできた居酒屋で京都では知る人ぞ知る縄のれんですわ」とささやいた。
               よしみ 
              縄のれんの叙情

村長は一段落ついたので懇親会を早々に切り上げ、夕暮れの京都を京都市役所方面へと急いだ。本能寺を越え、木屋町通りへ。路地に入る。風情のある提灯と渋い縄のれんが見えた。店から漏れてくる活気。「よしみ」という看板。外見でいい居酒屋だとわかった。大衆の匂い。
              よしみ1 
              その先の世界

店内は中央に広い板場があり、それをぐるりと取り囲むようにコの字のカウンター席。上から黄紙のメニューがずらっと下がっている。ほぼ満席で、30~40席ほどか。奥には板の間のテーブル席もあり、スタッフの数も多い。板場には目の鋭い初老の店主らしい人。老若男女カップル客が多い。
              よしみ⑤ 
              素晴らしき世界

板場からはおでんのいい匂いが発散している。魚介類、京野菜などいいメニューが揃っている。村長はまずはキリンラガー(大600円)を頼み、それからゆっくりとメニューを探す。一番楽しいひと時。急いては事をし損じる。まずは「新さんまさしみ」(750円)、「にしんなす」(600円)を頼んだ。
                
突き出しの「おぼろ豆腐」が美味。塩麹がどっかと乗っていた。京都の豆腐の旨さは格別だが、ここもマル。塩麹と豆腐の相性がいい。最初のアタックでこの店がいい居酒屋であることを確信した。だが、それは次第にイライラに変わってきた。「新さんまさしみ」と「にしんなす」が来ない。マツノモタノシマツノアケミ。こういう時の呪文を繰り返す。京都・伏見の地酒「魯山人 特別純米原酒」(700円)も早めに頼むことにした。お目当ての「くじら さえずり」(900円)も追加注文することにした。マツノハツライマツノアケミ。
              よしみ3 
              ここは天国か?
              よしみ③ 
              突き出しの美味
              よしみ② 
              くじらの誘惑

28分ほど待って、ようやく「新さんまさしみ」がやってきた。サンマを釣りにでも行っていたんだろう、きっと。九条ネギがどっさりと上に乗った銀色に輝く新サンマの刺身は見るからに新鮮で、イライラが吹っ飛んだ。スダチを絞り、薬味の生姜を加えた醤油に付けて食べる。その瞬間、甘いきれいな脂と旨味が口中に広がった。かんろ、かんろ。
              よしみ5 
            新さんま刺身、ついに登場
              よしみ4 
              言葉はいらない
              よしみ10 
              にしんなす

「にしんなす」はニシンの味つけがかなり濃く、こちらは期待外れ。「魯山人」で舌とノドを洗い流す。それから、いよいよ本命に移った。「くじら さえずり」は大昔、開高健のエッセイを読んで食べたことがある。さえずりとは鯨の舌のこと。小鳥のさえずりと鯨の舌を引っ掛けた昔の人のネーミングの洒脱さに脱帽したものだ。その時はガムを噛んでいるようで、それほどの感動はなかった。
              よしみ⑦ 
              くじらのさえずり

今回はどうか。黙々と醤油に生姜とニンニクを溶く。鈍いミルク色のテカり、表面の一部がグレー。醤油を付けて口中に運ぶと、予想よりも柔らかい。コリコリというよりもまったり感。脂の乗りがいい。甘ささえ感じた。鯨の種類は何だろう? ミンククジラかイワシクジラか? まさか、アイスランドから輸入しているナガスクジラ? 男性スタッフに聞いてみたら、「さあ、わかりません」と冷たいひと言。企業秘密かもしれない。
              よしみ⑧ 
              脂の乗り
              よしみ⑨ 
              ピノキオか?

魯山人を流し込む。胃袋に消えていく鯨のさえずり。自分のさえずりを考えてみる。この舌は何者? 鯨のさえずりが自分の胃袋の中でピノキオになるかもしれない。罪深い村長、罪深い舌とりあえず、ごめんね、鯨さん、とつぶやいてみた。胃袋の中でさんまが怒りだした。ワイの立場はどないなるんや? ニシンも怒り出した。ワイかて好き好んで濃いめに味付けされたんやないで。た、助けてくれー・・・何という結末か。

本日の大金言。

京都は普段考えないことまで考えさせる。食べることが殺生で、人間はそれで成り立っている。感謝というと嘘くさいが、今ここにあることにたまには手を合わせたい。



                          よしみ11
 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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