恐るべき歴史の堺名物「くるみ餅」

 「天王寺駅前からチンチン電車に乗って、飯炊き仙人の店で昼飯食べて、『かん袋』でくるみ餅を食べてきましたよ。ひっひっひ」
「チンチン電車? 大阪にチンチン電車なんてあったっけ?」
「あーた、勉強不足ですよ。阪堺電車いうて、大阪と堺を結ぶ、そりゃあ牧歌的なチンチン電車でね。村長が行ったら目からウロコですよ、ひっひっひ」

京都にお住いのグルメ仙人先生からそんな糸電話をもらったのは去年のことである。村長は地団駄を踏んだ。ウマズイめんくい村からはあまりに遠すぎる。今回、京都に行ったついでに堺まで足を伸ばすことにした。千利休のことも調べたいと思ったこともある。
               堺チンチン電車
         出発!チンチン電車(阪堺電車)
              堺チンチン電車① 
              便利な一日乗車券

天王寺駅前からまるで都電のような雰囲気の阪堺電車に乗り、宿院停留所で降りた。千利休屋敷跡を見る。堺は大坂夏の陣と太平洋戦争でかなり焼失したが、利休が使っていたといわれる石囲いの井戸が現存している。ボランティアガイドの話を聞きながら、その井戸を見る。水は今でも湧き出ていて、鹿威し(ししおどし)へと続いていた。その水を手ですくって飲もうとしたら「あ、それは飲用できませんわ」と注意されてしまった。利休は遠い。
              利休屋敷跡① 
              利休屋敷跡の井戸

その後、飯炊き仙人の「ゲコ亭」に行くつもりで、ボランティアガイドに評判を聞いたら、「あそこは仙人が引退してしまって、味が落ちたという評判ですわ」。堺の人の直截さが気に入った。時計を見ると、午前11時前。方針を変えて、「かん袋」に行くことにした。
              かん袋 
              室町創業の「かん袋」

歩いて行ける距離。コンクリートの二階建ての古いビルに「かん袋」の木の看板が見えた。メニューはくるみ餅だけで、創業が何と室町時代(元徳元年(=1329年)、当代が27代目という気の遠くなるような老舗。すでにこのブログでご紹介した京都・今宮神社参道のあぶり餅「一文字屋和助」、会津若松「五郎兵衛飴本舗」に続く歴史だと思う。
              かん袋② 
              シンプルなメニュー
              かん袋③ 
              店内の行列

店内は混み合っていた。丸い簡素なテーブルが8つほど。レジの前には12~3人が並んでいた。メニューは「氷くるみ餅」と「くるみ餅」のみ。列に並んで番号札をもらうというシステム。村長は「ここでしか食べれない」という「氷くるみ餅」(シングル360円)を頼むことにした。

待つこと10分ほど。目の前に置かれた「氷くるみ餅」はくるみ餅の上にかき氷がかかっているだけのもの。スプーンですくうと、氷は柔らかく適度に湿り気があり、きめも細かい。上質な氷。その底にクルミ餅が潜んでいる。白玉が5個。それに何とも言えない雰囲気のある緑色のあんがたっぷりとかかっていた。うむ、と言いたくなる色味。
              かん袋⑥ 
              氷くるみ餅やす
              かん袋⑤ 
              やわらかな氷
              かん袋⑧ 
              月が出た出たァ~
 
これが予想よりも美味だった。白玉はもっちり感にあふれ、何よりもあんが美味い。くるみ餅なのでクルミと間違える人が多いが、このくるみは「くるむ」から来ている。自然でほどよい甘い風味、よく見るとミルクのような白蜜もかかっている。このあんの正体は何だろう? 店の女性スタッフに聞いてみる。「すいません。教えられないんです」と肩をすくめた。
              かん袋⑨  
            ええのう甘い発掘
              かん袋10 
              秘伝のあんやす

材料も製法も門外不出の秘伝だそうで、27代も続いていることを思えば、それも理解できる。しかし、堺の通人によると、「あれは青大豆のきな粉ですわ。それに砂糖と塩。他に何かつこうてはるかもしれませんが」とか。それにしてはきな粉の風味はほとんど感じなかった。それを超える絶妙な風味が確かににじみ出ていた。レジの上にかかっていた「この道一筋」という扁額が、「詮索よりも楽しみなはれ」と言っているようだった。村長にはあんの正体が利休の謎のように思えてくるのだった。

本日の大金言。

現在の堺には戦国時代の環濠都市の面影はないが、よく見ると、料理屋や和菓子屋などにも驚くべき歴史が隠れている。その痕跡をたどるのも面白い。利休を生んだ気宇壮大な堺商人の夢の跡・・・。



                          かん袋12 


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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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