そばの原点?堺の蒸しそば

「 戦国時代はベニスのようだった」大阪・堺ではマーベラスな体験を数々したが、創業が1695年(元禄8年)というそば屋のことも書いておきたい。村長がこれまで食べてきたそばとはまるで違っていた。地元では有名な老舗そば屋の「ちく満(ちくま)」である。あの司馬遼太郎が「街道をゆく」の「堺・紀州街道」の中で「ちく満」のことに触れている。

宿院にある「ちく満」で食べようと思ったが運悪く定休日で、雨まで降り出して、休んでいる軒下で雨宿りしたことを独特の筆致で描いている。今から四十年ちょっと前の話だが、その「生そば ちく満」はその当時のままの姿で存在していた。利休屋敷跡の並びにあり、利休の井戸を見てから、ここでそばを食べると、堺のほんのほんの一端を感じ取れる・・・かもしれない。
              ちく満7 
              ここが超老舗そば屋?
              ちく満② 
              魔界への入り口?

「かん袋」で氷くるみ餅を賞味したその足で、「生そば ちく満」へ。まずその外見に圧倒される。まるで昭和の巨大な工場のよう。その一角に古い木戸があり、紺地の暖簾が下がっている。そこだけ別世界で、歴史のある料理屋の風情。堺は戦災で焼けているので、たぶん建物自体は戦後のものだろう。
              ちく満 
              裏手?こちらが玄関?

木戸をくぐると、薄暗い通路になっていて、左側に製粉機が見える。さらに奥に行くと、そこが店内である。下駄箱に靴を入れ、磨き抜かれた廊下を渡り座敷へと上がる。書院造のような、時間が止まったような広い和室。まるで時代劇の世界に入り込んだような錯覚に陥る。まだ時間が早いせいか、お客は少ない。
              ちく満6 
              別世界である

女性スタッフの機敏で控えめな動きに「歴史」を感じる。料理メニューは「せいろそば」だけ。それと飲み物が少し。そばは1斤(きん)と1.5斤の2種類から選ばなければならない。斤とは・・・尺貫法がここでは生きている。「では1斤でお願いします」と村長。800円なり。
              ちく満③ 
              メニューの驚き

待つこと5~6分。大きな木箱がやってきた。その上に生卵とお椀、それに薬味のネギが乗っている。それにツユの入った徳利(とっくり)。
「徳利は熱いですからお気を付け下さい」
と女性スタッフ。戸惑う村長に食べ方も教えてくれた。
              ちく満④ 
              木箱の不思議

お椀に生卵を割り、薬味を入れ、徳利から熱いツユを注ぐ。それをかき混ぜる。木箱のフタを取る。そこにグレーがかったせいろそばが鎮座していた。湯気が盛大に立ち上っている。茹で上げたというよりも蒸し上げたそばで、江戸時代初期のそばそのままのよう。手打ちではない。
              ちく満⑥ 
              フタを取ると・・・
              ちく満10 
              江戸初期のそば?
              ちく満9 
              別次元のそば

まずはひと口。ツユは甘辛でやや甘め。鰹の出汁が効いている。そばはモチっとしていてコシがない。コシとかエッジとかとは無縁のそば。伊勢うどんのそば版のような食感と風味。そば自体に風味はあるが、さほどではない。たぶん小麦の割合が多いに違いない。甘辛のツユと生卵、ネギがそばによく絡む。極上の味というよりもシンプルで不思議な感動に襲われる。
              ちく満⑤ 
              生卵と熱いそばツユ 
              ちく満⑨ 
              ズズと行きなはれ
              ちく満11 
              これは卵スープだ

食べ終わった後も驚き。錫(すず)製の見事な薬缶(やかん)がぐつぐつ音を立てるようにやってきた。「カマクラです」「えっ鎌倉?」「いえいえ釜でグラグラ言ってるお湯です。それでカマクラいうんです(笑い)。昔からそう言ってますよ」。うーむ。
こんなそば湯はむろん初体験。それを残ったツユに注ぐと、みるみる上質の特製卵スープが出来上がった。それをすすると、「京都とも大阪とも違う。堺、なんちゅうところや」という言葉が漏れるのだった。

本日の大金言。

もしタイムマシンがあったら、戦国時代の堺に行ってみたい。信長や秀吉も恐れた堺商人の独立国。街には過日の面影はないが、奈良や京都に負けないもう一つの歴史といい店が隠れている。




                         ちく満12
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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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