悲しみのサバサンドとせんべい汁

 悲しいことが起きてしまった。村長の愛する北千住「石黒のあめ」が店を閉じてしまった。「完売に付 閉店」と書かれた手書きの張り紙。久しぶりに訪れた店の前で茫然と佇む。日付は8月20日となっていた。二か月以上前に閉店していたことになる。ガランとした店内。そこにたまたま二代目の店主がいた。女将はいなかった。
              石黒の飴② 
              水色の悲しみ
              石黒の飴① 
              たかが飴、されど飴

「昭和8年創業だから82年ほどの歴史になるよ。オレも年だからね。後期高齢者になっちゃったし、後継者もいない。ここが潮時だと思って、やめることにしたんだ」
二代目店主は「しょうがねえよ」という顔で、村長と立ち話をした。その間もご近所の知り合いが「もったいないねえ」などと声をかけていく。また一ついい店が地上から消える。
              ごっつり 
              おっ、八戸せんべい汁

すでに夕暮れ時。ジャズバー「ゆうらいく」に行くには時間が早すぎる。これが飲まずにいられるか、などと妙な理屈をつけて、ほんちょう商店街へと向かう。すると右手に「八戸せんべい汁」の幟(のぼり)が見えた。あのB級グランプリの王者・・・。「日本一の脂ノリ! 八戸前沖さば」の文字も。うむ。「炭火焼 ごっつり」という店名。さば好きとしては、これは見逃せない。階段をトントンと登る。

そこは八戸の居酒屋そのものだった。L字のカウンターとテーブル席がかなりある。黒いTシャツに頭タオルのスタッフが5~6人ほど。カウンター席に腰を下ろしてから、見渡すと、「サバサンド」(780円)の文字が見えた。サバサンドはトルコのB級グルメで、芸能界でもタモリをはじめファンが多い。村長も一度食べてみたかったもの。
              ごっつり① 
              奇跡の出会いか?
              ごっつり④ 
              八戸直送の味

地酒「桃川」純米酒(780円)を頼んでから、「サバサンド」を頼んだ。「八戸せんべい汁(おわん480円)も頼んだ。「サバサンドは鯖をこれから焼きますので、少々お時間がかかります」とのこと。その間のアテに「銀鯖しめさば」(430円)を頼むことにした。目の前の焼き場から、鯖を焼く煙といい匂いが漂い始めた。
              ごっつり③ 
              ええのう

まず桃川純米酒が到着。グラスからその下の枡に桃川があふれ落ちている。「銀鯖しめさば」をつつきながら、桃川をノド奥にちびちびと流し込む。「石黒のあめ」女将の顔を思い出す。機嫌のいい時と悪い時の顔。「もう東京にはウチみたいな店はないと思いますよ」とつぶやいたときの下町言葉はいずこへ?
              ごっつり⑥ 
              黄金の煙り?

「銀鯖しめさば」はさすがに脂の乗りはいいが、塩が効きすぎて、期待していたほどの旨さではない。だが、その後に来た「八戸せんべい汁」が絶品だった。大きめのお椀に南部せんべいが4枚ほど。固めのすいとんのような食感で、「素材は八戸から直送しています」というだけのことはある。鶏のだし汁がよく効いていて、大根、しめじ、にんじん、ゴボウ、鶏肉、ほうれん草が絶妙に絡む。奥深い旨味が詰まっている。
              ごっつり⑦ 
              これこれ
              ごっつり⑧ 
              南部せんべい
              ごっつり⑨ 
              南部の旨み

その後に「サバサンド」がやってきた。トーストされた食パンの間からこんがりと焼かれた八戸前沖さばが「オレ様を誰だと思っている?」というドヤ顔で分厚い顔を出している。千切りキャベツが敷かれただけ。サバは醤油と味りん(たぶん)で焼かれていて、甘辛度が高い。何か隠し味もあるようだ。旨いのは旨いが、味がかなり濃い。もう少し薄味にするか、タモリレシピのように味付けはマヨネーズの方が正解ではないか? 
              ごっつり10  
              サバサンド登場
              ごっつり12 
              このボリューム
              ごっつり13 
              およしになってえ~

すっかり食べ終えると、図ったように飴が食べたくなった。「石黒のあめ」に買いに走りたいが、もはやそれもかなわない。「一億総活躍社会」もへったくれもない。永田町より石黒の飴。どこか日本は軸が狂い始めているのではないか。「ゆうらいく」にハシゴするしかない。

本日の大金言。

最中屋「なか井」が店を閉じたのは約10年ほど前。いい店が、いい職人のいる店が消えていくのは図書館が一つなくなるのと同じくらい、いやそれ以上に悲しい。北千住の光と影。その影の中にこそ未来へ通じている光りがある。なんてね。



                         ごっつり14 


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本場は

 本場トルコ・ガラタ橋付近のサバサンドは、焼きと揚げの2種あり、サバの半身を使っていました。また、パンはサバのサイズに合う大きさで、フランスパンとコッペパンの中間のような田舎パン。サバ以外には玉ネギやトマト、ハーブ等も入って(私が食べた頃は)100円程度でした。このお店のはかなり日本的ですね。ノルウェー産の安い冷凍塩フィレサバを自分で焼き、フランスパンに挟めば、かなり本場に近付けると思います。何で日本で見かけないのか、不思議です。

コメント感謝

inaさん
サバサンドの本場で食べる。うらやましい限りです。日本では今コッペパンが静かなブームですが、フランスパンとコッペパンの中間のような田舎パンに挟まれた揚げ鯖、聞いただけでよだれが出そうです。タマネギが合いそうですね。北千住はまさに日本風です。サバサンド、日本でブームになりそうで火が付かない。ホント、不思議です。  彦作拝
プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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