肉屋直営のワンコイン「ロースカツ丼」

 グスン。作家の野坂昭如さんが亡くなった。青春時代にかなり影響を受けた作家だけに、どこか大きな時代が終わった気分になる。「新潮45」の最期の原稿には「この国に、戦前がひたひたと迫っていることは確かだろう」と書いたという。「戦前がひたひた」。「焼け跡闇市派」と自称した野坂さんの、これは遺言かもしれない。ずしりと重い。だが、しかし・・・これをしっかりと受け止めなければと思う。ぎっくり腰・・・などと言っている場合ではない。

空が滲んでいる。こんな時はカツ丼に限る。シバの女王から教えてもらった茨城・古河市にある「とんかつ 三軒家」にポンコツ車を飛ばすことにした。肉屋「ヤマムロミート」直営のとんかつ屋である。今回が2回目の訪問。とにかく安くてボリュームがある。しかも旨い。それ故、正午は行列ができることもある。最近太り気味で、朝昼晩ラジオ体操を始めた村民2号も付いてきた。
              三軒家① 
              肉屋直営のとんかつ屋

古河市下辺見の県道沿いに「とんかつ 三軒家」の看板が見えた。まるでファミレスの外観。混雑を避けて、午後1時半過ぎに到着。L字型の大きいカウンター席とテーブル席、それに小上がりもある。メニューの中から村長は「ロースかつ丼」(税抜500円)を頼むことにした。前回は「ロースカツ定食」(同700円)を食べ、豚カツの厚みとキャベツの山盛りに「さすが肉屋直営」と大いに満足した。「ロースかつ丼」はどうか? 村民2号は「ヒレカツ定食」(同3ケ800円、みそ汁付き)
              三軒家② 
              ロースかつ丼でねえの?
              三軒家1 
              混んでる人気店

15分ほどの比較的長い待ち時間で、「ロースかつ丼」がやってきた。お新香が付いているが、みそ汁はなし(別料金)。グスン。朱塗りの大きなドンブリの蓋を取ると、湯気とともに卵でとじられたカツ丼が3倍ゴシックで現れた。卵は多分2個は使っている。とんかつは値段を考えると、かなりの大きさで、5つに切り分けられていた。卵がもう少し半熟だといいのだが、しっかりと火が通っている。上に三つ葉が乗っていた。
              三軒家③ 
              圧倒的なボリューム

箸を入れると、肉の厚みとコロモの厚みがわかった。ロース肉の厚みは1センチほど。ガブリと行くと、ロース肉の柔らかさがいい歯ごたえ。脂身が少なく、それは好みの問題だが、脂身好きの村長にはやや物足りない。かなり甘めの濃い味付けで、コロモのサクサク感ももう少し欲しい。多分揚げたてというよりも揚げ置きを使ったのではないか。前回のロースカツ定食は揚げたてだった。
              三軒家⑥ 
              言葉はいらない
              三軒家⑤ 
         肉も暑いがコロモも厚い
              三軒家⑦ 
              戦後の歴史

ツユには出汁感があまりない。ご飯もフツーの旨さ。総合的にはボリュームといい、肉といい、ワンコインとは思えないもので、食べ終えると、かなりの満腹感。これは肉屋による田舎のB級のカツ丼、だと確信した。
              三軒家3 
              揚げ立てのヒレカツ

「ヒレカツはちょうどいい量で、キャベツがどっさりというのがいいわ。確かに肉が旨いし、安いのもいい。私の方が当たりね」
「みそ汁くらい付けてほしいけど、ぜいたくは言えない。でも、このカツ丼の原点のような味とボリュームは悪くない。戦後、日本は焼け跡闇市から立ち上がってきた。このカツ丼にはそのかすかな匂いがする。でもなあ、ああ悲しい」

「どうしちゃったの? 野坂昭如が亡くなって、村長の青春も終わっちゃったの? もうとっくに終わっちゃっているのに、バッカみたい」
「そうじゃない。豚汁を頼めばよかったって思ったら、なぜか涙が出てきたんだ。200円の豚汁を頼めなかった自分が情けなくて情けなくて・・・オレは何という小さな人間なんだって・・・」
「ずっとそうやって、一人芝居をしてたら?」

本日の大金言。

野坂昭如は美食にはあまり執着していなかったようだ。昔、確かエッセイで、食べ物に対する選り好みはないと書いていたと記憶する。地方に出たら、食堂などに入ると、選ぶのが面倒なので、ほとんどカレーライスかラーメンと。焼け跡闇市の記憶を終生忘れなかった、あるいはそこから人間を見つめようとした稀有な作家に黙とう・・・。


                         三軒家11 






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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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