深沢七郎の町の「特製ランチ」

 埼玉・久喜市菖蒲町は畏敬する作家・深沢七郎が晩年を過ごした街。奇抜なラブミー農場を開き、亡くなるまで約22年間、ここから稀有な世界観を発信し続けた。壁に突き当たった時などここに来ると、「生きているのはひまつぶし」「人口が減れば平和になる」などなど恐るべき金言を吐き続けた巨大な山の一端に触れた思いがする。

年納めのつもりでここに来たついでに、ポンコツ車で寄り道をすることにした。ちょうどランチタイム。県道12号線から小林神社方面へ。6~7分で「茶房 時ヤ夢工房」に到着。金土日しか営業しない不思議な店で、読み方も「じゃむこうぼう」が正解で、まともに読める人はほとんどいない。偶然に過ぎないが、深沢七郎も東京・曳舟で「夢屋」という今川焼き屋を開いていたこともある。奇縁としか言いようがない夢繋がり。
               ジャム工房 
               隠れ家か?

殺風景な果樹園の中の一軒家。ジャムづくりが本業で、1年半ほど前に茶房レストランも開いた。ランチメニューは「本日のランチ」と「ホットサンド」しかない。スイーツ類は別扱い。村長は「本日のランチ」(ドリンク、デザート付き 1080円)を頼むことにした。村民2号も同じものを頼んだ。
               ジャム工房1 
               殺風景と紙一重
               時ヤ夢工房① 
               メニューは少ない

「本日のランチ」は週ごとに変わるそうで、今週は「鶏の唐揚げ」。女主人によると「一足早いクリスマスです」とか。イマイチよくわからないが、そこが独自と思うことにした。テーブル席が4人用2人用合わせて6席ほど。全体の印象は安普請だが、BGMにナット・キング・コールが流れ、趣味は悪くない。

待ち時間が予想外だった。注文を受けてから作り始めるのと、人手が少ないためか、35分も待たされた。厨房からは唐揚げを揚げる軽やかな音と食欲をそそるいい匂いが流れてくる。不思議と腹が立たない。雑誌「家の光」が置いてあり、何気なく読むと、先日亡くなった野坂昭如の原稿が載っていた。12月号なので、亡くなる寸前に書いたものだと思う。胸が詰まりながら読む。
              ジャム工房16 
              ひまつぶし?

「本日のランチ」はかなり凝ったものだった。木箱のお重には、サフランライスと揚げ立ての鶏の唐揚げ。さらに小鉢が五つも付いていた。それにお吸い物。小鉢はいずれも凝ったもので、じゃがいも入りオムレツ、ゴボウの唐揚げ味噌和え、ポテトサラダ、蒸し鶏の自家製マヨネーズ和え、金時草の和え物。薄味が基調で、地場の野菜を使っている。
              ジャム工房④ 
              おおおの到着
              ジャム工房⑤ 
              地産地消の素材
              ジャム工房⑥ 
              メーンの唐揚げ
              ジャム工房12 
              ガブッと行け     
              ジャム工房13 
              夢の歯型

メーンの鶏の唐揚げが秀逸。家庭料理の延長線上の味付けで、コロモのサクサク感と鳥の肉汁感がジュワリと滲み込んでくる。醤油に白ワイン、ニンニク、ショウガで味を調えているそう。サフランライスは自分の畑で採った「彩のかがやき」を使っている。柔らかく炊いているが、村長はもう少し固めが好き。
              ジャム工房15
              デザート

 「隠れ家みたいで、これからもたまには来たいわ。細かいところは雑なところもあるけど、デザートの梨のパウンドケーキも旨いし、コーヒーもドリップ式で悪くない。それに『家の光』は懐かしいわ。私は昔、ここでイラストを描いたこともあるのよ」
「へえー、主婦の友社ばかりじゃないんだ。毎日新聞でも仕事をやっていたっけね。最近は全然働かないけど」
「村長のせいよ。私が働いたら、村長はもっと働かなくなるでしょ。元々怠けものなんだから。少しは深沢七郎さんとか野坂昭如さんの爪の垢を煎じて飲んでほしいわ」
「バカメ。人生はひまつぶし。それに才能が違い過ぎる。稼ごうなどと思ってはいけない」
「ダメだこりゃ。付ける薬がないわ・・・」

本日の大金言。

深沢七郎と野坂昭如。ラブミー農場で対談したこともある。つい昨日のことのようなのに、時は過ぎ、2015年も終わろうとしている。偉大な先人も忘れられようとしている。忘れてはいけないと思う。


                       ジャム工房14 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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