プロの味、意外な場所の和食ランチ

 親しくしている利根川そば仙人から「ちょっと旨い料理屋があるよ。シバの女王も誘って行かない?」とのお誘い。そば仙人は不思議な人で、そば屋を営んだり、イベントをプロデュースしたり、畑で野菜を作ったり・・・底が知れない。昔は東京・銀座で出入りの和服屋をやっていたという話もある。独特の愛きょうのあるお顔としゃがれ声で誘われると、つい「どこまでも行きまっせ、地球の果てでも」と答えたくなる。

かなりの食通でもある。連れて行ってもらった店ではずれたことはない。シバの女王とどっこいどっこい。その店が埼玉・久喜市栗橋町の「日本料理 嬉乃(うれしの)」だった。すぐそばに「静御前の墓所」がある。源義経の愛人・静御前の伝説はあちこちに残っているが、この静御前の墓所もその一つ。「日本料理 嬉乃」はその一角にあり、石畳のアプローチ、その奥に下がった海老茶の暖簾・・・いい店構えで、「かような場所に」とちょっと驚く。
              嬉乃② 
              いい店構え
              嬉乃① 
              限定レンチメニュー

ちょうどランチタイムで、「自家製じゃこ山椒ごはん」(茶わんむし、小鉢付 税込み820円)にも惹かれたが、そば仙人の「ここは魚が旨いよ。店主は九州と大阪で修業した料理人で、とにかく手を抜かない。醤油からドレッシングまで全部自分で作る。だからファンが付いているんだ」というひと言で、ランチで一番高い「嬉乃膳」(デザート、コーヒー付 1580円)を選ぶことにした。全員同じ選択。
              嬉乃③ 
              凝った造り

店は凝った造りで、趣味のいい小上がり席とテーブル席、木のカウンター席などがあり、対面の板場には店主と若い板前さんの姿が見える。店主の隙のない板前姿に、かつて中華料理の名シェフ・周富徳さんが村長に言った「いいコックは立ち姿でわかるよ。きりっとしている」という言葉を思い出した。

10分ほどの待ち時間で、まずは冷奴の小鉢が来た。「この豆腐、旨いですねえ」村長が言うと、そば仙人が「これ、豆腐じゃないようだよ」。女店員さんにこっそり聞くと、「あのう、それは鱈(たら)の白子なんです。それを裏ごししたものです」。さらに女店員さんではなく、女将さんだった。ありゃりゃ。穴がなくてもどこかに入りたい気分。
              嬉乃8 
              本場関西の世界
              嬉乃④ 
              まさかの世界

続いて、お膳が来た。ひと目で本格的なものだとわかった。刺身はヒラマサとスズキが二切れずつ。たぶん昆布締めしてある。これが見事なもので、自家製醤油とワサビで食べる。京都で京洛先生に連れて行ってもらった割烹のものと遜色ない旨さ。だし巻き玉子、ヒラマサの醤油焼き、イカシュウマイと舌鼓を打つ。すべて関西の出汁の効いた薄味。天ぷらはシロギスとシシトウで、サクッと仕上がっている。
              嬉乃⑥ 
              刺身2種
              嬉乃⑨ 
              絶妙なだし巻き
              嬉乃11 
              大栗の渋皮煮
              嬉乃⑦ 
              これがたまらん

煮物はつぶ貝、里芋、カボチャ、ほうれん草、それに渋皮煮の大栗。そば仙人の「手抜きがない」が誇張ではないことがわかる代物。炊き立てのご飯と漬け物にも感心。みそ汁ではなくうどんというのも面白い。村長はみそ汁派だが、これはこれで悪くない。

コーヒーはそこそこだが、デザートの「酒粕のムース」は秀逸。吟醸香とムースの舌触りが素晴らしい。地酒メニューも実に渋い選択で、店主の趣味のよさもわかる。これで1580円は高くはない。かような場所にかような名店が隠れていることに驚く。改めて世界は考えているよりも広い。
              嬉乃14 
              酒粕のムース

「今度、みんなで夜来ようよ。Aさんに運転させて、私たちで飲んじゃおうよ。ねえ、そば仙人」
「オレは酒、やめてんだよ。何ならオレが運転してもいいよ」
「村の車でもいいよ。イケイケポンコツ車、イケイケ火の車、時空を超えて義経と静御前の元まで飛んで行け、なんてね」
白拍子だった静御前が舞う歌舞踊りってどんなものだったんだろう? 御前と御膳でうれしいのう・・・ひどいダジャレオチだよ。

本日の大金言。

プロフェッショナルと出会う楽しみ。しかもそれが意外な場所にあるとき、感動は深くなる。表通りより裏通りに花の山が潜んでいることだってある。




                        嬉乃15 



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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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