大寒や隠れ暖簾の「たつた丼」

 一寸先何が潜んでいるかわからない。ゴッドマザーのお見舞いついでに桐生市でランチとなった。ポンコツ車を止めて、巴町周辺をブラ歩きしていると、古い木造の文化財的建物が視界に入った。その一角に何とも言えない情緒ある暖簾が下がっていた。「鳥亀食堂」の看板がセピア色の光沢を放っている。食堂というより古い料理屋の気配。
              鳥亀① 
              まさかの出会い

つい昔の癖で建物と店周りを縦横斜めから見る。どうやら鳥料理専門店で、入り口にランチメニューボードがささやかに佇んでいた。「たつた丼」「鳥弁当」「もつ丼」などの手書きのメニュー。いずれも750円なり。「たつた丼」って何だろう? この安さだとあまり期待するのはよくないかな、などとあれこれ考えながら引き戸を開けて店に入った。
              鳥亀② 
              入るっきゃない

入った瞬間、「いい店だ」と直感した。ゆったりとした4人用テーブル席と2人用テーブルだけ。サーモンピンクのテーブルクロスと年季の入った椅子、シンプルなインテリアが隙のない世界を作っていた。そのさり気なさ。向島か人形町あたりの路地裏の隠れ名店の気配。右手が厨房になっていて、そこに年配の店主が一人。奥さんと二人で店を切り盛りしているようだ。客は一人しかいない。
              鳥亀④ 
              隅々の気配
              鳥亀③ 
              名店発見か?

気になっていた「たつた丼」(750円)を頼むことにした。「たつた丼」はこの店のオリジナルで、鶏のささみを片栗粉でまぶして天ぷらに揚げたものだとわかった。「たつた」は竜田揚げから来ているようだ。店は創業が昭和43年(1968年)で、その時からのメニューだそう。厨房からの軽やかな揚げ音が心地よい。

12~3分ほどで、「たつた丼」がやってきた。ドンブリではなく漆塗りの丸いお重で、蓋を取ると、一口サイズの鶏のささみの天ぷらが、数えてみたら十数個ほどびっしりと表面を覆っていた。狐色のきれいな揚げ具合。豆腐と小松菜のお吸い物をまずはひと口。昆布出汁の効いた深い味わいで、この店主がかなりの腕の料理人だとわかった。
              鳥亀⑥ 
              ただ者ではない
              鳥亀⑦ 
              たつた丼どす

鶏のささみの天ぷらはサクサクと揚がっていて、きれいな味わい。うっすらとツユがかかっている。そのやや甘めの薄味は一瞬物足りなさを感じさせるが、食べ進むうちにそのデリケートなまでの味わいが実に上質なものだとわかる。絶妙なシンプルとでもいう他はない。炊き立てのご飯は柔らかく炊かれていて、薄めにかけられたツユとよく合っている。お新香も手抜きがない。ボリュームもかなりある。
              鳥亀⑧ 
              鶏ささみの天ぷら
              鳥亀⑨ 
         サクサク感とささみ
              鳥亀11 
              七味をパラリ

途中で七味を振ると、味わいにアクセントが付いた。飛び切りの隠れ名店を見つけた気分。かような店が潜んでいる桐生という街の奥の深さについて。西の西陣、東の桐生と言われた時代もあった。
              鳥亀10 
              プロがいる

「こんな汚い店で、申し訳なく思っているんですよ。建物も壊れかかっていて、後継者もいない。私たちの代でお終いでしょう。建物ですか? 桐生は織物の町で、この建物は織物工場の織子(女子労働者)の寮だったらしいですよ。かなり古い建物です」

サービスに出しているというコーヒーを味わいながら、店主と奥さんとしばし雑談となった。村民2号が隅々まで神経が行き届いている店の様子に感心していることを話したら、かような返事が返ってきた。
              鳥亀4 
              コーヒーのサービス

すべてに手抜きというものが感じられない。どこにも誇張がない。750円という舌代が信じられない。テレビや食べログに登場する宣伝上手の店が軽く見えてくるのはなぜか? 本物はまだまだ意外な場所に潜んでいる。それを見つける楽しみもまた。

本日の大金言。

いい店がなくなるのは客の責任でもある。情報だけが一人歩きするネット社会の盲点を考えてみる。安倍首相の過剰な人気も実体とかけ離れているのではないか? 客の責任も問われていると思う。



                            鳥亀2 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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