石巻の伝説カレーライス

 3.11で最も津波被害の大きかった石巻。その年の夏、エンタメ新聞社の夏休みを利用して、曇空の下、ポンコツ車で石巻に向かった。現場を見たいというサガを抑え切れずに、東北道を古川インターで降り、そこから石巻に向かい、規制線をくぐりぬけるように海岸線をできる限り走った。

その途中、トラックが荒々しく行き交い、テレビのニュースで見た凄まじい光景が延々と続いていた。横たわる現実に言葉を失う。痛ましい光景も目にした。自分は一体何をしているんだろう? カメラを持参したのに、ついにシャッターを切ることができなかった。

あれから5年近くたった。晴れ渡った空の下、ほぼ同じコースを同じポンコツ車で走っている。石巻女川線(県道240号)を日和橋方面へと向かう。悪夢のような瓦礫(がれき)は見た目にはきれいに撤去されているが、土地区画整備事業などの工事が今も続いており、考えていた以上に復旧は途上のようだ。工事用塀で遮蔽された道路からは海がほとんど見えない。
         石巻 
         5年後の工場

黙とうしてから、当時壊滅状態だった日本製紙石巻工場、石巻漁港の今をシャッターに納める。漁港は午後1時を過ぎていたので閑散としていた。カモメが3.11などなかったかのようにゆったりと舞っていた。
         石巻漁港 
         石巻漁港

「そろそろ復活したカレーライスを食べに行こうか」
「その言葉、待ってたわ。腹の虫がぎゃあぎゃあ喚いてうるさくてしょうがないわ」

津波にやられた中里地区から須江しらさぎ台へと移転した「コーヒーとカレーの店 豆の木」へとポンコツ車を走らせる。ここは3.11後、営業をやめたが、ファンからの復活を求める声に勇気づけられるように、その約1年後に高台に移転して再オープンしている。ここのオリジナルカレーは石巻でも有名だった。いわば伝説の店。
         豆の木② 
         復活した「豆の木」

場所はわかりにくかったが、何とかたどり着く。クリーム色のヨーロッパのロッジ風の一軒家で、入ると、イージーリスニングのピアノ曲が流れ、木の匂いのするどこか心が落ち着く店だった。

メニューから定番の「特製オリジナルカレー」(ミニサラダ付き レギュラーサイズ600円=税込み)選んだ。ランチタイムなので、コーヒー(プラス200円)も頼んだ。
         豆の木③ 
         復活したメニュー
         豆の木④ 
         落ち着く

10分ほどでミニサラダ、特製オリジナルカレーの順でやってきた。カレーは香ばしく、色が濃い目。インドカレーのようにかなりの辛さで、その複雑なスパイスがしばらくすると、口中にいい余韻を残す。具はゴロンとした肉が一個。玉ネギや具の姿はない。擂(す)っているか、煮込まれているか、その両方だと思える手間ひまをかけた旨味で、地元の人が愛した理由がそれとなくわかる。
         豆の木⑤ 
       オリジナルカレー登場
         豆の木⑦ 
         辛みと辛酸
         豆の木⑨ 
       デカい肉の存在感

「ライスがいいわ。ササニシキだと思うな。この肉は多分牛肉よ
鶏肉じゃないかな。辛さが思ったよりくるけど、ふっくらと炊かれたライスとの相性がいい。ミニサラダは普通かな」
「鶏肉のはずがないでしょ」

あわや内紛ぼっ発。女性スタッフに聞いてみると、「豚肉です」

食後のコーヒーもマイルドで美味かった。その後、ママさんと雑談。地震で不思議な因縁。

「店は1978年の宮城沖地震の年に中里で始めたんですよ。それが3.11で終える結果になってしまった。地震で始まり地震で終わった。主人が亡くなり、もう店はできないと思っていたんです。それがお客さんの声に押されるように復活できたんです」

きれいに平らげたカレー皿を前に、極楽とんぼが二匹。ただ旨いだけではない。そこに重い記憶が詰まっていた。合掌。

本日の大金言。

月日は恐ろしい。3.11は記憶の中から次第に消えかかっている。だが、実際に足を運ぶと、それは深い傷跡となって隠れていることが実感できる。忘れていいことと忘れてはいけないことがある。たまには東北へ。

               豆の木11
 
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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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