最中の最高峰か、江戸根元「壺屋」

 「そりゃあ、本郷の壺屋の最中(もなか)にはかないまへん」
先月のこと、あーだこーだ好きの甘党が集まった飲み会の席で、京都のグルメ先生がきっぱりと言い放った。

東京・銀座の空也、奈良の白玉屋栄壽のみむろ、吉祥寺の小笹など最中(もなか)の逸品の名前が次々と出る中、かくて「本郷の壺屋」が内々の最中番付で東の横綱に君臨することとなってしまった。ずっと以前、グルメ先生に「空也の最中は別格ですね」と村長が糸電話で言い放ったところ、数日後、奈良・白玉屋栄壽のみむろ最中を送ってくれたことがある。

その美味さと値段の手ごろさに仰天、グルメ先生の無言の戒めに脱帽したことを思い出した。ちなみに「空也の最中」はエンタメ新聞社時代の大ボスが贔屓(ひいき)にしていた最中界の最高峰の一つである。「最中では空也が一番だ」と言っていたほど。
        壷屋総本店② 
        最中界の頂点?

江戸での所用の帰りに、その「壺屋の最中」を買いに本郷まで足を延ばした。地下鉄湯島駅で降り、湯島天神を左手に見ながら、春日通りを200メートルほど上っていくと、蔵造りの古い小さな建物が見えた。「創業寛永年間 江戸根元」のさり気ない文字、引戸の上には「壺屋」の看板が掲げられていた。そのあまりの地味な佇まいに、ここが江戸時代初期から400年近い歴史のある老舗とは思えない。寛永といえば三代将軍家光の時代。
        壷屋総本店③ 
        通り過ぎてしまうほど

引戸を滑らせて中に入ると、女将さんが出てきて、さらに18代目という気の遠くなるような当主が出てきた。何も言われなければ、そんなすごい人とは思えない気さくさ。本物は肩に余分な力が入っていない。最中は3種類あり、「バラでも結構ですよ」と言ってくれたので、一番小さい「壺々最中」(こしあんのみ、1個税込み110円)を3個、一番大きな「壺形最中」(こしあん190円、つぶあん200円)をそれぞれ2ずつ、合計7個買い求めた。
        壷屋総本店① 
        本物はさり気ない

ウマズイめんくい村に持ち帰って、夜遅い賞味となった。村民2号が渋茶を入れ、まずは一番小さい満月のような円形の「壺々最中」を賞味する。厚みがないので、ふた口ほどで食べれる。江戸時代からの最中はこの壷々最中。ちなみに大きな壺形最中は終戦後に作られたもの。
        壷屋① 
        バラ買いもできる
        壷屋② 
    壺々最中(下)と壺形最中2種
        壷屋④ 
        江戸からある壺々最中

口中に入れた途端、皮種のサクサク感と風味が広がった。空也の最中と同じレベルで、パリッとしているのにスーッと溶けていく。黒々としたこしあんはかなり甘めだが、絶妙としか言いようのない風味と美味さ。皮との相性が素晴らしい。
        壷屋⑤ 
        こしあんと皮の凄味

あんこの独特のねっとり感とザラっとした食感。江戸時代から同じ作り方を続けているそうで、あの勝海舟も愛した味。江戸根元のあんこの素朴の凄味。空也やみむろのあんこが洗練された美味さなら、これは野暮ったい美味さの極致とでも表現するしかない。北海道十勝産の厳選した小豆と高純度の白ザラメ、それに水飴を加えているとのこと。毎日限られた量しか作らない。その徹底した仕事ぶりがこの味を生み続けていると思う。暖簾を1センチも広げないのも職人のプライドかもしれない。
        壷屋⑦ 
        こちらは壺形こしあん
        壷屋⑧ 
        このボリューム
        壷屋⑨ 
        すき間がない

壺形最中はこしあんが白い皮種で、つぶあんが焦がし皮種。どちらもあんこがすき間なくぎっしりと詰まっていて、黒光りしている。親分のような風格。

「何だか上等な羊羹を食べているみたい。皮との相性がピッタリね。私はこしあんの方が好きかな」
        壷屋15 
        壺形つぶあん
        壷屋12 
      風味が只事ではない

「つぶあんは、さらに風味が凄い。むしろつぶしあんで、こちらもねっとりした密度の濃さが只事ではない。どこかに黒糖のような風味も感じる。京都のグルメ先生の好みはどっちなんだろう?」

「多分、つぶあんじゃないかしら。和菓子のメッカ京都にはない江戸の最中の頂点はこっちだと思うから」

「アクの強い大ボスが洗練された空也が好きで、洗練されたグルメ先生がアクの強い壺屋が好きとは面白いね。村長は両方好きだけど」

「だから村長は中途半端なのよ。何やっても」

「最中のカラになりたい・・・」

「もぬけの殻のダジャレのつもり?」

「・・・・・・」

本日の大金言。

壺屋は明治維新後、一時廃業する。鈴木越後や金沢丹後など名だたる御菓子司が徳川に殉じて、相次いで暖簾を畳んだ。壺屋も同じ思いだったようだ。だが、勝海舟の「おめえンとこの最中は江戸っ子がみんな楽しみにしている。何も徳川に殉じるこたァねえ」(という意味のことを言ったようだ)のひと言がきっかけで、店を再開した。ホントは勝海舟自身が一番食べたかった?



                 壷屋14 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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