路地裏で見つけた驚きのパン屋

 下町歩きには思わぬ発見がある。江戸での雑務を終え、いつものように東京・北千住の迷路を散策中のこと。予期せぬ場所で、いいパン屋に出会った。

看板も出ていない、パリの路地裏にあるような小さなパン屋で、そこで買い求めたバケットとあんぱんが「宝石」だった。人生にはたまにいいことがある。これだから道草はやめられない。

夕暮れ時の北千住。ぎっくり腰をなだめながら、いつもの西口ではなく、東口で降り、学園通りを抜け、知る人ぞ知るディープな柳原商店街へ足を延ばすことにした。稲荷寿司の名店「松むら」がたまたま休みだったので、いつもと違うコースに入った。昭和がそのまま残る迷路のような路地を歩く。これが楽しい。
        sigepannhausu.jpg 
    目立たない、まさかの場所

すると、オレンジ色のそこだけモダンな外観の店が見えた。子ども連れの近所の主婦が立ち話をしていた。どうやらパン屋のようで、ガラス張りの向こうには棚に置かれたパンが見えた。なぜか店の看板がない。好奇心がむくむく。

店の前で立ち話中の主婦に「看板がないって珍しい。ここのパンは美味いですかね」と聞いてみた。主婦は一瞬怪げんな顔をしたが、下町の気さくさで「ここは美味いですよ。いいパン作ってますよ」と白い歯を見せた。当たりの予感。
        しげぱんはうす② 
        パン職人がいる
        しげぱんはうす④ 
        パリの路地裏?

それが「しげぱんはうす」だった。3人も入れば一杯になりそうな狭い売り場には、ラウンドパンや食パン、フランスパン、惣菜パンが並んでいた。いずれも本格的なパンで、香ばしい匂いが充満していた。パン製造スペースがすぐ奥にあり、まだ若い店主(多分30代)が一人、小麦粉まみれのような顔で、仕込みにかかっていた。
        しげぱんはうす⑤ 
        バケットの誘惑
        しげぱんはうす⑥ 
        あんぱんの誘惑

何を買おうか迷ったが、いい焼き色の「バケット」(1本税込み220円)と「あんぱん」(こしあん、同130円)を買い求めた。どうして看板がないのか、聞いてみると、「あっ、そこにありますよ」と店内の隅を指さした。「看板出すのを忘れてました」。ジョークなのか、不思議なパン屋としか言いようがない。
        しげぱんはうす③ 
      こんなところに看板が

店は2013年7月にオープン。横浜で修業をしてここでパン屋を開いたそう。実家が北千住にあり、別の場所でパン屋を営んでいるという。ここにたどり着くまで村長は回り道をしたが、フツーに来れば学園通り(旭町商店街)をちょいと脇に入った場所にある。目立たない場所であることに変わりはない。

ウマズイめんくい村に持ち帰って、翌日の朝食で賞味となった。これが素晴らしい朝となった。太めのバケットは持った瞬間、ほどよい重みがあり、パン切りナイフで切ると、弾力と密度が並みのバケットとは違った。買ってから半日以上経っていたので表面のパリパリ感はやや薄れていたが、口に入れた途端、ほのかな塩気と小麦粉のいい風味が広がった。焼き色、ボリューム感、質感、食感ともに上質。むしろソフトフランスのようなもっちり感で、ハード系が好みの人には合わないかもしれないが、村長にはドンピシャ。
        しげぱんはうす① 
        さあ、朝めしタイム!
        しげぱんはうす③ 
      隠れたバケットの実力
        しげぱんはうす⑨  
        この存在感
        しげぱんはうす⑥ 
        まずはマーガリン
        しげぱんはうす⑦ 
     ソルダムジャムを塗って
        しげぱんはうす⑧ 
      ブルーベリージャムも

調べてみたら、フランスパンの小麦は無漂白の北海道産を使い、手間ひまのかかる低温長時間発酵でパン作りをしていることがわかった。220円という価格が信じられない。下町のパン職人の矜持だと思う。マーガリン、村民2号手作りの特製ソルダムジャム、ブルーベリージャムを取っかえ引っかえしながら付けて食べる。いい店を発見した感動が胃袋の奥から、じわりと湧き起こってきた。
        しげぱんはうす11 
        あんぱんの実力
        しげぱんはうす12 
        しばし見とれる

あんぱんも特筆もの。粒あんが売り切れていたので、こしあんだけを買ってきたが、パン生地の薄さと柔らかさ、その見事な焼き色とテカリ。パンナイフで切ると、ぎっしりと詰まった過剰気味のこしあんが顔を出した。あんこ好きにはたまらない世界(苦手な人には猫に小判だが)。控えめな甘さで、上質のあんこだとわかった。パン生地は多分酒種発酵で、風味がとてもいい。こしあんは自家製ではなく、あんこ屋から仕入れているそう。それでも、久しぶりに隠れたいい店を発見した喜びは変わらない。コレダカラミチクサハヤメラレナイ。

本日の大金言。

いい店は隠れている。それを見つける喜び。表通りより裏通り、テレビなどのメディアより、まずは自分の足で探してみる。足の先にだって舌がある。ホント、です。



            しげぱんはうす2 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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