「塩羊羹の傑作」を賞味する

 先日煉り羊羹にハマっている話を書いたら、恐るべき食通・ドン圭氏が突然やって来た。手に紙袋を提げている。
「これ、下諏訪に行ったお土産。ちょっと食べてみてよ」

それが信州・諏訪大社門前の老舗和菓子屋「新鶴本店」の塩羊羹だった。明治6年(1873年)創業、塩羊羹と餅饅頭は創業当時のまま、140年以上のこだわりの製法を続けている。暖簾を広げず、そのため下諏訪の本店でしか手に入れることができない。現在は五代目が暖簾を守っている。恐るべき塩羊羹。
         塩羊羹① 
       思わぬ羊羹、登場

これまで塩羊羹と言えば、主に日光などのものを食べたが、「新鶴本店」(しんつるほんてん、と読む)のものは初めて。ドン圭氏の舌と知識にはこれまで何度か驚かされてきたが、今回も素直に脱帽するしかない。
         新鶴本店① 
         真空パックなどしていない
         新鶴本店③ 
         紙の経木
         塩羊羹④ 
         何という色味

若草色の包みを解くと、紙経木が現れ、そこにどっしりとした塩羊羹が横たわっていた。1本950円(税込み)のもので、まずその色に驚かされる。フツーの煉り羊羹の色とはまるで違った。深みのある濃いグレー色。小豆の色ではない。お茶を入れていた村民2号も「これ塩羊羹なの?」と驚きの声を上げた。
         塩羊羹② 
         塩羊羹の元祖

よく見ると、表面がさざ波のように波打っている。これは固める際にできた舟形の模様か、それとも他に理由があるのかわからない。物差しで測ると、長さは15センチ、幅5センチ、厚みは3センチほどだった。伝統的な煉り羊羹の寸法そのまま。
         塩羊羹③ 
         小豆の存在は?

包丁を入れると、うっすらと透明感もある。グレーの中に緑色が差しこんでいるような、何とも言えない色。黒文字でまずはひと口。まったりとした塩味が口中に広がった。ベースの甘みから塩がにじみ出てくるよう。これまで食べた塩羊羹の単調とは違う、素朴で深みのある風味と味わい。ねっとり感はないが、美味、という他はない。塩羊羹がこれほどの味わいとは・・・村長の固定観念を打ち砕くに十分な時間となった。
         塩羊羹⑤ 
       好奇心がむくむく
         塩羊羹⑥ 
         職人の技
         塩羊羹⑦ 
         ま、ひと口

素材が書いてあったので見ると、「砂糖、小豆、寒天、塩」しか書かれていない。小豆なのに、小豆の色がない。ひょっとしてインゲン豆か白小豆を使っているのでは? 疑問が解けない。電話して聞いてみることにした。

「小豆は北海道十勝産のものを使っています。色ですか? 白く見えるのは皮を一粒一粒丁寧に剥いているからです。その作業も創業当時と同じです。塩はフツーの天然塩を使っています。すべて手作業で、寒天は地元・茅野産の天然素材のものです」
         塩羊羹⑧ 
         脱帽どす

若女将だろうか、女性がていねいに答えてくれた。「アクをしつこいくらいに取ること」も雑味を押さえた味わいに仕上げている秘密の一つのようだ。いわゆる小豆の濃厚な風味はその分消えるが、別の味わいが出てくる。

「もしいらっしゃるようでしたら、電話を頂ければ取り置きしときます。毎日作る数が限られているので午後には売り切れてしまうこともありますので」との一言も付け加える。不思議な感動が沸き起こってきた。煉り羊羹の奥の深さ。これは折を見て、下諏訪まで行くっきゃない。ドン圭氏の塩気の効いた意図が村長の目の前に横たわるのだった。闇の中の羊羹・・・。


本日の大金言。

砂糖と寒天が一般化するのは江戸時代寛政年間以降。明治6年と言えば、明治天皇が断髪し、西郷隆盛が征韓論に敗れて、薩摩に下野した年。まだ江戸が色濃く残っていた時代。その年に、諏訪大社の門前で塩羊羹が生まれた。むろん新鶴本店の初代のアイデアと工夫のたまもの。寒天を使った煉り羊羹の世界は予想以上にバラエティーに富んでいる。



                 塩羊羹⑨ 




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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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