秀吉も食べた「うぐいす餅」の元祖

本日は気の遠くなるようなあんこ生菓子をご紹介することにしよう。明治や江戸がつい先日、と思えるような和菓子「御城之口餅(おしろのくちもち)」である。何せ関白豊臣秀吉が初めて賞味し、そのあまりの美味さに「鶯餅(うぐいすもち)」と命名したというエピソードが残っている。

この手の話は裏が取れない分、「証拠はあんの?」と突っ込まれれば、ちと困ってしまうが、その店が奈良・大和郡山市にある「本家菊家」となると、話が違ってくる。創業が天正13年(1585年)頃、現在の当主が26代目。川端道喜には負けるが、亀屋陸奥や虎屋に続く歴史をもつ超老舗御菓子司。しかも京都ではなく、大和郡山市。これは実際に行って食べるしかない。
         本家菊屋1 
     店構えにため息が出る

というわけで、当麻寺から近鉄線で、大和郡山駅まで足を延ばすことにした。駅から歩いて5~6分ほど、市役所のちょうど向かい側に「本家菊家」の古い木造の建物が見えた。その佇まいに気後れしてしまった。商家造りの大きな店構えで、何度か火事に遭い、現在のものは江戸時代末期の建築とか。
         本家菊家② 
         タイムトンネル

入り口が開放的な造りで、縁台(戸板を倒すと縁台になる仕組み)に歴史がしみ込んでいる。柿色の水引暖簾がポエムである。その下をくぐって石畳の敷いてある店内に入ると、左側が事務所になっていて、その仕切りの部分に、「御城乃口餅」など商品が陳列してあった。奥がどうやら板場のよう。右手が小上がりになっていて、銅製の茶釜や古い看板(年代は不明)などが置いてある。ふと見ると、干菓子の木型がさり気なく壁や天井に並んでいる。数百年の歴史を否応なく感じさせられる。
          本家菊家⑤ 
          御城之口餅さま

「あのう御城乃口餅を食べたいんですけど、ここでは食べられませんか?
事務所に一人いた女性に恐るおそる尋ねてみた。賞味期限が1~2日ほどなので、ここで食べるしかない、と考えたからである。

「そちらでよかったらどうぞ。1個からでも食べれますよ」
「1個おいくらですか?」
「百円です」
「では5個くださいな」

そちら、と指差されたのは、緋毛せんが敷いてある小上がり部分のちょっとしたスペースだった。ポエム。7~8分ほど待っていると、陶器の皿にきな粉がたっぷりかかった「御城之口餅」が5個運ばれてきた。大きさはウズラの卵大で、現在の鶯餅よりもかなり小ぶり熱いほうじ茶が付いている。このサービスが自然体で、感心させられる。
          本家菊家2 
       鶯餅の元祖「御城之口餅」

黒文字でひと口。きな粉は国産青大豆で、いい香りが口中に広がる。それに餅の柔らかさ。そして、中のつぶしあんがやや甘めだが風味がとてもいい。美味。聞くと、丹波大納言小豆を使っているそうで、きれいなこしあんにふっくらと炊いた大納言を加えたようなていねいな作りがわかる。
          本家菊家⑦ 
         上質の味わい
         本家菊家⑧ 
         アーユー秀吉?

秀吉の兄・豊臣秀長が大和大納言になった後、秀吉を迎えるときに、「本家菊家」の初代に命じて作らせたのがこの生菓子だった。秀吉はどうやら和菓子好きだったようだが、そのあまりの美味さに感動、形状から「鶯餅(うぐいすもち)と命名せよ」となったそう。

それがやがて徳川の時代になり大和郡山城の大門前に店があったことから、「御城之口餅」と名前を変えたようだ。徳川の世になり、秀吉の命名では具合が悪いということもあったのではないか。 
         本家菊家⑨
         言葉はいらない
         本家菊家10 
         見事な世界
         本家菊家11 
             あーん

これだけの老舗が敷居を低くして、怪しい旅人に1個百円で店の中でも食べさせてくれることに驚かされる。少し前までは手包みで作っていたようだが、店の規模が大きくなり(奈良県内に10店舗)、さすがに手包みから器械包みに変えたようだ。ちょっと残念。

とはいえ、本店の中で食べる鶯餅の元祖はひと味もふた味も違った。熱いお茶を飲みながら、あっという間に5個平らげる。不意に茶釜の前に千利休が座って、こちらをじっと見ている気配がした。なんちゅう汚い食べ方、しはりまんのや。はよう村に帰りなはれ・・・。

本日の大金言。

形は小さいが、約430年前の鶯餅は今のものと変わらない。それどころか、一ランク上の味わい。秀吉の舌の肥え方が偲ばれて面白い。

                本家菊家12 
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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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