幻の「煉り羊羹の元祖」を求めて

今日は天気がいいので、煉り羊羹(ねりようかん)の旅の最初のクライマックスを書くことにしよう。あまりにややこしいので、さらりとご紹介したい。京都・伏見「駿河屋本店」の紅煉り羊羹である。あの豊臣秀吉が大茶会に出して、居並ぶ大名を驚かせた羊羹も紅色だったと言われている。もっとも当時は寒天がまだなかったので、それは煉りではなく、蒸し羊羹の一種だったようだ。
         駿河屋本店 
     伝統を受け継ぐ「駿河屋本店」

駿河屋総本家(旧鶴屋)は創業が室町時代にまで遡り、秀吉が伏見指月城を築いたときに伏見に「饅頭所」として店を構えている。駿河屋は秀吉御用達の店だったようだ。秀吉の命で作った紅煉り(蒸し羊羹?)も駿河屋が工夫して作っている。

その五代目岡本善右衛門の代(江戸初期)に初めて寒天を使った「煉り羊羹」を考案したと言われている(諸説ある)。駿河屋総本家はその後、分家・暖簾分けを繰り返し、バブル以降に経営不振に陥り、トラブル続きで、直近の平成26年にいったん閉鎖している。
         駿河屋本店① 
     幻の紅煉り羊羹が・・・

今回ご紹介する伏見「駿河屋本店」の方は十代目善右衛門から天明元年(1781年)に分家、煉り羊羹の作り方や伝統をもっとも受け継いでいる、と言われている。その幻の紅煉り羊羹を求めて、伏見下油掛町にある本店を訪れた。京町にも新しい総本家があるのでややこしいが、村長の本命は油掛町の本店。幻の紅煉り羊羹は「その昔」という名前でひっそりとオーラを放っていた。
         駿河屋本店④ 
         歴史の詰まり方
         駿河屋本店② 
         紅煉り羊羹めっけ

当主は十一代目岡本善吉。店構えは江戸末期のもので、敷居が高そうに見えるが、入ってみると、家族的で街の老舗和菓子屋さんのよう。目的の「その昔」(半棹1本850円=税別)を買い求めた。竹皮でないのが少々残念だが、その中身が驚くべきものだった。
         駿河屋本店③ 
       ついに賞味の時が

羊羹の賞味期限は約1か月。ウマズイめんくい村でゆっくり賞味となった。きれいな紙包みを解くと、透明なラップに覆われた淡いピンク色の紅煉り羊羹が現れた。桃色と表現した方がいいかも。表面は砂糖が結晶化していて、白い雪がかかったよう。村民2号がお茶を入れながら「わあ、きれいね」と声を上げた。
         駿河屋本店④ 
         驚きの桃色
         駿河屋本店⑤ 
         包丁を入れる

ラップを取り、包丁を入れると、ザクッとした感触が伝わってきた。小皿に移してから、黒文字でひと口。きれいな風味で、ほどよい甘みが口中に広がる。糖化した表面のガサッとした歯触りがとてもいい。中はほどよいねっとり感。
         駿河屋本店⑨ 
         ため息が出る
         駿河屋本店2 
         秀吉も食べた?
         駿河屋本店10 
         半分かじる

調べてみると、備中白小豆と十勝白小豆を使っていた。インゲン豆の3~6倍はする高価な白小豆で、清流を思わせる風味が素晴らしい。さらに砂糖も和三盆というこだわり。余分な添加物は使用していない。淡い桃色はクチナシで着色している。桃山文化を思わせるような華やかできれいな味わい。そう表現したくなる。

駿河屋本店に電話してみる。たまたま十一代目岡本善吉さんが出た。ツイテいる。

「江戸時代初期に寒天を使った現在の羊羹が完成したようです。それを再現したものですが、まったく同じではありません。当時は砂糖はそんなになかったので、甘さは今ほどはなかったでしょうね。竹の皮に包んでお出ししていたようですが、現在は紙で包んでます。秀吉が食べたのも紅煉りと言われてますけど、よくわかりません。おそらく蒸し羊羹を工夫したものだったと思います」
         駿河屋本店⑦ 
         紅煉りの頂点

ついつい長話になってしまった。お客が来たような雰囲気だったので、失礼を詫びてから、慌てて電話を切った。目を閉じて、2016年10月26日から400年以上前の桃山文化と江戸文化に想いを寄せてみた。だが、悲しいかな、桃色の紅煉り羊羹は歴史の闇の奥に浮いたまま、こちらに向かって謎の矢を放ってくるのだった。

本日の大金言。

寒天を使った煉り羊羹の元祖は他にも江戸発祥説がある。寛政年間(1798年~)に日本橋で喜太郎という和菓子職人が作った、という説も有力。だが、寒天が京都伏見で誕生していることを考えると、駿河屋説の方が実感として説得力がある気がする。



                駿河屋本店7 

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赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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