幻の羊羹と「赤鶏の中華そば」

 幻の煉り羊羹「藤むらの羊羹」を求めて、東京・本郷へ。加賀前田家ゆかりの「藤むら」は、羊羹界では知る人ぞ知る名店だったが、すでに忽然と店を閉じている。理由は不明だが、後継者がいなかったとも言われる。夏目漱石や森鴎外も愛した超老舗和菓子屋で、「20年ほど前からシャッターを下ろしてましたよ」(近所の古老)とか。その後、一部の予約客だけに羊羹を作り続けたという話もある。
         藤むら 
    幻の羊羹屋「藤むら」の今

藤むらの羊羹を食べ逃してしまったことが悔やまれる。京都伏見「駿河屋」と並ぶ歴史的な煉り羊羹。せめてその名残りを・・・と本郷三丁目に足を延ばしたわけである。隣りは本郷三原堂で、藤むらがあった場所はシャッターが下りたまま、看板すらなくなっていた。前田利家の時代にまでさかのぼる羊羹屋の跡地には、人気のない建物と自転車が置いてあるだけだった。夢の跡にしては切ない。
         ねむ瑠1 
         遅めのランチ

ため息交じりに空を仰ぐと、お腹の虫が「羊羹もいいけど、オレを忘れてもらっちゃ困るよ」とわめき始めた。時計を見ると、午後1時ちょい過ぎ。久しぶりにラーメンを食べたくなった。すぐ近くに「中華そば」の提灯が見えた。2~3人ほどが並んでいた。「麺屋 ねむ瑠(ねむる)」の屋号が小さい。店構えからいい雰囲気が伝わってきた。
         ねむ瑠① 
         悪くない店構え

入り口に置いてある立て看板が実に美味そうだった。「赤鶏と蛤(はまぐり)の淡麗中華そば」。ここに決まり。5分ほどで中に入ると、13席ほどの変形カウンターだけで、2人の男性スタッフが麺づくりに励んでいた。BGMは懐かしいR&B。券売機で「赤鶏と蛤(はまぐり)の淡麗 煮卵入り」(税込み880円)を選んだ。醤油味と塩味があるが、醤油にした。
         ねむ瑠10 
         メニューの一部

ここは「烏賊(いか)煮干中華そば」が定番で、オープンしたのが「去年の9月です」(スタッフ)。まだ新しい店なのに、すでに人気店になっているようだ。10分ほどで、煮卵入りの「赤鶏と蛤の淡麗中華そば」がいい匂いとともにやって来た。
         ねむ瑠② 
         絶品か?

逆三角形の白い磁器ドンブリに透明な醤油スープ。鶏油がキラキラ浮いている。それだけで心が躍る。ローストビーフのようなピンク色のチャーシュー(豚ロース肉?)が一枚。それに三つ葉と刻み玉ネギ、白っぽいメンマという構成。煮玉子(単品だと100円)がポカリと乗っている。ビジュアル的にはかなりのレベル。
         ねむ瑠③ 
         きれいな中華そば

まずはスープ。これが絶妙だった。最初のアタックは「醤油が少しきつめかな」だったが、すぐにまろやかな旨味が口中に広がった。岩手産赤鶏と蛤(はまぐり)の出汁がじんわりと滲み込んできて、そこに鶏油の甘みが入り込んでくる。化学調味料は使っていないそうで、それでこれだけの旨みを出している。このスープだけで半分満足した気分になる。
         ねむ瑠④ 
       鶏油と蛤(はまぐり)
         ねむ瑠⑤   
         まろやかな秀逸
         ねむ瑠⑥ 
         中細ストレート麵

麺は中細ストレート麵で、小麦の風味とほどよいコシがこのスープによく合っている。自家製麵ではなく村上朝日製麺所の特注麵を使用しているようだ。
         ねむ瑠⑦ 
       きれいなチャーシュー

チャーシューは見た目は大きいが、かなり薄い。せめて二枚にするか、厚みを1.5倍くらいにしてほしいね。柔らかくて旨いだけにちょっと残念。メンマと刻み玉ネギはまずまず。煮玉子は中の黄身がとろとろで、かなりの技術だと思う。好みで言えば、半熟くらいがちょうどいいと思うが、これもこの店の売りなので、仕方がない。
         ねむ瑠⑧ 
         とろり煮玉子

一滴残さずスープまで飲み干すと、いい余韻が口中に残った。全体的に洗練された味わいだが、ボリュームが少し足りない。味付きの替え玉(180円)を頼んで、ようやくお腹がいっぱいになる。

外に出ると、青空が広がっていた。藤むらの羊羹はきれいな藤紫色だったそう。それが店名の由来で、江戸・明治・大正・昭和を通して、暖簾を守り続けた。気の遠くなるような歴史・・・それをついぞ食べ逃してしまった。志ん生を生で見れなかったことと合わせて、悔いが残る。ぐやじいのう・・・。

本日の大金言。

後悔先に立たず。虎屋の羊羹はせいぜい明治維新以降の歴史しかない。気がついたときには手遅れになる。そういう経験はきっと誰にでもある。ひょっとしてそれは現在進行形でもある。




                ねむ瑠⑨ 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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