老舗の不思議な「アップルパイ」

 東京・神田神保町に行ったついでに、淡路町の「近江屋洋菓子店」に立ち寄ることにした。知る人ぞ知る東京でも指折りの老舗洋菓子店で、ここの「アップルパイ」を賞味するためである。

「村長は近江屋のアップルパイについてどう思います?」
神保町に事務所を構える編集者の知人がかようなことを真顔で尋ねてきた。知人はスイーツ好きの酒飲みだが、「近江屋洋菓子店」については首をかしげていた。

明治17年創業だが、当時珍しかったパン屋兼洋菓子を始めたのは二代目で、アメリカ修業から帰ってきてからとか。その歴史を見ると、東京の庶民派洋菓子店の草分け的な存在だとわかる。現在は四代目。近江屋の素朴なケーキを愛する人も多い。

知人は「だが、喫茶コーナーがいけない。あのセルフサービスというのがどうもね。それに食器類が紙とプラスチックというのも時代を先取りしていたとはいえ、どうも馴染めないなあ。でも流行ってるんですよ」と複雑な表情を浮かべた。
          近江屋洋菓子 
          近江屋洋菓子店(東京・神田)

恥ずかしながら、村長は「近江屋洋菓子店」に行ったことがなかった。言葉を濁してその場を切り抜けたが、どうにも落ち着かない。で、帰りに淡路町まで足を延ばしたわけである。のどに引っ掛かったアップルパイ・・・

ガラス張りのモダンな建物に横文字の屋号。三代目が昭和41年(1966年)に建てたもの。入り口のガラス張りのドアには「近江屋洋菓子店」の金文字が浮かんでいる。神田っ子のモダン。
          近江屋洋菓子店2 
          正統派洋菓子!

店内は広く、手前が洋菓子部門で、美味そうなケーキ類が並んでいた。その奥が喫茶コーナーになっていて、レジで注文するシステム。何よりもここの目玉の一つ「アップルパイ」(税抜350円)を頼んだ。それに「ドリンクバー」(コーヒー、ジュース、スープなどがお替り自由で648円)も頼むことにした。いつの間にか列ができている。
          近江屋洋菓子店⑦ 
          有名なアップルパイ
          近江屋洋菓子店⑥ 
          ドリンクバー
          近江屋洋菓子店③ 
          秀逸なジュース
          近江屋洋菓子店5
          本格的なスープ

アップルパイは紙の皿に乗り、プラスティックのスプーンも付いていた。どこか安っぽく感じてしまう。テーブル席と年季の入った長い木のカウンター席が伸びている。新しさと古さがちぐはぐに同居している印象。コーヒーと数種類のジュースをセルフで持ってくる。ジュースは果物の鮮度のよさがわかるもので、美味い。「バナナとほうれん草」がこってりしていて気に入った。
          近江屋洋菓子店⑧ 
          中身と器のギャップ

スープは「ビーフ&ベジタブルスープ」で、かなり熱い。これも発泡スチロールの器。本格的なコンソメスープで、器を除けば悪くない。
          近江屋洋菓子店10
          噂のアップルパイ
          
近江屋洋菓子店12 
          バランスの妙

で、本命のアップルパイ。焼き立てが売り物だが、焼いてからかなり時間が経っている印象。その季節の一番美味いりんごを使っているそうで、蜜煮したりんごとパイ生地の内側に敷かれたカスタードクリームのバランスはさすが老舗の味わい。甘さが控えめなのも好感。皮の美味さも光る。懐かしい昭和の正統派アップルパイ。
          近江屋洋菓子店13 
          自然な美味さ
          近江屋洋菓子店15 
          PPAP?

だが、期待が大きすぎた分、「こんなものか」という思いも残った。値段が庶民価格なことと木のカウンターの年季には心を動かされたが、それ以外は「うーん」だった。紙皿とプラスティックのスープンに思い入れはない。知人のいう意味がようやく分かった。

本日の大金言。

新しさはいつか古くなる。その古さが残るには、決め手は手づくりの職人技だと思う。実用主義も悪くはないが、過ぎると、感動が遠くなる。むろん個人的な感想だが。




              近江屋洋菓子店7 


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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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