謙虚な「ソースかつ丼元祖」

 調べ物があり、久しぶりに会津へ。雪が心配だったので、今回はポンコツ車を止め、JRを利用することにした。駅に降り立つなり、ピュウッと冷たい風に切りつけられた。雪に変わりそうな小雨のお出迎え。鉛の空。426年前もこんな天気だったかもしれないな。
          若松食堂① 
         ソースカツ丼のルーツ

すっかり寂れてしまった大町通りを宿屋へと向かうと、右手に「若松食堂」の古い看板が見えた。知る人ぞ知る会津ソースかつ丼の元祖の店である。だが、どこにも「元祖」の表記はない。「元祖」とか「「本家」を売りにする店が多い中で、極めて珍しい店の一つだと思う。
          若松食堂② 
     どこにも「元祖」の文字がない

今でこそ会津若松のソースかつ丼は全国区になり、「白孔雀」や「なかじま」、「むらい」などメディアに登場する老舗が増えたが、それらはいずれも戦後に「ソースかつ丼」をメニューに加えている。だが、「若松食堂」の創業は昭和5年(1930年)。福井「ヨーロッパ軒」や桐生「志多美屋」などに負けない歴史を持つ。
          若松食堂③ 
          メニューの一部

ちょうど昼飯タイムだったので、この元祖の店の暖簾をくぐることにした。季節のせいか、客の数は少ない。何も知らなければ、ただの町の古い食堂としか思えない。年季の入ったテーブル席に腰を下ろしてから、若女将らしき女性に「ソースカツ丼」(税込み880円)を頼んだ。テレビが流れている。店内を見渡しても、どこにも「元祖」の文字がない。
          若松食堂④ 
          おおおの登場

奥が厨房になっているようで、そこからトンカツを揚げる軽やかな音が聞こえてき、同時にいい匂いも流れてきた。店主の姿は見えない。12分ほどで、お盆に乗った「ソースカツ丼」がやってきた。ドンブリの蓋のすき間からソース色のトンカツが見えた。お吸い物とお新香が控えている。ドンブリの姿がいい。
          若松食堂1 
          これが会津の元祖
          若松食堂2 
          ポエムの世界

蓋(ふた)を取ると、見事なソース色のトンカツが全面を覆っていた。切れ目は4つで、一切れが幅広い。会津ソースかつ丼の特徴である千切りキャベツがトンカツの下にぎっしりと敷かれていた。ポエム。

やや甘めのお吸い物をズズズとすすってから、おもむろにソースカツを一切れガブリと行った。肉の厚さは6~7ミリくらいで、他の店のものよりも薄い。ボリュームを売りにする「むらい」などは肉の厚さだけで優に30ミリ(3センチ)はある。「若松食堂」はそうした店とは一線を画しているようだ。880円という価格設定も良心的だと思う。 
          若松食堂⑥ 
          ロースの脂身
          若松食堂⑦ 
          会津産豚肉

厚めのコロモのサクッとした感触と肉の旨さが際立っている。昭和5年創業以来の継ぎ足しソースだれにくぐらせたトンカツはコロモとロース肉の加減が絶妙としか言いようがない。村長の好きなきれいな脂身がしっかりある。甘めの熟成したソースだれが肉の旨みをさらに引き上げている。見た目は濃いが、味わいは穏やか。
          若松食堂5  
          キャベツの秀逸

千切りキャベツの凄味も書いておきたいな。これ以上細くは切れないというほどの繊細さで、炊き立ての会津産コシヒカリの上に層になっていた。だが、そのキャベツのボリュームが会津産キャベツ自身の旨みのせいか、まったく邪魔にならない。ほどよくかけられたソースだれがトンカツとご飯とキャベツを融合させている。味な三角関係、というのもあるんだな。
          若松食堂6 
          タレのかかり具合

お新香の旨さも好感。お吸い物はフツーのレベル。食べ終えると満足感がジワリとお腹の底から湧き上がってきた。勘定を支払う時に、つい「どうして元祖の店、と看板などに書かないんですか? もったいない」と言うと、若女将は「ありがとうございます」と微笑むだけで、それがすべての答えのようだった。会津の奥ゆかしさはひっそりと頑固に生きている。天気予報が今夜は気温が下がると知らせていた。

本日の大金言。

メディアに登場する店より、あまり登場しない店。そこに本物が潜んでいることは案外多い。建物の規模や肉の大きさや厚さで人目を引くことよりも、本来の旨さで暖簾を守り続ける店を大事にしたい。ソースッカツウ丼、なんてね。




                 若松食堂⑨ 

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プロフィール

赤羽彦作村長

Author:赤羽彦作村長
あの!エンターテインメント新聞で記者、デスク、編集プロデューサーとして活躍。思うところあって、原発で揺れるヤポネシアを辺境から見つめ直すべく、イカダを組み、オンボロ旗を揚げ、組織を脱出。荒海に乗り出す。「B級うまいものの宝島」を目指して、櫂をガタガタと漕ぎ出すことにした。一か八か泥船となるか、間違って宝船となるか?
特に麺類と和菓子にはうるさい。「舌の上から斜めに世界を見る」などとほざいている。はっきり言ってバカの3乗である。年齢不詳。乙女座、AB型。村民を募集している。

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